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許嫁
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長くかかりそうなので、一旦私は王妃殿下の元に預けられた。
「うふふっ」
ご機嫌な王妃殿下は最高級茶葉を使うようメイドに命じた。
「私は聞いているわよ」
王太子殿下は王妃殿下だけにあの条件を伝えていたようだ。まあ、昨夜の話だし、今は朝。本来報告はこれからだったのだろう。
王妃殿下に早朝のレオナルドとのやり取りを報告し終わる頃にはお茶が注がれた。
「いただきます」
「もしレオナルドとの閨が嫌ならウィリアムとすればいいわ。優しくしてくれるわよ」
「ゲホッ ゲホッ」
「あらあら」
咽せて乱れた呼吸を整えて王妃殿下に向き直った。
「ウィリアム様を種馬みたいに仰っては失礼ですわ」
「閨事なんて子作りだけの行為じゃないのよ?
確かにウィリアムの子をオリヴィアが産んでくれたら嬉しいわよ。だけど閨事は女の悦びを得られる行為でもあるから言ってるの。もったいないじゃない。
もちろん最初は痛いし、相手次第で苦痛を伴う行為だけどウィリアムは保証するわ」
王妃殿下の意外な面を知ってしまった。
「……」
「他の男と関係を持つよりウィリアムの方が安全よ。レオナルドが妬いてどうこうできる相手じゃないし子も安泰よ」
「王妃殿下…」
「二人の子なら可愛いでしょうね」
「王太子夫妻のお子は…」
「ウィリアムの子だとは分かっているのだけど、あの女の産んだ子だと思うとねぇ」
「……」
怖い!
「オリヴィアを第二妃にという案も検討したのだけど、あの女に虐められるかもしれないじゃない。
私が王妃のうちはいいけど、世代交代したらどんな意地悪するか分からないもの。
孫娘があの女によく似てるのよ。髪や瞳の色もよ?
さっさと他国に嫁に出す予定なの。
はぁ。後378日で新しい妃を迎えられるわ」
王妃殿下、そんなに細かく数えるほどお嫌いなのですね。
婚姻後7年間で男児を産めなければ第二妃か側妃を迎えることができるようになる。
今のところ王太子夫妻には娘1人しか産まれていない。
王妃殿下のグチを聞いているうちにお迎えが来た。
何故か私の腕を組み 王妃殿下が付いて来てしまった。
入室すると陛下は王妃殿下を見て、組んだ腕を見ると苦笑いをした。
陛「話は分かったが、彼が申し込んだ後では無理だ。違う理由で破談にしなければならない」
ウィ「今から調査を入れては時間がかかりますね」
私「ヘインズ公爵夫人か公子が何かご存知かもしれません」
レ「ロクサーヌを味方に付けましょう。公子はロクサーヌ次第なところがありますから」
確かに。
先ずはロクサーヌに事情を話した。
「本当にレオナルドと?」
「ロクサーヌと離れたくなくて」
「リア!!」
ロクサーヌは涙を浮かべて抱き付いてきた。
「任せて!アーサーの口を割らせるから!」
こうして得た情報を元に ある人を呼び寄せた。
「ルシィ様ぁ~!」
「マリー王女!?」
フリルをたっぷり使ったオレンジ色のドレスを身に纏った黒髪に赤紫色の瞳の女性がルシアンに抱き付いた。
陛下「許嫁がいたとは」
王妃「オリヴィアの気持ちを弄ぶなんて」
ロ「素敵な王女様と婚姻なさればいかがでしょう」
ウィ「貴方の国も二人目は何年か男児が生まれなければ娶れないという縛りがあったはずです」
陛下「これでは三国間で戦争が起きかねない。先日の申し入れは聞かなかったことにしよう」
王妃「聞けば幼い頃からのお付き合いだとか。マリー王女はルシアン王太子殿下のことをお慕いしていると昨夜たっぷり聞かせていただきましたわ」
ウィ「馴れ初めも王妃同士の約束も聞きましたよ」
ロ「オリヴィアをそんなお二人の邪魔者にしようなどとお人が悪いですわ」
ル「チッ 。 アーサーが喋ったのだな?ロクサーヌを使ったのだろう。ロクサーヌを先にアーサーから離すべきだったよ」
私「ロクサーヌに手を出したら私が許しません」
ルシアンは内腿に目線を向けたオリヴィアを避けるようにマリー王女の後ろに隠れた。
ロ「やっぱりお似合いですわ」
ロクサーヌはあの後、“オリヴィアがオロールに嫁ぐなら私もオロールで暮らす!”と言いながらアーサーの膝の上に乗って抱き付いた。
ロクサーヌを溺愛するアーサーは、日頃甘えてもらえないので免疫がない。そして婚姻してもオロール王国で暮らすと言うロクサーヌに危機感を覚えた。
本当に暮らしかねない。
アーサーは口を割った。
マリー王女はオロール王国の隣の小国の王族だが、王妃同士が親友だった。互いの王城も近いため時折行き来していた。そして、
“マリーがオロールに嫁いでくれたら安心なのだけど”
“じゃあウィリアムのお嫁さんになればいいわ”
など話していた。
国王は反対で、政略結婚としては旨味がないし、妃とするには難しいのではと幼い頃から判断をされていた。
マリーは良く言えば無邪気で純粋。悪く言えば空気の読めない馬鹿。愛妾ならいいが、いずれ王妃にするのは問題だ。だけど王妃達は交流を続け、マリーは“将来はウィリアムの妻になるのよ”と聞かされていた。
ウィリアムは大きくなるにつれてマリーを娶ることは国の負債になりかねないと判断した。
そして父王と相談した結果、好きな人ができたから その女性と婚姻するという作戦を決行することにした。
今までどの令嬢を候補にしても王妃が反対してきた。だから婚約が未だにいない。
ウィリアムとマリーが婚約できないでいるのは国王が反対しているから。王妃はいつかマリーを異性と意識して恋に落ちると思っていて、“ウィリアムが好きになったならいいわよね”と主張して最近もマリーとウィリアムを会わせていたのだ。
ウィリアムは親戚のいる国に行くと行って国を出てヘインズ公爵夫人を頼った。
だが、王太子としての自分に寄ってくる女と恋をする気にはなれず身分を隠した。そうなると王族につけるような護衛は付けられない。
男爵家ではあるが、同じルシアンという令息がいるので成りすまして妃探しをしていた。
そこに、既に妃教育を終えたオリヴィアを紹介されて交流するうちに好きになったらしい。
王妃の主張を逆手に取って、オリヴィアと恋に落ちたと連れ帰り婚姻するつもりだった。
マ「ルシィ様ぁ。観光に連れて行ってくださいませんか」
ル「止めろ、離れろ!」
王妃「ここまで来てくださる許嫁になんて冷たいのかしら」
ロ「もう十何年も待たせているらしいですわ」
王妃「王女もルシアン王太子殿下と同い年なら、もう(責任をとらないと)ねぇ」
陛下「そもそも国王同士が話し合えば終わる話であろう」
ウィ「嫌なら本人と本人の母親にはっきりと告げれはいいのですよ」
マ「よく分かりませんが、私達の後押しをしてくださっているのですね。嬉しいですわ」
陛下「あまり国を空けては良くない。観光をしながら帰国されよ」
王妃「お土産の品を選びますわね」
ウィ「オリヴィア、ロクサーヌ。私達は下がろうか」
ロ「どうぞお幸せに」
私「帰路もお気を付けくださいませ」
ル「オリヴィア、本当に駄目なのか」
私「他人を巻き込まずに解決なさいませ。ご自分のお気持ちをしっかりと告げるだけではありませんか。曖昧にしたせいでマリー王女殿下を待たせてしまっているではありませんか」
ル「母達が全く引き下がらないんだ」
私「そこに連れて行かれる身にもなってください。
それに、次期国王になるための小さな試練の様なものではありませんか。自国に戻り話し合ってください。失礼いたします」
こうしてルシアン騒動は終止符を打った。
「うふふっ」
ご機嫌な王妃殿下は最高級茶葉を使うようメイドに命じた。
「私は聞いているわよ」
王太子殿下は王妃殿下だけにあの条件を伝えていたようだ。まあ、昨夜の話だし、今は朝。本来報告はこれからだったのだろう。
王妃殿下に早朝のレオナルドとのやり取りを報告し終わる頃にはお茶が注がれた。
「いただきます」
「もしレオナルドとの閨が嫌ならウィリアムとすればいいわ。優しくしてくれるわよ」
「ゲホッ ゲホッ」
「あらあら」
咽せて乱れた呼吸を整えて王妃殿下に向き直った。
「ウィリアム様を種馬みたいに仰っては失礼ですわ」
「閨事なんて子作りだけの行為じゃないのよ?
確かにウィリアムの子をオリヴィアが産んでくれたら嬉しいわよ。だけど閨事は女の悦びを得られる行為でもあるから言ってるの。もったいないじゃない。
もちろん最初は痛いし、相手次第で苦痛を伴う行為だけどウィリアムは保証するわ」
王妃殿下の意外な面を知ってしまった。
「……」
「他の男と関係を持つよりウィリアムの方が安全よ。レオナルドが妬いてどうこうできる相手じゃないし子も安泰よ」
「王妃殿下…」
「二人の子なら可愛いでしょうね」
「王太子夫妻のお子は…」
「ウィリアムの子だとは分かっているのだけど、あの女の産んだ子だと思うとねぇ」
「……」
怖い!
「オリヴィアを第二妃にという案も検討したのだけど、あの女に虐められるかもしれないじゃない。
私が王妃のうちはいいけど、世代交代したらどんな意地悪するか分からないもの。
孫娘があの女によく似てるのよ。髪や瞳の色もよ?
さっさと他国に嫁に出す予定なの。
はぁ。後378日で新しい妃を迎えられるわ」
王妃殿下、そんなに細かく数えるほどお嫌いなのですね。
婚姻後7年間で男児を産めなければ第二妃か側妃を迎えることができるようになる。
今のところ王太子夫妻には娘1人しか産まれていない。
王妃殿下のグチを聞いているうちにお迎えが来た。
何故か私の腕を組み 王妃殿下が付いて来てしまった。
入室すると陛下は王妃殿下を見て、組んだ腕を見ると苦笑いをした。
陛「話は分かったが、彼が申し込んだ後では無理だ。違う理由で破談にしなければならない」
ウィ「今から調査を入れては時間がかかりますね」
私「ヘインズ公爵夫人か公子が何かご存知かもしれません」
レ「ロクサーヌを味方に付けましょう。公子はロクサーヌ次第なところがありますから」
確かに。
先ずはロクサーヌに事情を話した。
「本当にレオナルドと?」
「ロクサーヌと離れたくなくて」
「リア!!」
ロクサーヌは涙を浮かべて抱き付いてきた。
「任せて!アーサーの口を割らせるから!」
こうして得た情報を元に ある人を呼び寄せた。
「ルシィ様ぁ~!」
「マリー王女!?」
フリルをたっぷり使ったオレンジ色のドレスを身に纏った黒髪に赤紫色の瞳の女性がルシアンに抱き付いた。
陛下「許嫁がいたとは」
王妃「オリヴィアの気持ちを弄ぶなんて」
ロ「素敵な王女様と婚姻なさればいかがでしょう」
ウィ「貴方の国も二人目は何年か男児が生まれなければ娶れないという縛りがあったはずです」
陛下「これでは三国間で戦争が起きかねない。先日の申し入れは聞かなかったことにしよう」
王妃「聞けば幼い頃からのお付き合いだとか。マリー王女はルシアン王太子殿下のことをお慕いしていると昨夜たっぷり聞かせていただきましたわ」
ウィ「馴れ初めも王妃同士の約束も聞きましたよ」
ロ「オリヴィアをそんなお二人の邪魔者にしようなどとお人が悪いですわ」
ル「チッ 。 アーサーが喋ったのだな?ロクサーヌを使ったのだろう。ロクサーヌを先にアーサーから離すべきだったよ」
私「ロクサーヌに手を出したら私が許しません」
ルシアンは内腿に目線を向けたオリヴィアを避けるようにマリー王女の後ろに隠れた。
ロ「やっぱりお似合いですわ」
ロクサーヌはあの後、“オリヴィアがオロールに嫁ぐなら私もオロールで暮らす!”と言いながらアーサーの膝の上に乗って抱き付いた。
ロクサーヌを溺愛するアーサーは、日頃甘えてもらえないので免疫がない。そして婚姻してもオロール王国で暮らすと言うロクサーヌに危機感を覚えた。
本当に暮らしかねない。
アーサーは口を割った。
マリー王女はオロール王国の隣の小国の王族だが、王妃同士が親友だった。互いの王城も近いため時折行き来していた。そして、
“マリーがオロールに嫁いでくれたら安心なのだけど”
“じゃあウィリアムのお嫁さんになればいいわ”
など話していた。
国王は反対で、政略結婚としては旨味がないし、妃とするには難しいのではと幼い頃から判断をされていた。
マリーは良く言えば無邪気で純粋。悪く言えば空気の読めない馬鹿。愛妾ならいいが、いずれ王妃にするのは問題だ。だけど王妃達は交流を続け、マリーは“将来はウィリアムの妻になるのよ”と聞かされていた。
ウィリアムは大きくなるにつれてマリーを娶ることは国の負債になりかねないと判断した。
そして父王と相談した結果、好きな人ができたから その女性と婚姻するという作戦を決行することにした。
今までどの令嬢を候補にしても王妃が反対してきた。だから婚約が未だにいない。
ウィリアムとマリーが婚約できないでいるのは国王が反対しているから。王妃はいつかマリーを異性と意識して恋に落ちると思っていて、“ウィリアムが好きになったならいいわよね”と主張して最近もマリーとウィリアムを会わせていたのだ。
ウィリアムは親戚のいる国に行くと行って国を出てヘインズ公爵夫人を頼った。
だが、王太子としての自分に寄ってくる女と恋をする気にはなれず身分を隠した。そうなると王族につけるような護衛は付けられない。
男爵家ではあるが、同じルシアンという令息がいるので成りすまして妃探しをしていた。
そこに、既に妃教育を終えたオリヴィアを紹介されて交流するうちに好きになったらしい。
王妃の主張を逆手に取って、オリヴィアと恋に落ちたと連れ帰り婚姻するつもりだった。
マ「ルシィ様ぁ。観光に連れて行ってくださいませんか」
ル「止めろ、離れろ!」
王妃「ここまで来てくださる許嫁になんて冷たいのかしら」
ロ「もう十何年も待たせているらしいですわ」
王妃「王女もルシアン王太子殿下と同い年なら、もう(責任をとらないと)ねぇ」
陛下「そもそも国王同士が話し合えば終わる話であろう」
ウィ「嫌なら本人と本人の母親にはっきりと告げれはいいのですよ」
マ「よく分かりませんが、私達の後押しをしてくださっているのですね。嬉しいですわ」
陛下「あまり国を空けては良くない。観光をしながら帰国されよ」
王妃「お土産の品を選びますわね」
ウィ「オリヴィア、ロクサーヌ。私達は下がろうか」
ロ「どうぞお幸せに」
私「帰路もお気を付けくださいませ」
ル「オリヴィア、本当に駄目なのか」
私「他人を巻き込まずに解決なさいませ。ご自分のお気持ちをしっかりと告げるだけではありませんか。曖昧にしたせいでマリー王女殿下を待たせてしまっているではありませんか」
ル「母達が全く引き下がらないんだ」
私「そこに連れて行かれる身にもなってください。
それに、次期国王になるための小さな試練の様なものではありませんか。自国に戻り話し合ってください。失礼いたします」
こうしてルシアン騒動は終止符を打った。
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