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偵察(グラシアン)
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【 グラシアンの視点 】
父上に呼ばれたのは数ヶ月前。妹トリシアの婚家になるバンフィールド公爵家からの使者が去った翌日だった。
私とトリシアは王妃の不妊で娶られた側妃の子だ。
だが、トリシアを懐妊していたときに王妃の妊娠が判明した。母は、王妃に王女が産まれるようにと祈っていたが、産まれたのは王子だった。
側妃の子でも国王陛下の子には違いない。順当ならば次期国王は私なのだが、王妃の実家は貴族派で権力を持つ。そのため、周囲は次期国王を第二王子ミカエルが指名されると判断した。
仕える者達の中に貴族は多い。平民の使用人も貴族籍の使用人に逆らえない。
母と私とトリシアは様々な嫌がらせを受けてきた。
王妃もミカエルも私達の容姿が気に入らない。
母は伯爵家の出身で絶世の美女だ。婚約者がいたが、陛下に求められて解消せざるを得なかった。
幼い頃からの婚約者である王妃は黒髪に紺色の瞳で、貴族令嬢としては平凡な容姿。母は煌めく金髪に透き通った緑色の瞳。デビュータントで陛下に見初められた。
ミカエルは王妃に似たの顔に茶色の髪と紺色の瞳。
私は母に似たの顔に茶色の髪と水色の瞳。
トリシアは母に似たの顔に金髪と水色の瞳。
私とトリシアは異性の目も心も惹きつけてしまう。
王宮行事で明らかに差が付いてしまう。家門から次期王妃を出したい野心溢れる当主夫妻が娘の背を押してミカエルの側に寄るのに対し、私の周りには様々な令嬢が陶酔したように群がる。
ミカエルのあの仄暗い瞳が私達兄妹を見つめる。
ミカエルには直ぐに婚約者が決まった。王妃の実家に次ぐ有力貴族だった。
私には成人後に縁談があったが、どの令嬢も好みでもなければ利も無い。王妃の力が及んでいるから仕方ないかった。兄弟の多い令嬢を選び、さっさと子を産ませてしまおうと思った。
婚約者になったカロルは陶酔者の一人だった。やたら会いたがるのではっきりと“恋人ではない”“王子妃になるなら妃教育に力を入れろ”と告げた。
少しは大人しくなったが、王宮行事でベタベタと纏わり付く。“酒場の娼婦のような真似は止めろ”と言うと泣き出した。
婚姻し、初夜を迎えるとキスをせがまれたができなかった。もう拒絶感しかない。刺激をして勃たせて事を成す。絶対に医師の指し示した日以外は抱かなかった。
婚姻後、3回目の月のモノは確認されず、その後妊娠が確定。だが、早々と流産の診断が下った。
そして今、また妊娠している。
いっそのこと他国に婿入りしたいと思っていたところだった。
『トリシアとバンフィールド家の婚約が解消された』
『は?』
父上から告げられたのは、隣国を挟んで向こう側の大国ガルデニア王国の筆頭公爵家との婚約の解消だった。トリシアだけでもこの泥沼の城から抜け出せると思っていた。
『コルシックの状況はかなり悪い。外部からの支援が必要だ。バンフィールド家は解消の対価とある条件を提示してきた』
そこで、バンフィールド公爵家からの支援金と、コルシックとガルデニアの間にある隣国からの支援も取り付けてくれるという話だった。
『そこまで困窮していたのに王妃殿下達の散財を放置なさったのですか!?』
『あれでも削った方だ。実家から支援があるからそう見えるだけだ。
あと、トリシアにはガルデニア王国の第三王子と婚姻したいと申し出て欲しいそうだ』
『王子?』
『つまりトリシアの心変わりで婚約を解消し、第三王子との縁談を結ぶ』
『それではトリシアは悪者ではありませんか!』
『その代わり、隣国の支援やバンフィールド公爵家からの支援金はセロー伯爵家を通す。つまりお前達の立場が変わる。国の救世主級の扱いになるから王妃も弁えなければならない』
『ミカエルが暴れますよ』
『あいつに継がせたら国が滅びる。それにカロルに盛られた堕胎薬の証拠が揃う。これでお前は自由だ』
『堕胎薬!?』
『堕胎薬を混入させたのはカロルの実家だ。王妃の実家からの命令だった。だが今 公にしたら揉み消される。だからお前達の後ろ盾を固めてから明らかにしたい』
『カロルは』
『カロルは知らなかったが、実家が実行犯となれば王族の殺害として無傷ではいられない。だが被害者でもある。地方の別荘に住まわせる事を温情処分とする。となれば離縁となるだろう』
『そこまで公にするのであれば』
『王妃の実家も同じ罪に問う。王妃は幽閉。実家は爵位を落とし財産の大半を没収する。ミカエルは婿に出そう』
『トリシアは何と言うか』
『トリシアは承諾した。どのみち円満解消が無理なら解消させられる。バンフィールド家は力があり過ぎる』
マチアス殿とは一度会っている。トリシアとも顔を合わせたが興味を示してはいなかった。
『バンフィールド家の目的をご存知でしょうか』
『バンフィールド家にとって有益な令嬢か王女が現れたか、トリシアが負けるほどの令嬢か王女が現れたのか。マチアス殿が3年生になる前の長期休暇にトリシアをガルデニアに送る』
『私も同行させてください』
『頼んだぞ』
そしてトリシアとガルデニア王国を訪れた。
マチアス殿を含めた王子達と会う日が来た。
トリシアは万全に身支度を終えた。成長したトリシアを見たらマチアス殿の気が変わるだろうと思うほど美しく仕上がっていた。
父上に呼ばれたのは数ヶ月前。妹トリシアの婚家になるバンフィールド公爵家からの使者が去った翌日だった。
私とトリシアは王妃の不妊で娶られた側妃の子だ。
だが、トリシアを懐妊していたときに王妃の妊娠が判明した。母は、王妃に王女が産まれるようにと祈っていたが、産まれたのは王子だった。
側妃の子でも国王陛下の子には違いない。順当ならば次期国王は私なのだが、王妃の実家は貴族派で権力を持つ。そのため、周囲は次期国王を第二王子ミカエルが指名されると判断した。
仕える者達の中に貴族は多い。平民の使用人も貴族籍の使用人に逆らえない。
母と私とトリシアは様々な嫌がらせを受けてきた。
王妃もミカエルも私達の容姿が気に入らない。
母は伯爵家の出身で絶世の美女だ。婚約者がいたが、陛下に求められて解消せざるを得なかった。
幼い頃からの婚約者である王妃は黒髪に紺色の瞳で、貴族令嬢としては平凡な容姿。母は煌めく金髪に透き通った緑色の瞳。デビュータントで陛下に見初められた。
ミカエルは王妃に似たの顔に茶色の髪と紺色の瞳。
私は母に似たの顔に茶色の髪と水色の瞳。
トリシアは母に似たの顔に金髪と水色の瞳。
私とトリシアは異性の目も心も惹きつけてしまう。
王宮行事で明らかに差が付いてしまう。家門から次期王妃を出したい野心溢れる当主夫妻が娘の背を押してミカエルの側に寄るのに対し、私の周りには様々な令嬢が陶酔したように群がる。
ミカエルのあの仄暗い瞳が私達兄妹を見つめる。
ミカエルには直ぐに婚約者が決まった。王妃の実家に次ぐ有力貴族だった。
私には成人後に縁談があったが、どの令嬢も好みでもなければ利も無い。王妃の力が及んでいるから仕方ないかった。兄弟の多い令嬢を選び、さっさと子を産ませてしまおうと思った。
婚約者になったカロルは陶酔者の一人だった。やたら会いたがるのではっきりと“恋人ではない”“王子妃になるなら妃教育に力を入れろ”と告げた。
少しは大人しくなったが、王宮行事でベタベタと纏わり付く。“酒場の娼婦のような真似は止めろ”と言うと泣き出した。
婚姻し、初夜を迎えるとキスをせがまれたができなかった。もう拒絶感しかない。刺激をして勃たせて事を成す。絶対に医師の指し示した日以外は抱かなかった。
婚姻後、3回目の月のモノは確認されず、その後妊娠が確定。だが、早々と流産の診断が下った。
そして今、また妊娠している。
いっそのこと他国に婿入りしたいと思っていたところだった。
『トリシアとバンフィールド家の婚約が解消された』
『は?』
父上から告げられたのは、隣国を挟んで向こう側の大国ガルデニア王国の筆頭公爵家との婚約の解消だった。トリシアだけでもこの泥沼の城から抜け出せると思っていた。
『コルシックの状況はかなり悪い。外部からの支援が必要だ。バンフィールド家は解消の対価とある条件を提示してきた』
そこで、バンフィールド公爵家からの支援金と、コルシックとガルデニアの間にある隣国からの支援も取り付けてくれるという話だった。
『そこまで困窮していたのに王妃殿下達の散財を放置なさったのですか!?』
『あれでも削った方だ。実家から支援があるからそう見えるだけだ。
あと、トリシアにはガルデニア王国の第三王子と婚姻したいと申し出て欲しいそうだ』
『王子?』
『つまりトリシアの心変わりで婚約を解消し、第三王子との縁談を結ぶ』
『それではトリシアは悪者ではありませんか!』
『その代わり、隣国の支援やバンフィールド公爵家からの支援金はセロー伯爵家を通す。つまりお前達の立場が変わる。国の救世主級の扱いになるから王妃も弁えなければならない』
『ミカエルが暴れますよ』
『あいつに継がせたら国が滅びる。それにカロルに盛られた堕胎薬の証拠が揃う。これでお前は自由だ』
『堕胎薬!?』
『堕胎薬を混入させたのはカロルの実家だ。王妃の実家からの命令だった。だが今 公にしたら揉み消される。だからお前達の後ろ盾を固めてから明らかにしたい』
『カロルは』
『カロルは知らなかったが、実家が実行犯となれば王族の殺害として無傷ではいられない。だが被害者でもある。地方の別荘に住まわせる事を温情処分とする。となれば離縁となるだろう』
『そこまで公にするのであれば』
『王妃の実家も同じ罪に問う。王妃は幽閉。実家は爵位を落とし財産の大半を没収する。ミカエルは婿に出そう』
『トリシアは何と言うか』
『トリシアは承諾した。どのみち円満解消が無理なら解消させられる。バンフィールド家は力があり過ぎる』
マチアス殿とは一度会っている。トリシアとも顔を合わせたが興味を示してはいなかった。
『バンフィールド家の目的をご存知でしょうか』
『バンフィールド家にとって有益な令嬢か王女が現れたか、トリシアが負けるほどの令嬢か王女が現れたのか。マチアス殿が3年生になる前の長期休暇にトリシアをガルデニアに送る』
『私も同行させてください』
『頼んだぞ』
そしてトリシアとガルデニア王国を訪れた。
マチアス殿を含めた王子達と会う日が来た。
トリシアは万全に身支度を終えた。成長したトリシアを見たらマチアス殿の気が変わるだろうと思うほど美しく仕上がっていた。
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