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親友との馴れ初め

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朝、ベッドに忍び込み手を握るロクサーヌは、ルシアンに気持ちを寄せるのは意味のないことだと言うと 理由を知りたがった。

「必ず別れが来る人とどうこうなろうなんて気にはならないわ」

「男爵家なら別の人が継げばいいじゃない」

「それ言っちゃダメよ。軽視したことになるからね。
勘だけど、本当に男爵家だとしても特殊な家系かもしれない。それに最近ゲーレン男爵家なんて新たにできていないから他国の人よ。ちょっと発音に西側の特徴が出る時があるし。

気持ちのない交流をするには有益な何かが必要だし、好きになったら辛い思いをするじゃない。
それに向こうは興味なんて持っていないわ。

もし素敵な人だというなら婚約者か妻がいるはずよ」

「お義母様にきいてこようか」

「止めて。本当にその気はないし誤解もして欲しくないから」

「分かったわ」



朝食に呼ばれて一階の食堂へ行くと、ヘインズ公爵夫妻と公子、ルシアンがいた。

ロクサーヌは公子の隣、私はルシアンの隣の席に案内され席についた。

夫人「オリヴィアちゃんは今日の予定は?」

私「ボステーヌ邸に行って様子を確認しようと思っています。フィゼット家にかれこれ1ヶ月もお世話になっていますので早く自立しようと思います」

ロ「ずっと居てよ」

私「屋敷があるし、使用人を整えて貰っているのに戻らないなんて選択肢はないわ」

夫人「みんなで行ってきたら?」

私「それはちょっと」

夫人「どうして?」

私「どの程度になっているかも分かりませんし、おもてなしもできません」

公「だからこそ行くんだ。変更をかけるなら早い方がいい。アーサー、しっかり見てきなさい」

ア「はい、父上」

私「そんな、ご迷惑になります」

夫人「最初から何もかも出来るわけないでしょう」

私「……よろしくお願いします」



ヘインズ公爵と夫人の思惑が全く分からない。
フィゼット公爵夫妻が言い出すならともかく…それにどうもルシアンを近付けようとしている気がする。
こんなことにルシアンまで寄越すなんて。

ルシアンを含めた私達4人はボステーヌ侯爵邸の前に来た。
私にとっては辛く忌まわしい屋敷という認識で、誰かに気を遣いながら入りたくなかった。

扉が開いて中から人が出てきた。

「アルベールと申します。家令候補として滞在しております」

「ニコルと申します。メイド長候補として滞在しております」

「「よろしくお願いいたします」」

「オリヴィアと申します。よろしくお願いします」

「ヘインズ公爵夫人より、連絡をいただいております。どうぞお確かめください」


……すっごい変わってる。
別のお屋敷に来たみたい。

ロ「もうここまで内装が変わると別のお屋敷ね」

私「今ちょうどそう思っていたわ」

ア「初めて入るから分からないな」

一階から二階まで見て回ったが全く違う屋敷に生まれ変わっている。

私「ねえ、ロクサーヌ。ここまで改装されていると費やした金額が心配なんですけど」

家具まで変わっているし、私の温度のなさそうな飾り気の無い部屋はお姫様の部屋みたいになっていた。

ロ「お母様がやったことだから気にしなくていいわよ」

私「そうはいかないわ」

食堂、居間、応接間、私の部屋や夫婦の部屋など主人一家が使いそうな部屋は置物や絵画なども全く違う。
調理場や食器庫に行けば見覚えの無い高そうな物がズラリと並んでいた。
浴室や洗面室なども変わっている。

二「お嬢様、前侯爵の私物は売れる物は売って後は処分しております。
前夫人の物はいかがいたしましょう」

私「同じようにしてもらっていいかしら。いい思い出が無いの。ボステーヌで買った物は全部置いて行ったから、いい額になると思うわ」

二「肖像画は外しておりますがどういたしましょうか」

私「私のも含めて全部廃棄して欲しいの。私は描いてもらった記憶はないけど全部お願いね」

二「かしこまりました」

私「人員はどのような感じかしら」

二「お嬢様お一人ということで多い人数ではありませんが揃っております。少人数でしたら来客も応対できます」

私「私が戻っても大丈夫?」

二「心よりお待ち申し上げております」

私「ありがとう。フィゼット邸に戻ったら夫人と相談して決めるわね。早くて明日なんてこともあるかもしれないけど先触れは出すし、急なら食事も簡単でいいの。食は細めだから安心して」

二「お任せください」

私「これなら気持ちを新たに生活できそう」

ロ「私の部屋も作って」

私「公子に恨まれるからダメ」

ロ「まあ、一緒のベッドで寝るからいいわ」

こ、公子を見るのが怖い。

ル「すごく仲がいいんですね」

ロ「子供の頃、郊外のあるお屋敷でお茶会が開かれたときに誘拐されかかったの。犯人は、見た目のいい令嬢を連れ去ろうと企んでいただけで 最初から私を狙っていたわけではなかったの。そして私が庭園の奥へ行ったことでチャンスが巡ってきた犯人は口を塞いで連れ去ろうとしたの。

リアが通りかかって犯人の足にしがみついて内腿に噛み付いてくれたの。
余程痛かったのね。犯人は叫んで私を放したわ。
その声で警備が駆け付けて未遂で済んだわけ。

でもリアは可愛い凶暴な小狼のように噛み付いて離さないから、犯人が髪を掴んだり殴ったりしたの。引っ掻き傷と内出血を負って髪も少し抜けてしまったの。

勇ましいリアのおかげで今こうしていられるわ。捕まった犯人は子供に酷いことをする金持ちに売ろうとしていたと聞いたの」

ア「知らなかった」

ル「確かに勇ましいな」

父に殴られていたから、あれくらいなんとも無いとは言い出しにくくて愛想笑いをした。

ロ「で、リアに助けてもらってから付き合いなの」
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