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罪悪感

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ロクサーヌが持ってきてくれた招待状はだいぶ落ち着いてきたので領地に3週間滞在した。

いろいろと教わることが多かったし、タウンハウスで起きていたことを話したりして過ごした。
叔父様から国への提出書類を預かり王都へ戻った。

不在中 ロクサーヌが“いつ頃帰ってきそうなの”と探りを入れに来たのだとか。
領地からちゃんと手紙を出していたのに。

可愛いロクサーヌとレオナルドに帰邸の連絡を入れると2人同時に屋敷にやってきた。

「何でレオナルドが来るのよ」

「お前こそ遠慮しろよ」

「2人とも揉めないで。はい、お土産」

ロクサーヌにはボステーヌで作られた織物を渡した。
レオナルドには手編みのブレスレットを手首に付けた。

「嬉しい!ボステーヌの織物は手触りと光沢が違うのよね」

「良かった」

「これ、なんだ?」

「おまじないよ」

「おまじない?」

「祈りを込めて編んで渡すの。家族だったり恋人だったり友人にね。これは殿下が人の気持ちを考えられるようになりますなようにって祈りながら編んだわ。一本に一つしか願掛けできないの。他にもたくさんあったけど、全部願掛けして編んだら物凄い数を巻き付けなきゃいけなくなるから一つに絞るのに何日も悩んだの。
男の人は足首に付ける人が多いわ」

「ずるい!私もオリヴィアの編んだブレスレットが欲しい!」

「だってロクサーヌは直して欲しいところが無いし、素敵な婚約者がいるし、家族仲もいいし健康でお金持ちだから願うことがないもの」

「え~」

「殿下、一応手首に付けましたけど、帰ったら外してください」

「何で」

「殿下が付けるような物じゃありませんから」

「……編み方を教えてくれないか」

「私も!」

「いいですけど、時間かかりますよ」

「構わない」

2人は一生懸命編んで日が暮れる頃には完成した。

「疲れたぁ~」

「身体中が凝った。帰ってマッサージ受ける」

レオナルドとロクサーヌは帰っていった。


翌日ルシアンから先触れがあったが断った。今日もあいつが来るからだ。

「何故今日もいらしたのですか」

「明日のドレスを届けに来たんだよ」

「本気だったのですか」

「冗談で言うか」

箱を開けてメイドが取り出すと素敵なドレスだった。

「綺麗」

「王妃殿下と選んだからな」

「…でもよく間にあいましたね」

「誘う前から注文していたからな」

「え?」

「あとコレ」

私の手首を取り、昨日とは別の手編みブレスレットをつけてくれた。

「あれからまた編んだのですか!?」

「徹夜だよ」

「何をなさっているのですか」

「コレ」

そうじゃなくて…
手編みのブレスレットには飾り用の穴を開けた小さな真珠も一緒に編み込まれていた。

「なんか急に豪華になりましたね」

「いいだろう。ちゃんとお前の幸せを願って編んだぞ」

「…ありがとうございます」

「じゃあ、肩を揉んでくれ」

「はい?」

「すっごく肩が凝った」

「はいはい」

背後に回り、肩を揉んだが硬い。

「手に負えないかもしれません。戻ったらお城のプロに揉んでもらってください」

少し揉んだけど疲れてきた。

「ドレス、必ず着ろよ」

「王妃殿下が絡んでおられるなら着ます」

「絡んでいなくても着ろよ」

「私達は婚約解消したのですから いただく理由がございません」

「13年も無駄にさせたのだから別にいいだろう。詫びだ。私の2年間の予算の中から 今後13年分のオリヴィアへの償い費の枠を作らせた」

「慰謝料をいただきましたので結構です」

「本当に悪かったと思っているんだ。
その分 幸せになって欲しい」

「……」

「困らせるつもりはない。“当然でしょう”とでも言って堂々と受け取ってくれ」

「かしこまりました」

「もっと気楽に話してくれよ」

「王子殿下ですし、歳上でもありますから」

「せめて名前で呼んでくれ。殿下じゃなくて」

「…レオナルド様」

「明日は堂々としていろ。責められるべきは私でオリヴィアじゃない」

「“当然でしょう”」

「ハハッ」




次の日のパーティは建国750年を祝うものだった。普通なら婚約解消した王子とパートナーとして出席したら驚かれるはずだが、何回かパーティなどで(偶然)会って話したりダンスをしているところを見られているため大した反応は無い。

そう言えば新しい婚約者の選定が無さそうだけど。
レオナルドが探している“リア”が国内の貴族名簿に載っていない以上、レオナルドを無視して選定を始めてもいいはずなのに。

「レオナルド様。婚約者の選定は始まらないのですか?」

「1年待ってもらった。それで駄目ならどんな条件の家門でも文句を言わずに婿になるし王族籍からも抜けると誓った。
今から王子妃教育をして数年で合格できる独身で跡継ぎの令嬢が残っていない。だから王子妃教育無しとなる。つまり公務は無理だから仕方ない。

今フリーの幼い令嬢と婚約しても男児が産まれたら解消になってしまう。その可能性があるのに王子妃教育なんてさせるのは可哀想だしな。
オリヴィアのときは夫人が離縁していたということと、侯爵が後妻も妾も迎えないと宣言していたので早々に婚約したんだ」

「それでもいいのですか」

「彼女との再会は奇跡に近いような気がしてきたが、好きになってしまったから仕方ない。もう少し足掻くよ」

レオナルドと関わってしまったせいか罪悪感が湧いてきた。

「そんな顔をするな。自分で選んだ事だから後悔は無い」

「……」

レオナルドの袖から私が編んだブレスレットが見えた。







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