52 / 72
異国の王子に目を付けられる
しおりを挟むそしてグラシアン殿下が手を回したせいで、グラシアン殿下、玩具、王女殿下、公爵、マチアス様、公爵夫人…という横並びが出来てしまった。
向かいには3人の王子、スーザン、エリアーナ様、宰相という順番だ。
スーザンが心配そうな顔を隠さない。首を振って微笑みの仮面を付けろと合図を出すと、スーザンは表情を作った。王子妃教育は上手くいっているな、よしよしなどと思っていると、隣の殿下が笑う。
「姉妹仲がいいんだね。異母姉妹?」
「はい。似ておりませんが」
スーザンは美人だからね。
《休憩の間にアリス嬢とスーザン嬢のことを聞いたのだけど、1年の差も無いんだって?正妻の子の君がよく耐えられるね。不思議なことに彼女は君を慕っている》
《悪いのは父で、スーザンも被害者です。罪はありません。父のことは滅多打ちしたかったのですが生かしておきました。まだ微塵でも活用できますしスーザンの父でもあるので仕方ありません。スーザンも実母と離せば、牙を剥く子狐から従順な子犬に変わりましたから、今では可愛い妹です》
《実に興味深いよアリス》
“嬢”は何処へ?でも王族に“アリス嬢と呼べ”とは言えない。
陛下「何を話しているのかな?」
グ「これは失礼をしました。アリス嬢とスーザン嬢の仲の良さの秘訣を教えてもらおうとしておりました。私もトリシアも側妃の子ですから」
え?そうなの!?
ああ、スーザンが下を向いちゃったわ!
私「グラシアン王子殿下の状況とはちょっと違いますが、私はスーザンが妹で良かったです。美人で素直で間違いを正していける子です。努力家でもあるのですよ」
ス「ううっ…お姉様っ」
私「何で元気付けてるのに泣くの!?お客様の前だから泣くのは止めなさい」
ス「だって…」
私「週末に時間を取って一緒に出かけてあげるから」
ス「!! 約束ですよ」
スーザンはピタッと涙を止めて微笑んだ。
全く…可愛いんだから。
エ「まさか、私との約束を忘れてないわよね」
そうだった!
私「エリアーナお姉様とは午前中に、」
エ「駄目よ。私も行くわ。いいわよね?スーザン」
ス「は、はいっ」
うちの妹を脅さないで!
グ「…トリシアはマチアス殿と観光に行くんだろう?」
ト「私はシルヴェストル殿下に案内してもらいたいですわ」
はあ!?
ト「シルヴェストル殿下ぁ。シアは殿下のエスコートで観光がしたいですわ」
シ「え? そ、それは」
シルヴェストル殿下はマチアス様を見た。
ト「いいですよね?マチアス様」
マ「陛下がお許しくださるなら私は構わないよ」
ト「嬉しい!」
もう決定したようね。
マチアス様の婚約者でしょう…いいの?
グ「では、私はコルシックの言葉でアリスに観光案内をお願いしたい」
私「そこまで堪能ではございません。王女殿下とご一緒に、」
グ「トリシアと私では巡る場所は異なる。嫌か?」
私「そういうことでは、」
グ「そうか。君も許可が必要なのだな?
陛下。アリス嬢に案内をしていただけるようにお願い出来ませんか」
陛下「通訳が必要ならば専門の通訳係を付けよう」
そうよ、陛下!断って!
グ「物価も貨幣も違いますから必要です。それに彼女は陛下や王妃殿下を除いて、この席の中心人物のようです。同席者全ての視線が集まります。彼女からこの国のことを教えてもらいたいのです。私と一緒では不安でしたらどうぞ護衛を何人でもつけてください」
そんな風に言われたら…
陛下は私をじっと見て、目蓋で“すまん”と言った気がした。
陛下「アリス嬢。学生の君に頼むことではないが引き受けてくれないだろうか」
国王陛下にそんな頼まれ方をしたら断れないじゃない!
私「喜んで拝命いたします」
マ「私もグラシアン殿下をご案内します」
陛下「公子は婚約者のトリシア王女殿下に付き添うべきだ。他に誰を付けたらいいか…」
外国語が得意なのはシルヴェストル様とマチアス様だから、こっちにシルヴェストル様が来てくれたら有り難かったのだけど。リオネル殿下を指名するとスーザンを巻き込むし、シリル殿下は第一王子だからもしもがあると怖い。
陛下「アリス嬢。誰かいないか」
私「許されるのならテムスカリン子爵家のエミリアン様が適任かもしれません」
陛下「ほう?」
私「テムスカリン家の商売を把握しているので、市場にも強く輸出入の関係で外国語も広く浅く学んでいますし、よく喋ります」
陛下「なるほど。直ぐに文を出そう」
グ「アリス嬢とどのような関係が?」
陛下「アリス嬢の婚約者の兄だ」
グ「婚約者を連れてくるのではなくて?」
私《表に出せないレベルなので》
グ《“お飾りにもなれない婚約者”を虐めてあげたのに》
私《それでは殿下の名に泥を付けてしまいますわ》
グ《私にか?》
私《一国の王子があんな男を相手にしたのかと名誉に関わります》
グ《そんなに酷いのか》
私《誰も見ていないなら荒れ狂った川に落としたいくらいです》
グ《逆に見てみたいな》
私《珍獣の方が可愛いですわ》
晩餐会はお開きになったが、トリシア王女殿下はシルヴェストル様にべったりだ。
不快に思っていいはずのマチアス様は全く気にする様子もなく私の元へ来た。
「リヴウェルを呼ぼうか」
「リヴウェルは婚約者の実家に行きましたけど」
「チッ ブレイルでも仕方ない。呼ぶか」
「ちょっと。ブレイル様が可哀想です。それに彼は夫人と領地へ向かったはずです」
1,715
お気に入りに追加
2,673
あなたにおすすめの小説

え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。

【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
秋月一花
恋愛
公爵令嬢のカミラ・リンディ・ベネット。
彼女は階段から降ってきた誰かとぶつかってしまう。
その『誰か』とはマーセルという少女だ。
マーセルはカミラの婚約者である第一王子のマティスと、とても仲の良い男爵家の令嬢。
いつに間にか二人は入れ替わっていた!
空いている教室で互いのことを確認し合うことに。
「貴女、マーセルね?」
「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを⁉︎」
婚約者の恋人と入れ替わった公爵令嬢、カミラの決断とは……?
そしてなぜ二人が入れ替わったのか?
公爵家の令嬢として生きていたカミラと、男爵家の令嬢として生きていたマーセルの物語。
※いじめ描写有り

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる