【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ

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古狐を追い払って妃に

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薄い水色と薄い緑を混ぜたような布地に落ち着いた金色の刺繍。重苦しい豪華なネックレスとイヤリングとティアラが肩や首を強張らせている。
ふと横を見ると揃いの衣装を着こなす閣下がご満悦だ。

皇帝夫妻に続いて閣下と私が入場すると出席者が騒ついた。

閣下を見上げるとニッコリ微笑む。

「(帰っていいですか)」

「(駄目だ)」

「(今から部屋に戻ってを始めようかなと)」

「(くっ!こ、今夜は我慢する)」

「(ふ~ん?)」

「(…のは無理そうだ)」

そんなことをヒソヒソ話しているうちに、皇帝の側にいる人が手を挙げると静かになった。

「皇子エメットの誕生を祝ってくれて感謝する。
今宵は弟グリフィスとのミーナも駆け付けてくれた。ミーナは大怪我を負ったグリフィスを献身的に看病し支えてくれた恩人だ。彼女にも心から感謝したい。彼女のような心清らかな女性が大公妃となってくれることを嬉しく思う。
ミーナは他国の貴族令嬢だから質問攻めにすることなく歓迎の挨拶程度にして欲しい。
それでは、エメットとミーナに乾杯!」

止めて止めて!私のことは触れないで!みんなこっち見てるじゃない!
透明人間になれる能力も欲しかったなぁ。
こういうファンタジーは服ごと透明になれるよね?
もっといろいろな能力付けてってクレーム入れておけば良かった。
聖女が処女でなくなると力が無くなる設定にはめちゃくちゃクレーム入れたからなぁ。閣下としちゃっても能力消えないよ。

「ミーナ」

「はい?」

「これから挨拶を受けるから、可能なら微笑んで欲しい」

「表情筋が白旗上がそうですけど」

長い列ができているんだもん。

「ごめんな」

「分かりました。終わったらおんぶしてお部屋まで連れて行ってくださいね」

「喜んで」


そして

「どちらの出身ですか」

「隣です」

「…どちらの隣でしょう」

「多分あっちです」

「次」


「ミーナ様の家名はなんと仰るのでしょうか」

「…忘れました。子供の頃から城に住んでいたので」

「え?」

「次」


「ミーナ様のお父様の爵位は覚えていらっしゃいますか」

「多分 子爵だと思います」

「それなのにお城に?」

「王族より尊い存在らしいので」

「え?」

「次」


「グリフィス様、完治なさったのですね」

「……」

「怒っていらっしゃるの?」

「……」

「次」

今の超美人は誰?
何で最後に私が睨まれた?


笑顔が引き攣って痙攣した頃に挨拶が終わった。
表情筋って筋肉痛になるのだろうか。

「兄上達が踊り終わったら俺達の番だ」

「え!?」

「一応習っているのだろう?」

「……」

「踊りたくないなら止めておくか?」

「踊りたくない」

「分かった」

閣下は誰かに合図を送った後、私を抱きしめた。

「せめて抱きしめ返してくれないか」

だからギュッと抱きしめ返した。

「ミーナ、さっきの女は元妻だ」

「金髪に緑色の瞳の人?」

「そうだ。恋愛結婚だったが今は嫌悪感しかない。
何を言われてもあの女に心を寄せることはない。俺はミーナしか愛していない。だから何を言われても俺を信じて欲しい」

「まさか復縁希望!?」

「もしかしたらそのまさかだ。
あの状態の俺を捨てて帝国に戻ったんだ。誰からも相手にされない。だが見た目だけはいいから男共に遊ばれているらしい」

「遊ばれているっていうのは」

「身体だけ使われているということだ」

あんな超美人でもそんなことになるんだ。

「分かった」

あの超美人と恋愛結婚したのか。
あれが閣下の好みのタイプなんだろうな。だとしたら私は痩せたスッポンだわ。

「フィア」

「はい、ミーナ様」

「トイレにつれて行って」

「かしこまりました」

少し不安そうな閣下と別れて会場の外に出た。

「外の空気を吸いたいの」

「ですが、」

「お願い」

「では少しだけ」


直ぐ近くの庭園に連れて来て貰った。

「どうなさったのですか?」

「元奥さん、めちゃくちゃ美人ね」

「帝国一の美女といわれていましたね」

「だよね」

「ミーナ様?」

「彼女が宝石なら私は泥団子だわ。閣下に私は相応しくない」

「何を仰るのですか」

「あの超美人が閣下の好きなタイプなら、私を好きになったりしないわ。きっと今は錯覚しているのよ」

「閣下の耳に入ったら悲しみますよ。あれほど愛情表現をしているのに信じてもらえないだなんて」

「私が閣下を助けたから勘違いしちゃったのよ」

「確かにあの方は超美人です。でも今じゃ誰からも相手にされていません。閣下は間違いなくミーナ様に恋をしております。飾らないミーナ様に惹かれたのです。それは私もそうです。ミーナ様は閣下でも私でも同じ人間として対応してくださいます。心配してくださいます。いくらでも有力貴族や閣下に能力を使って取り入ることが出来るのに それをせず、私達護衛やメイドの手荒れや疲れを気にしてお力を使ってくださいます。私達はミーナ様の魂の美しさが見えるのです」

「褒めすぎだってば」

「いえ。寧ろ足りません。今から朝までミーナ様の素晴らしさを語りましょうか」

「恥ずかしくて気絶しそうだから遠慮しておく」

「そろそろ戻りませんか。貴族達が自由に踊っている頃ですし、閣下が捜索隊を出していそうですから。それに、私はミーナ様に閣下に纏わりつく女狐を木っ端微塵にして追い払って欲しいのです」

「じゃあ、次の祈りの旅も後押ししてくれる?」

「もちろんです」

「よし 戻ろうか」

「はい」


会場の入り口に閣下達がいて、叱られた。

「何処に行っていたんだ」

「庭」

「何故断ってから行かないんだ」

「探して欲しくないから」

「……俺が何か気に触ることをしたのか」

「した」

「な、何をしたのか言ってくれ」

「あんな超美人に鼻の下伸ばしていたなんて。暫くフィアと寝る」

「ミーナっ」

「ふん!」

「あれは若気の至りだ!見る目が無かったんだ!許してくれ!」

「ふん!乳も豊満だしね」

「ち!?……ミーナの乳の方がいい」

「あんな超美人とどう対抗しろって言うのよ」

「ミーナの方が可愛いよ」

「ふん!」

「本当だよ。かたときも離れたくないなんてミーナにしか思わない」

「恋愛結婚なんでしょ。愛してるとか言ったんでしょ」

「ミーナ」

「ううっ…」

グリフィスは膝をついてミーナの両腕を掴んだ。

「ミーナ。泣かないでくれ」

「ちょっと!笑ってるじゃない!」

「くっ!だって仕方ないだろう。可愛いし嫉妬してくれるし、ミーナが俺を喜ばすからだ」

「……」

「それにミーナが優れているうちの一つ、それを確認させてくれ」

「え? ちょっと!」

「お前達、30分2人の時間をくれ。30分経ったらメイドを寄越して化粧直しをさせてくれ」

「かしこまりました」

グリフィスは私を抱き上げて近くの部屋へ入ると、テーブルの上に私を座らせた。キスをして首筋を舐め、押し倒した。ドレスの裾を捲り下着の中に手を忍ばせた。

「待って!駄目っ」

「駄目なはずはない」

「あっ」

膝を立てさせて大きく開くと舌と指でミーナの準備を整え、グリフィスはゆっくりミーナのナカに収めた。

「ミーナ」

「んんっ」

「分かるだろう?ミーナのナカで悦んでるのが」

「んっ!」

「誰よりもミーナのナカは気持ちいい。ずっとこのナカにいたいくらいだ」

「はうっ」

「俺を見て」

「あっ」

「俺を見て」

「ああっ!!」

「続きはパーティが終わってから。今は許してくれ」

ミーナの肩を掴みグリフィスは抉るように激しく突き上げて吐精すると 拭かないままミーナに下着を履かせた。

「ミーナ、零すなよ」

「っ!!」

その後、メイドがドレスを整え化粧を直した。


ご満悦のグリフィスと目を潤ませて色気を放ちながらおかしな歩き方をするミーナを見て、かなりの貴族が2人の交わりを悟った。

だが、そんな空気を認めたくない女がいた。

「グリフィス様っ」

「……」

「本当に心配していたの。夜も眠れずひたすら祈っていたのよ」

「逃げておいて?」

「怖かったの。許して。私のことを愛してるでしょう?」

「愛してなどいない。名前で呼ばす“大公閣下”と呼べ」

「怒っているのね。悪かったわ。償いはするからやり直しましょう?また昔のように、」

「タメ口をきくな。それが許されるのは皇帝陛下とミーナだけだ。俺はミーナを愛している。他の女とどうこうなるつもりはない」

「若いだけじゃない!私の方が身分も美貌もスタイルもいいわ」

「ミーナへの侮辱は許さないぞ」

「だって、」

「お姉さんはいくつですか?」

「……私のこと?」

「グリフィス様はお兄さんです。つまりお姉さんは貴女です」

「私は公女なのよ!」

「知ってます。グリフィス様、このお姉さんの歳はいくつですか」

「28だ」

「グリフィス様っ!」

「次に大公閣下と呼ばなければ不敬に問うぞ」

「っ!」

「28歳っていったら私と9歳も違うじゃないですか。若いだけといいますが、大公閣下には若い妻の方がいいんです。子孫を残さないといけないので」

「何て無礼なの!」

「仕方ないでしょう。他人ひとの男に誘いをかける ふしだらな女を追い払わないといけないのだから」

「は?」

「貴女は身も心も傷付いていた夫を捨てたの。病めるときも支えると神の前で誓ったのに追い討ちをかけたの。
私は側にいたの。この手に触れて早く治るよう祈ったの。そして私と彼は恋人同士だし、最初に婚約者だって紹介があったのに聞いていなかったの?
それなのに厚かましく復縁を乞うのは泥棒と一緒じゃない。

よく聞きなさい。彼はいろんな男達に使い古された年増を引き取るような聖人じゃないの!彼は毎日のように私を求めるし、さっきも我慢出来ずにパーティを抜けて愛し合って来たの。パーティの後に続きをするんだって。
私の身体を知った後で貴女に戻りたい訳ないじゃない。今年寝た男達の中から結婚相手を選んだら?」

「あ、あんただって大公夫人の座が欲しいだけでしょう!贅沢して暮らしたいだけでしょう!彼が大公だから付き合っているんでしょう!」

「貴女はそうだったみたいだけど私は違う。エッチが上手いからよ」

「は?」

「分かりやすく言うと、この人とのセックスが気持ちいいからよ!」

「なっ!」

「ミ、ミーナっ!」

「く、苦しいっ」

グリフィスはミーナを強く抱きしめた。

「駄目と言いながら やっぱり悦んでいたんだな。
遠慮なくもっと励むよ」

「あっ」

「どうした」

「グリフィス様の零しちゃいました」

「お仕置きだな。またたっぷり、」

「グリフィス、それ以上は止めろ。お前の甥の誕生祝いの場だぞ。エメットにはまだ早過ぎる」

「子供部屋で寝ていますよ」

「地獄耳だったらどうするんだ。
ミーナ。半年後に結婚式に招待してくれよ」

「え?」

「もう其方からプロポーズしたみたいなものだ。観念してさっさとグリフィスと式を挙げろ。

公女。グリフィスには既に大公妃としてアルネージュが認めたミーナがいる。これ以上付き纏うな。そもそもお前の首を刎ねたい程 私は憤慨していたんだ。その上でこんな馬鹿なことをするとはいい度胸だ。二度と皇都とアルネージュに立ち入るな。分かったな」

「そんなっ グリフィス様は意地を張っていらっしゃるだけですわ」

「お前のような性病を持っていそうな身持ちの悪い年増を妻にしたい貴族などいない。当然我ら皇族も同じだ。食い下がるなら投獄するぞ」

私は公女の手首を掴んだ。

「おめでとうございます」

「は?」

「双子を妊娠中ですね」

「嘘っ!嘘よっ!」

すごく小さいけど判別はつく。

「確かに男の子の双子です。月のモノが止まっているのでは?」

「っ!」

「困りましたね。その反応だと誰の子かも分からないのでは?見苦しく私のものに縋り付いていないで父親を探した方がいいですよ?
どうしても妊娠が信じられなければ今からお医者様に診断してもらいますか?」

「よし、宮廷医を呼んでやろう」

「何の騒ぎですか」

「公爵、おめでとう」

「陛下?」

「其方の娘は双子を妊娠中だ。今何ヶ月か知らないが男児の孫が産まれるぞ。誰の子かは分からないが良かったな。
それとマリグレッタは皇都とアルネージュに足を踏み入れることを禁じた。明日は移動の時間として猶予をやろう。明後日からマリグレッタが皇都かアルネージュにいれば直ちに投獄し強制労働させる。その時は当主にも監督責任を問うからな」

「なっ!」

「祝いの場で浅ましくも自ら捨てた元夫に言い寄ったのだ。私は最初に告げたはずだ。グリフィスには献身的に尽くした婚約者がいると。胎に何処かの男の子を身籠りながら私の言葉を無視してグリフィスに付き纏うなど許されることではない。
本当はグリフィスを見捨てたときにその女を処刑したかったのだ。私の忍耐力を試すなら家門ごと覚悟をするのだな」

「明日、必ず娘を去らせます」

「支度があろう。連れて屋敷に戻るがいい」

「仰せのままに。失礼いたします。
マリグレッタ、帰るぞ」

「お父様!」

「いい加減にしないと私の手で始末するぞ」

「っ!」

「早く来い」



父娘は会場から去り、閣下はソワソワと私と皇帝を見ていた。

「分かった 分かった。グリフィス達も部屋に戻れ。明日は部屋食だな?って返事くらいしていけないのか」

グリフィス様は私を抱き上げて会場を後にした。
貴賓室に戻ると1週間部屋から出してもらえなかった。


そして私はうっかりしていた。

「グリフィス様。半年後の挙式は出来ません」

「もう俺に飽きたのか!」

「受精しました」

「ん?」

「分かるんです。妊娠しました」

「パーティの日の交わりで?」

「そうです。見事に生き抜いて辿り着いた種がいます」

パーティのあった日は避妊薬を飲んでいなかった。

「ありがとう!ミーナ!」

涙を流して喜んでくれた。

後から聞いたら、元妻が妊娠しなかったことを気にしていたらしい。今回のパーティで元妻の妊娠が分かり、原因は自分だと悩んでいたようだ。

そんな話を聞いて 元妻との子作りを想像して腹が立ったので、半日家出ならぬ城出をしてフィア達と皇都観光をして戻ったら皇帝に叱られた。
閣下が軍を出動させて探すと半狂乱になっていたらしい。

「だって。私以外と子作りしてたなんて聞いたら…もう一回城出してきます」

「待て待て!本当に大変だから止めてくれ。グリフィスを踏み付けにして仕置きでもしてやればいい」

「いいんですか?」

「其方と会う前のことなのに理不尽だとは思うが仕方ない」

「いえ皇帝陛下。彼が独身の時に会っています。子供でしたが」

「…グリフィスはロリコンではないぞ?」

「ううっ だって」

「や、止めろ!泣くなっ!」

バン!

「ミーナ!!」

蹴破る勢いでドアを開けて入室したグリフィスはミーナに駆け寄ると ミーナが泣いている様を見て兄の皇帝を睨んだ。

「兄上?」

「ち、違う!私ではない!グリフィスがマリグレッタと子作りした過去に腹を立てて泣いているんだ!」

「ミーナ…俺が悪かった」

「ううっ」

「お腹の子まで泣き出すから、泣き止んでくれ」

「浮気者~!」

「ミーナっ」

「あらあら、ミーナ様。美味しいお菓子を食べましょう」

そこに現れたのは皇妃だった。

「妊娠すると心が不安定になる女性もいるのです。ミーナ様は影響が強いようですね。言動に気を付けないと大変なことになりますよ?グリフィス様」

「…はい」

「他の女性のことは口にしてはなりません。目線も向けてはなりません。過去の話も駄目です。悪阻が始まれば更に辛くなるでしょう。後で妊婦を支える夫の心得を伝授しましょう」

「ありがとうございます」

「まさか私は其方が妊娠中にやらかしていたのか?」

皇妃はニッコリと作り笑みを浮かべた。


帝国で婚約を交わし、アルネージュ大公国に戻って1ヶ月後に結婚した。
その後 悪阻が来たけど自分で治せた。

そして、閣下そっくりの男児が産まれた。

「何で? 私に微塵も似てない」

「ミーナ、ありがとう!」

2年後にまた閣下そっくりの男児が産まれ、それから6年後に閣下に似た私の色を受け継ぐ女児が産まれた。

長男と長女の中身は私に似て、次男は閣下そのものらしい。

上にやんちゃな兄、下に甘えることを武器にした妹に挟まれ、大公国の行末を案じて勉学に精進している。そんな次男を一番に可愛がるのはミーナだった。

アルネージュ産の食べ物や、それを食べて育つ家畜、養殖という方法をミーナに教わって育てた魚も品質が良くとても美味しかった。

「ジイジ~」

「見た目は大公閣下でも中身はミーナ様ですな」

長女がジイジと呼ぶのは元教皇フェロア。
引退して若い妻を娶ってアルネージュに移住した。
子も2人いて、ミーナの子と一緒に国史や神の教えの授業をするために大公宮に通い出したところだ。

「そう?」

「そうですよ。
しかしやっぱりミーナ様の祈りが効いた食べ物は美味ですな。舌が悦んでおります。
閣下とは上手くいっているようですな」

挙式にはフェロアも招待され参列していた。
デキ婚みたいになったから すごく心配してくれていた。

「私が消えないように常に監視を置いているのよ。
まだ不安みたい。ね、フィア」

「それはそうです。ミーナ様は祈りの旅に出ては何日も延期して、その度に閣下が迎えに来るのですから」

フィアが私の肩にショールを掛けた。

「ふふっ」

「ほら見てください。窓からじっと閣下がミーナ様を見張っていますよ」

「うわぁ。仕事サボってるなぁ」

「側近が頑張るでしょう。アルネージュの要はミーナ様と言っても過言ではありません。閣下の1番の役割はミーナ様のお心を繋ぎ止めることですから」

「ジイジ、抱っこ」

「はいはい、皇女様。葉っぱと蜘蛛の巣を取ってから抱っこしてあげますよ」

「もう、この子ったら」

「ママ。秘密の道を見つけたよ」

「え!?」

「ママは通れるけど、ジイジは通れないかな」

「それ、パパに教えにいってもらえる?」

「分かった!」

全速力で走る小さな娘を乳母達が慌てて追いかけていく。

「あの子の乳母達には特別手当てを出さないとね」

長女の乳母と女性の専属護衛兵士も葉や蜘蛛の巣や土汚れなどが付いていた。



《 完結 》










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