【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

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異国の王子に目を付けられる

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そしてグラシアン殿下が手を回したせいで、グラシアン殿下、玩具、王女殿下、公爵、マチアス様、公爵夫人…という横並びが出来てしまった。
向かいには3人の王子、スーザン、エリアーナ様、宰相という順番だ。
スーザンが心配そうな顔を隠さない。首を振って微笑みの仮面を付けろと合図を出すと、スーザンは表情を作った。王子妃教育は上手くいっているな、よしよしなどと思っていると、隣の殿下が笑う。

「姉妹仲がいいんだね。異母姉妹?」

「はい。似ておりませんが」

スーザンは美人だからね。

《休憩の間にアリス嬢とスーザン嬢のことを聞いたのだけど、1年の差も無いんだって?正妻の子の君がよく耐えられるね。不思議なことに彼女は君を慕っている》

《悪いのは父で、スーザンも被害者です。罪はありません。父のことは滅多打ちしたかったのですが生かしておきました。まだ微塵でも活用できますしスーザンの父でもあるので仕方ありません。スーザンも実母と離せば、牙を剥く子狐から従順な子犬に変わりましたから、今では可愛い妹です》

《実に興味深いよアリス》

“嬢”は何処へ?でも王族に“アリス嬢と呼べ”とは言えない。

陛下「何を話しているのかな?」

グ「これは失礼をしました。アリス嬢とスーザン嬢の仲の良さの秘訣を教えてもらおうとしておりました。私もトリシアも側妃の子ですから」

え?そうなの!?
ああ、スーザンが下を向いちゃったわ!

私「グラシアン王子殿下の状況とはちょっと違いますが、私はスーザンが妹で良かったです。美人で素直で間違いを正していける子です。努力家でもあるのですよ」

ス「ううっ…お姉様っ」

私「何で元気付けてるのに泣くの!?お客様の前だから泣くのは止めなさい」

ス「だって…」

私「週末に時間を取って一緒に出かけてあげるから」

ス「!! 約束ですよ」

スーザンはピタッと涙を止めて微笑んだ。
全く…可愛いんだから。

エ「まさか、私との約束を忘れてないわよね」

そうだった!

私「エリアーナお姉様とは午前中に、」

エ「駄目よ。私も行くわ。いいわよね?スーザン」

ス「は、はいっ」

うちの妹を脅さないで!

グ「…トリシアはマチアス殿と観光に行くんだろう?」

ト「私はシルヴェストル殿下に案内してもらいたいですわ」

はあ!?

ト「シルヴェストル殿下ぁ。シアは殿下のエスコートで観光がしたいですわ」

シ「え? そ、それは」

シルヴェストル殿下はマチアス様を見た。

ト「いいですよね?マチアス様」

マ「陛下がお許しくださるなら私は構わないよ」

ト「嬉しい!」

もう決定したようね。
マチアス様の婚約者でしょう…いいの?

グ「では、私はコルシックの言葉でアリスに観光案内をお願いしたい」

私「そこまで堪能ではございません。王女殿下とご一緒に、」

グ「トリシアと私では巡る場所は異なる。嫌か?」

私「そういうことでは、」

グ「そうか。君も許可が必要なのだな?
陛下。アリス嬢に案内をしていただけるようにお願い出来ませんか」

陛下「通訳が必要ならば専門の通訳係を付けよう」

そうよ、陛下!断って!

グ「物価も貨幣も違いますから必要です。それに彼女は陛下や王妃殿下を除いて、この席の中心人物のようです。同席者全ての視線が集まります。彼女からこの国のことを教えてもらいたいのです。私と一緒では不安でしたらどうぞ護衛を何人でもつけてください」

そんな風に言われたら…
陛下は私をじっと見て、目蓋で“すまん”と言った気がした。

陛下「アリス嬢。学生の君に頼むことではないが引き受けてくれないだろうか」

国王陛下にそんな頼まれ方をしたら断れないじゃない!

私「喜んで拝命いたします」

マ「私もグラシアン殿下をご案内します」

陛下「公子は婚約者のトリシア王女殿下に付き添うべきだ。他に誰を付けたらいいか…」

外国語が得意なのはシルヴェストル様とマチアス様だから、こっちにシルヴェストル様が来てくれたら有り難かったのだけど。リオネル殿下を指名するとスーザンを巻き込むし、シリル殿下は第一王子だからもしもがあると怖い。

陛下「アリス嬢。誰かいないか」

私「許されるのならテムスカリン子爵家のエミリアン様が適任かもしれません」

陛下「ほう?」

私「テムスカリン家の商売を把握しているので、市場にも強く輸出入の関係で外国語も広く浅く学んでいますし、よく喋ります」

陛下「なるほど。直ぐに文を出そう」

グ「アリス嬢とどのような関係が?」

陛下「アリス嬢の婚約者の兄だ」

グ「婚約者を連れてくるのではなくて?」

私《表に出せないレベルなので》

グ《“お飾りにもなれない婚約者”を虐めてあげたのに》

私《それでは殿下の名に泥を付けてしまいますわ》

グ《私にか?》

私《一国の王子があんな男を相手にしたのかと名誉に関わります》

グ《そんなに酷いのか》

私《誰も見ていないなら荒れ狂った川に落としたいくらいです》

グ《逆に見てみたいな》

私《珍獣の方が可愛いですわ》


晩餐会はお開きになったが、トリシア王女殿下はシルヴェストル様にべったりだ。
不快に思っていいはずのマチアス様は全く気にする様子もなく私の元へ来た。

「リヴウェルを呼ぼうか」

「リヴウェルは婚約者の実家に行きましたけど」

「チッ ブレイルでも仕方ない。呼ぶか」

「ちょっと。ブレイル様が可哀想です。それに彼は夫人と領地へ向かったはずです」

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