24 / 66
第24話 ナイチョーさん?
しおりを挟む
残念ながら横浜にはNCISの手先はさほど多くないようだね。
神奈川県警のパトカーが先に到着した。
そのまま俺は、山手警察署へ運ばれた。
NCISにもその旨を連絡して、最終的に外事がらみとあって、外事課の隠地さんという課長補佐と仲良しになった。
俺に関する不法侵入については一切おとがめなし。
デビッドソン中尉の命がかかっていたので緊急避難措置として住居侵入程度は見逃してくれたようだ。
なお、彼《か》のお屋敷については外事課が捜索差押令状を早速にとって執行したみたい。
その後の話については、俺は知らない。
俺は仕事が済んだので、一旦横須賀に戻り、車で渋谷に戻ったよ。
後は外事課とNCISが何とかするだろう。
少なくともケイ・ヤガシラについては、拉致監禁罪の主犯か従犯で逮捕だな。
拷問をしていた奴らについては傷害罪か暴行罪が適用されるだろう。
トランクの中には拷問最中の監視カメラの映像が入っていたからな。
逃れようがない筈だ。
色々とその後もアメちゃんやら外事警察の方でドタバタしていたけれど、俺は極力関与しない方向で動いていたぜ。
何とかNCISの方で俺をかばってくれたみたいで、俺には特段のおとがめは無し。
デビッドソン中尉を救助してから十日ほど経って、NCISからは諸経費以外に報奨金として1万$が貰えたよ。
まぁ、NCISというよりは、どうも米海軍からの報償費らしいがな。
今後ともよろしくと言って通訳だったクリスさんが小切手入りの封筒を手渡してくれたよ。
余り、関わりたくない組織なんだが、NCISやUSN、さらにはFBIまでが、俺の存在を知っているからね。
奴らの場合、色々と横のつながりも多いから、CIAやDEA、さらにはNSAやATFなどにもきっと俺の情報が出回っているぜ。
何となくやばい気がするねぇ。
そうしてその予感が当たっていた。
◇◇◇◇
NCISの依頼の件から一月ほど経ってから、一組の男女が俺の事務所に現れた。
男はきっちりと背広を着こなしているし、女は所謂パンタロンタイプのリクルートスーツなんで、一見してお堅い職場と分かるぜ。
顔も男はイケメン、女は知的な美女?って感じだな。
男の方が年上で上司に見えるな。
俺に面会して名刺を渡してきた。
男は内閣情報調査室の特任調査班長の葛西啓二、女は同じく特別調査班副主任の井山絹江という人物だ。
内閣情報調査室というのは、内閣の活動に必要な情報を集めるお役所で、外務省や警察など多数の役所の出向職員が配置されているはずだ。
但し、外国からは日本のCIAとみられており、それに類する諜報活動もしているし、逆にカウンター・インテリジェンスと呼ばれる防諜活動もしているはずだ。
各省庁からの出向職員は、どちらかと云うと各省庁との連絡窓口の筈だが、他に専属のプロパー職員もいるはずだ。
そうしなければ腰掛程度の仕事では諜報活動も防諜活動もできそうにない。
で、今俺の目の前にいる二人が、もしかするとその専従員かもしれないね。
何せ「特任」と肩書に付くのだから普通のところじゃない。
葛西氏が早速切り出した。
「明石さんのことは、米国CIAの日本支部長からお聞きしました。
警視庁の神山さんにもお会いして、あなたのことはお聞きしています。
尤も、神山さんはなかなか情報をくれませんでしたから、やむを得ず警視総監命令として情報を吐き出させてもらいましたけれど・・・。
明石さんはとても有能な探偵のようですね?」
「いえ、いえ、私はしがない探偵に過ぎません。
こちらには何か依頼でしょうか?」
「ええ、依頼と言えば、依頼なんですけれど・・・。
貴方のことについては、少々調べさせていただきました。
学歴、資格、資産その他ですけれど、弁護士資格を持っていて銀行への預金額が300億円を超えている貴方が、何故探偵をしているのかがよくわからないのです。
貴方の資産については、不正な方法で入手したものではないことはわかっていますが、それだけの資産を持ちながら何故に儲からない探偵稼業をしているのかが分かりません。
中東某国の王子から受けた依頼で数百億円の収入があったことは承知していますけれど、普通の探偵のお仕事でそんな高額な報酬が入ることはまずありません。
それにその報酬が入った後にも探偵業は続けていらっしゃる。
貴方が探偵業を続けているのは報酬目当てではないということのようですが、何故探偵をされているのでしょう。
この点があなたに依頼をするかどうかのカギにもなりそうなので、依頼の話をする前に教えていただけないでしょうか?」
「ふむ、内調さんの依頼は余り受けたくはないですけれど、その内容にもよりますね。
まぁ、宜しいでしょう。
私が探偵を始めたきっかけは、私の姉が誘拐されて二年後に死体で見つかった事件が契機です。
姉は12歳の時、何の前触れもなく失踪しました。
後に、誘拐されていたことや、二年後に死体で発見される少し前まで生きていたことが分かっています。
両親は姉が帰宅しないので翌日には警察に失踪届けを出し、親族揃って姉を探しましたけれど見つかりませんでした。
生憎と警察は事件性が明確に疑われない場合は意気込みが違うんですよ。
父は資産をかなり使い、1年ほど私立探偵を雇って捜索を依頼しましたけれど、手掛かりは得られませんでした。
二年目には探偵事務所の方が新たな手掛かりが得られない限り、調査はしませんと申し入れてきました。
そのまま更に1年が過ぎて、隣の県の山中で死後一か月ほどの姉の遺体が発見されました。
そうして、その一月後には犯人も捕まりました。
警察や探偵事務所がもう少し本気で探していてくれれば、あるいは姉は生きたまま家に戻れたかもしれないのです。
葛西さんはあるいはご承知かも知れませんが、全国では年間約8万人の行方不明者が居るんです。
この数値は統計上のモノですから、実数はもっとあるかも知れませんね。
僕は、犯罪に遭った被害家族の一員として、遺された者の悲しみを知っています。
姉の場合で言えば、二年近くも救出の機会があったにもかかわらず救出できませんでした。
僕が探偵をやっているのは、行方不明となった家族のために行方不明者をできるだけ早く家族のもとに返してあげたいというそれだけの理由です。
国や警察がしてくれないのなら、個人ができる範囲でするしかありません。
それが探偵業だったのです。
警察などの治安機関でそうした仕事に関わる方法もありましたが、組織に入るとその組織の制約を受けます。
上意下達の組織内では、余程組織や上司が優秀でなければ漏れが出ますし、組織の一員では勝手に動くこともできません。
ですから探偵という個人事業主を選んだわけです。
私の事務所のホームページもご覧になっていると思いますけれど、私の事務所のメインは『人探し』なんです。
ですから人探しならば受けますけれど、単なる旦那の浮気調査なんかはお断りしています。
警察からの依頼もこれまで何件か受けてはいますが、事件だから受けているのではなく、助けられる命があるなら助けたいという方針で臨んでいます。
基本的に国やお役所の仕事は受けたくないとも思っています。
国なりお役所なりは、巨額の予算を使って大規模な人員を投入できるはずです。
そうした組織の一部になることは原則としてお断りします。
私の場合、個別の依頼に応じて、場合によっては、警察などの依頼も受けるということです。」
「ふむ、米海軍中尉の救出に貴方も関わったと聞いているのですが、これは国の依頼ではないのですか?」
「ええ、国の組織という法人からの依頼ですね。
米海軍の兵士が戦場で行方不明になったのならば、私の出る幕はありません。
でも、プライベートな時間で行方不明となり、彼の帰りを待っている家族が居ると聞きましたので依頼を受けました。
飽くまで彼の行方を捜すのがメインであって、救出が目的ではありませんでした。
しかしながら、現場で彼の命が風前の灯火であり、一刻を争う事態と分かって緊急避難で彼を救出しました。
探偵が警察や医師の真似事をできないのは知っていますが、緊急の場合には敢えてその制限を外すこともあります。」
「なるほど、できればあなたに専属として内閣情報調査室の調査員となっていただけないかと思っていたのですけれど、そちらはどうも無理なようですね。
今現在、貴方に依頼があるわけではないのですけれど、人探しという分野においてあなたに助力を求めたいときには個別の依頼をすることにいたしましょう。
生憎と仕事柄、秘密を要する内容が多いもので、原則として、私か井山が直接こちらにお邪魔して依頼することにいたします。
できれば依頼を受けていただきたいところですが、秘密厳守を前提にそこは任意としましょう。
本当に緊急の場合は、こちらに電話で連絡をさせていただきたいと思いますが、そのためのホットラインをこちらに引かせていただきたいのですが、工事の許可を頂けましょうか?」
「内調の方が事務所内での盗聴をしないとお約束できるなら工事業者が入っても構いません。
仮に盗聴装置等が組み込まれているような場合は勝手に除去しますけれど、それでもよろしければどうぞ。」
葛西氏は、チョット唖然としているようでしたけれど、すぐに頷きましたね
「飽くまで、ホットラインをつなぐだけです。
余分な物がある場合は、あなたの方で除去もしくは使用不可にしてもらっても構いません。」
「そうですか・・・・。
実は1週間ほど前から、ウチの向かいのビルの7階からこちらを監視している者がいるんですけれど、外人さんが絡んでいるようなんです。
葛西さんのお力で何とかできませんか?」
「向かいのビルの7階?
どの辺りかわかりますか?」
「左端から数えて6つ目のガラス窓があるあたりです。
どうも望遠レンズをつけた高性能カメラで隠れながらこちらを狙っているようです。
素性はよくわかりませんが、少なくとも二人の外人さんがいるようで、一人は白人、今一人は東南アジア当たりの外人さんのようですよ。」
実は向かいのビルは反射率の多いガラスを使っているために、こちらからはビル内部の様子が見えないんだ。
それなのに俺が監視に気づき、なおかつビル内部の様子を知っていることに少し驚いている様だが、葛西氏は敢えてそこは質問をしないでくれた。
まぁ、質問をされても適当にぼかしちゃうんだけれどね
「なるほど・・・。
然るべきところへ通報して動いてもらいましょう。
NCISから依頼された海軍中尉の一件は、某国の非合法組織が動いている可能性が非常に高いようです。
明石さんも身辺には十分注意をなさってください。
少なくとも、貴方の名は某国のブラックリストには乗せられた可能性が高いです。」
うん、知っていた。
某中華なお国の非合法工作員であることは別途俺の方でも調査済みだ。
どうも、そこの関係筋が背景をぼかすために、わざわざ白人系と東南アジア系の人物を送り込んできている様だ
こんなことになるかも知れないから、あまりお国がらみの事件には関わりたくないんだけれど、まぁ、関わった以上は仕方がない。
俺の周囲にいる妖精や精霊さんなんかにお願いして周囲に不審者がいないかどうかを常に監視してもらっているよ。
但し、数百メートルも離れた位置から狙撃でもされた日には察知しようもない。
まぁ、その時は俺の守護霊が何とかしてくれそうな気もするんだが・・・。
この守護霊という存在は、滅多に顕現しないし、現世にはよほどのことが無ければ干渉しないんだ。
その辺に決まりがあるのかどうかは俺は知らない。
因みに俺の守護霊は九尾の狐だよ。
俺に対しても滅多に姿を見せないんだが、極々たまに、夢の中に妙齢の女性の姿で現れることもあるな。
九尾の狐と気づいたのは、消える際に、一瞬だけど多数の尾を持つ狐の姿に変化したのを見たからだ。
尾が九本だったかどうかは正直言ってわからないが、十三尾の狐と七尾の狐とかはそうそういないだろうから勝手に九尾の狐と思っているだけだ。
どちらかと云うと今のところは守護をしてもらっているという顕著な例は見当たらない。
現れた時に、「妾は其方の守護霊じゃ。」と言ったのが唯一の手掛かりに過ぎない。
少なくとも悪さはしていないな。
だから困った時の神頼みじゃないけれど、本当に俺の命が危ない時には、彼女(?)が何とかしてくれるんじゃないかと密かに期待しているんだ。
神奈川県警のパトカーが先に到着した。
そのまま俺は、山手警察署へ運ばれた。
NCISにもその旨を連絡して、最終的に外事がらみとあって、外事課の隠地さんという課長補佐と仲良しになった。
俺に関する不法侵入については一切おとがめなし。
デビッドソン中尉の命がかかっていたので緊急避難措置として住居侵入程度は見逃してくれたようだ。
なお、彼《か》のお屋敷については外事課が捜索差押令状を早速にとって執行したみたい。
その後の話については、俺は知らない。
俺は仕事が済んだので、一旦横須賀に戻り、車で渋谷に戻ったよ。
後は外事課とNCISが何とかするだろう。
少なくともケイ・ヤガシラについては、拉致監禁罪の主犯か従犯で逮捕だな。
拷問をしていた奴らについては傷害罪か暴行罪が適用されるだろう。
トランクの中には拷問最中の監視カメラの映像が入っていたからな。
逃れようがない筈だ。
色々とその後もアメちゃんやら外事警察の方でドタバタしていたけれど、俺は極力関与しない方向で動いていたぜ。
何とかNCISの方で俺をかばってくれたみたいで、俺には特段のおとがめは無し。
デビッドソン中尉を救助してから十日ほど経って、NCISからは諸経費以外に報奨金として1万$が貰えたよ。
まぁ、NCISというよりは、どうも米海軍からの報償費らしいがな。
今後ともよろしくと言って通訳だったクリスさんが小切手入りの封筒を手渡してくれたよ。
余り、関わりたくない組織なんだが、NCISやUSN、さらにはFBIまでが、俺の存在を知っているからね。
奴らの場合、色々と横のつながりも多いから、CIAやDEA、さらにはNSAやATFなどにもきっと俺の情報が出回っているぜ。
何となくやばい気がするねぇ。
そうしてその予感が当たっていた。
◇◇◇◇
NCISの依頼の件から一月ほど経ってから、一組の男女が俺の事務所に現れた。
男はきっちりと背広を着こなしているし、女は所謂パンタロンタイプのリクルートスーツなんで、一見してお堅い職場と分かるぜ。
顔も男はイケメン、女は知的な美女?って感じだな。
男の方が年上で上司に見えるな。
俺に面会して名刺を渡してきた。
男は内閣情報調査室の特任調査班長の葛西啓二、女は同じく特別調査班副主任の井山絹江という人物だ。
内閣情報調査室というのは、内閣の活動に必要な情報を集めるお役所で、外務省や警察など多数の役所の出向職員が配置されているはずだ。
但し、外国からは日本のCIAとみられており、それに類する諜報活動もしているし、逆にカウンター・インテリジェンスと呼ばれる防諜活動もしているはずだ。
各省庁からの出向職員は、どちらかと云うと各省庁との連絡窓口の筈だが、他に専属のプロパー職員もいるはずだ。
そうしなければ腰掛程度の仕事では諜報活動も防諜活動もできそうにない。
で、今俺の目の前にいる二人が、もしかするとその専従員かもしれないね。
何せ「特任」と肩書に付くのだから普通のところじゃない。
葛西氏が早速切り出した。
「明石さんのことは、米国CIAの日本支部長からお聞きしました。
警視庁の神山さんにもお会いして、あなたのことはお聞きしています。
尤も、神山さんはなかなか情報をくれませんでしたから、やむを得ず警視総監命令として情報を吐き出させてもらいましたけれど・・・。
明石さんはとても有能な探偵のようですね?」
「いえ、いえ、私はしがない探偵に過ぎません。
こちらには何か依頼でしょうか?」
「ええ、依頼と言えば、依頼なんですけれど・・・。
貴方のことについては、少々調べさせていただきました。
学歴、資格、資産その他ですけれど、弁護士資格を持っていて銀行への預金額が300億円を超えている貴方が、何故探偵をしているのかがよくわからないのです。
貴方の資産については、不正な方法で入手したものではないことはわかっていますが、それだけの資産を持ちながら何故に儲からない探偵稼業をしているのかが分かりません。
中東某国の王子から受けた依頼で数百億円の収入があったことは承知していますけれど、普通の探偵のお仕事でそんな高額な報酬が入ることはまずありません。
それにその報酬が入った後にも探偵業は続けていらっしゃる。
貴方が探偵業を続けているのは報酬目当てではないということのようですが、何故探偵をされているのでしょう。
この点があなたに依頼をするかどうかのカギにもなりそうなので、依頼の話をする前に教えていただけないでしょうか?」
「ふむ、内調さんの依頼は余り受けたくはないですけれど、その内容にもよりますね。
まぁ、宜しいでしょう。
私が探偵を始めたきっかけは、私の姉が誘拐されて二年後に死体で見つかった事件が契機です。
姉は12歳の時、何の前触れもなく失踪しました。
後に、誘拐されていたことや、二年後に死体で発見される少し前まで生きていたことが分かっています。
両親は姉が帰宅しないので翌日には警察に失踪届けを出し、親族揃って姉を探しましたけれど見つかりませんでした。
生憎と警察は事件性が明確に疑われない場合は意気込みが違うんですよ。
父は資産をかなり使い、1年ほど私立探偵を雇って捜索を依頼しましたけれど、手掛かりは得られませんでした。
二年目には探偵事務所の方が新たな手掛かりが得られない限り、調査はしませんと申し入れてきました。
そのまま更に1年が過ぎて、隣の県の山中で死後一か月ほどの姉の遺体が発見されました。
そうして、その一月後には犯人も捕まりました。
警察や探偵事務所がもう少し本気で探していてくれれば、あるいは姉は生きたまま家に戻れたかもしれないのです。
葛西さんはあるいはご承知かも知れませんが、全国では年間約8万人の行方不明者が居るんです。
この数値は統計上のモノですから、実数はもっとあるかも知れませんね。
僕は、犯罪に遭った被害家族の一員として、遺された者の悲しみを知っています。
姉の場合で言えば、二年近くも救出の機会があったにもかかわらず救出できませんでした。
僕が探偵をやっているのは、行方不明となった家族のために行方不明者をできるだけ早く家族のもとに返してあげたいというそれだけの理由です。
国や警察がしてくれないのなら、個人ができる範囲でするしかありません。
それが探偵業だったのです。
警察などの治安機関でそうした仕事に関わる方法もありましたが、組織に入るとその組織の制約を受けます。
上意下達の組織内では、余程組織や上司が優秀でなければ漏れが出ますし、組織の一員では勝手に動くこともできません。
ですから探偵という個人事業主を選んだわけです。
私の事務所のホームページもご覧になっていると思いますけれど、私の事務所のメインは『人探し』なんです。
ですから人探しならば受けますけれど、単なる旦那の浮気調査なんかはお断りしています。
警察からの依頼もこれまで何件か受けてはいますが、事件だから受けているのではなく、助けられる命があるなら助けたいという方針で臨んでいます。
基本的に国やお役所の仕事は受けたくないとも思っています。
国なりお役所なりは、巨額の予算を使って大規模な人員を投入できるはずです。
そうした組織の一部になることは原則としてお断りします。
私の場合、個別の依頼に応じて、場合によっては、警察などの依頼も受けるということです。」
「ふむ、米海軍中尉の救出に貴方も関わったと聞いているのですが、これは国の依頼ではないのですか?」
「ええ、国の組織という法人からの依頼ですね。
米海軍の兵士が戦場で行方不明になったのならば、私の出る幕はありません。
でも、プライベートな時間で行方不明となり、彼の帰りを待っている家族が居ると聞きましたので依頼を受けました。
飽くまで彼の行方を捜すのがメインであって、救出が目的ではありませんでした。
しかしながら、現場で彼の命が風前の灯火であり、一刻を争う事態と分かって緊急避難で彼を救出しました。
探偵が警察や医師の真似事をできないのは知っていますが、緊急の場合には敢えてその制限を外すこともあります。」
「なるほど、できればあなたに専属として内閣情報調査室の調査員となっていただけないかと思っていたのですけれど、そちらはどうも無理なようですね。
今現在、貴方に依頼があるわけではないのですけれど、人探しという分野においてあなたに助力を求めたいときには個別の依頼をすることにいたしましょう。
生憎と仕事柄、秘密を要する内容が多いもので、原則として、私か井山が直接こちらにお邪魔して依頼することにいたします。
できれば依頼を受けていただきたいところですが、秘密厳守を前提にそこは任意としましょう。
本当に緊急の場合は、こちらに電話で連絡をさせていただきたいと思いますが、そのためのホットラインをこちらに引かせていただきたいのですが、工事の許可を頂けましょうか?」
「内調の方が事務所内での盗聴をしないとお約束できるなら工事業者が入っても構いません。
仮に盗聴装置等が組み込まれているような場合は勝手に除去しますけれど、それでもよろしければどうぞ。」
葛西氏は、チョット唖然としているようでしたけれど、すぐに頷きましたね
「飽くまで、ホットラインをつなぐだけです。
余分な物がある場合は、あなたの方で除去もしくは使用不可にしてもらっても構いません。」
「そうですか・・・・。
実は1週間ほど前から、ウチの向かいのビルの7階からこちらを監視している者がいるんですけれど、外人さんが絡んでいるようなんです。
葛西さんのお力で何とかできませんか?」
「向かいのビルの7階?
どの辺りかわかりますか?」
「左端から数えて6つ目のガラス窓があるあたりです。
どうも望遠レンズをつけた高性能カメラで隠れながらこちらを狙っているようです。
素性はよくわかりませんが、少なくとも二人の外人さんがいるようで、一人は白人、今一人は東南アジア当たりの外人さんのようですよ。」
実は向かいのビルは反射率の多いガラスを使っているために、こちらからはビル内部の様子が見えないんだ。
それなのに俺が監視に気づき、なおかつビル内部の様子を知っていることに少し驚いている様だが、葛西氏は敢えてそこは質問をしないでくれた。
まぁ、質問をされても適当にぼかしちゃうんだけれどね
「なるほど・・・。
然るべきところへ通報して動いてもらいましょう。
NCISから依頼された海軍中尉の一件は、某国の非合法組織が動いている可能性が非常に高いようです。
明石さんも身辺には十分注意をなさってください。
少なくとも、貴方の名は某国のブラックリストには乗せられた可能性が高いです。」
うん、知っていた。
某中華なお国の非合法工作員であることは別途俺の方でも調査済みだ。
どうも、そこの関係筋が背景をぼかすために、わざわざ白人系と東南アジア系の人物を送り込んできている様だ
こんなことになるかも知れないから、あまりお国がらみの事件には関わりたくないんだけれど、まぁ、関わった以上は仕方がない。
俺の周囲にいる妖精や精霊さんなんかにお願いして周囲に不審者がいないかどうかを常に監視してもらっているよ。
但し、数百メートルも離れた位置から狙撃でもされた日には察知しようもない。
まぁ、その時は俺の守護霊が何とかしてくれそうな気もするんだが・・・。
この守護霊という存在は、滅多に顕現しないし、現世にはよほどのことが無ければ干渉しないんだ。
その辺に決まりがあるのかどうかは俺は知らない。
因みに俺の守護霊は九尾の狐だよ。
俺に対しても滅多に姿を見せないんだが、極々たまに、夢の中に妙齢の女性の姿で現れることもあるな。
九尾の狐と気づいたのは、消える際に、一瞬だけど多数の尾を持つ狐の姿に変化したのを見たからだ。
尾が九本だったかどうかは正直言ってわからないが、十三尾の狐と七尾の狐とかはそうそういないだろうから勝手に九尾の狐と思っているだけだ。
どちらかと云うと今のところは守護をしてもらっているという顕著な例は見当たらない。
現れた時に、「妾は其方の守護霊じゃ。」と言ったのが唯一の手掛かりに過ぎない。
少なくとも悪さはしていないな。
だから困った時の神頼みじゃないけれど、本当に俺の命が危ない時には、彼女(?)が何とかしてくれるんじゃないかと密かに期待しているんだ。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた
サクラ近衛将監
ファンタジー
ごく普通の男子高校生が、虐めまがいの暴力に遭い、その際にご先祖様で仙人だった守護霊に特殊な能力を与えられて、色々とやらかしはじめる物語。
メインの能力は「Resistance」と「Reaction」なのだが、そこから派生して種々の能力が使えるようになる。
その検証過程でどのような能力なのか確認しながら物語は進んでゆく。
毎週火曜日午後8時に投稿予定です。
一話あたり三千~四千字を目標にします。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる