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ペルペナ
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後宮は取り壊しが決定した。
急いで残りの荷物を出して、まだ家具が揃いきっていない皇妃の部屋に移った。
皇妃同士の部屋の間に使用人部屋などを挟むが、隣といってもいい並びに、モアナ皇妃とシャンティ皇妃の部屋が続く。
解毒剤は飲んだが、効き目が出てから飲んだので療養が必要だった。
モアナ様とシャンティ様からは泣きながら叱られた。
“どうして私達が居ないと知ったときに退室しなかったのですか!”
“そんなに私達の居ない席が良かったのですか!”
迂闊さに怒っていたはずなのに、避けられているという話になり、ひどい!傷付いた!と泣き出したのだ。ペルペナに助けを求める合図を送るが知らんぷり。ペルペナ式お仕置きらしい。
皇帝陛下は時間ができれば様子を見に来てくださる。
こんな扱いを受けて、心を許してから飽きられたり他の女性を慕って捨てられたら立ち直れそうにない。
だから正気を維持できるよう気をつけているつもりだ。
後宮を解体したってまた建てることもできるし、沢山部屋がある本宮殿に住まわせれば済む。
「そろそろ普通の生活に戻しても構わないでしょう」
チラッとペルペナに視線を送る。
「ユピルピア様はまだ目眩があり、トラウマの真っ最中です。少しずつゆっくり日常生活に戻していきます」
「そうでしたか。命を狙われて大変な苦痛を強いられましたから、それも当然でしょう。
ペルペナ様の応急処置と煮出し薬のお陰ですね」
あのような食事会に参加するときは、念のため、毒を盛られたときに使う胃洗浄液と 胃や腸の止血や粘膜の再生を促す薬を煮出して用意している。
もちろん、皇帝が全員を朝食に呼んだときも。
「そうか…死にかけたのだからな。
ギリグス、引き継ぎユピルピアの面倒を見てくれ」
「しっかりとお守りいたします」
後宮の一警備兵だったギリグスは、毒を盛られた私を運んで、持ち上げて撹拌した兵士。
皇妃の専属護衛に大昇格した。
愛想が無くて不器用だが、真面目で、咄嗟の事態にメイド兼侍女でしかないペルペナの指示に従った彼をペルペナが気に入っている。
「ところでペルペナ。会わせたい者がいる。会ってくれないか」
「私はユピルピア様から離れません」
「其方の家族に会わせたい」
「私は捨て子です」
「ちょっと違う。ペルペナが彼の娘だとしたら、誘拐されて行方知れずだった。彼は職を辞して娘を探した。だが犯人を見つけたが売ったと言われ、その後の足取りが途絶えてしまった。
未だに人を雇って探し続けている。だが帝国内と隣接した国だけで、まさか一番離れたプロプル王国にいたとは。多分、彼の執念を恐れて君という証拠を隠滅しようと遠くに捨てたのだろう」
「何故私だと思われたのですか?」
「よく似ているんだ。特に、ユピルピアが毒を盛られた後、剣を握ったペルペナは若き元騎士団長にそっくりだった。気迫もそっくりで眉の釣り上がり方まで似ていた。
彼は娘を溺愛していた。跡継ぎの息子より可愛かったのだろうな。
残念ながら夫人は、娘が誘拐されて見つからず、売られたと聞いて心を病み、現実の世界から逃げてしまった。乳児に見立てた人形を包んで片時も離さず抱いている。29年も経った今も抱いているんだ。会ってやってくれないか」
「私はユピルピア様のお側を離れません」
「ペルペナ、私もお会いしたいわ」
「……かしこまりました」
2日後、皇族の応接間にペルペナの両親を連れてきたと連絡がはいり、療養中を装っている私を車椅子に乗せて、ペルペナは応接間に向かった。
何故かギリグスの白目が充血していた。
入室すると、皇帝の正面に座っていた大柄の男性が立ち上がった。
振り向き、ペルペナを見ると破顔一笑した。
「エリザベス!!」
エリザベス!? もっと凛々しい名前だと思っていた。まるっきりお嬢様じゃない!
ペルペナとそっくりの大柄なおじ様は、ペルペナの脇に手を通して持ち上げるとくるくると回った。
ギリグスは嗚咽しながら車椅子を後退させて、遠心力に振り回されるペルペナの足から私を守った。
ギリグスの赤い目は、既に泣いていたのね。
私はこういう心優しい人と結婚したかったわ。
「卿、下ろしてやってくれ。酔って戻してしまうぞ」
「す、すまない」
下ろされたペルペナはふらついた。
「彼は元騎士団長 レイダー・ルノウ卿。子息が大人になると、エリザベス嬢を探すことに集中したいと爵位を継がせ、若き侯爵を支えた。
こちらの夫人がエリザベスの母 シシリー・ルノウ夫人。
こちらの車椅子の女性がプロプル王国出身の王女で、俺の第一皇妃ユピルピアだ。
そして彼女はペルペナ。ユピルピアの近侍でメイドも務めている。
ユピルピアが施設で虐められていたペルペナを引き取った。それ以来ずっと一緒にいるそうだ」
皇帝が両者を紹介すると、ルノウ卿は私の前に跪いた。
「皇女様にご挨拶を申し上げます。娘を救ってくださりルノウ家一同心より感謝を申し上げます」
「そっくり過ぎて疑いようはありませんが、偶然、もしくは他の血縁者の娘という可能性もあります。ペルペナがエリザベス嬢だという証拠はありますか?」
「エリザベスには、左足の小指と薬指の間に二つの小さな黒子があります。
右耳の後ろには稲妻のような痣があります」
「「!!」」
私もペルペナも驚いた。どちらもペルペナの体にあるからだ。
「ペルペナ、夫人の前で見せてやって欲しい」
ペルペナは乳児に見立てた人形を抱いたルノウ夫人の前で足の指の間のホクロを見せた。
「……」
夫人は目を見開き、ペルペナを見上げた。
次に耳の裏の稲妻の形の痣を見せた。
「エリザベス?」
「そうだ……エリザベスだ」
「でも、エリザベスは赤ちゃんよ?」
「君がエリザベスを産み、直ぐに誘拐されてから29年経っているんだ。赤ちゃんのままではいられないよ」
「29年前?」
「そうだ。見つけ出すのにこんなにかかって悪かった、シシリー」
「本当に?本当に私のエリザベスなの!?」
「そうだ。私と君の最愛の娘エリザベスだよ」
夫人は人形を置いてペルペナを抱きしめた。
「許して…許して…エリザベス…ほんの少し目を離したら消えていたの。1分よ、あなたのおしゃぶりを交換しようと、メイドに渡して次のおしゃぶりを選んでいる間に、メイドに扮した誰かに連れ去られたの。私のせいよ。全部私のせい」
「シシリーのせいではない。全ては私の責任だ。エリザベス、申し訳なかった」
「ユピルピア様に拾っていただくまで辛い日々でしたが、ユピルピア様と出会ってからはずっと幸せです」
「ペルペナ…いえ、エリザベス嬢ね。
ご両親と庭園のお散歩に行ってきたら?
私はギリグスに部屋に連れていってもらって休むから。そのまま水入らずで食事でもして。ルノウ家に戻ることも考えないと」
「私は、」
「ダメ。今は答えを出すときではないわ。
皇帝陛下、ルノウ卿、ルノウ夫人。私は失礼いたします」
ペルペナを残して部屋に戻った。
急いで残りの荷物を出して、まだ家具が揃いきっていない皇妃の部屋に移った。
皇妃同士の部屋の間に使用人部屋などを挟むが、隣といってもいい並びに、モアナ皇妃とシャンティ皇妃の部屋が続く。
解毒剤は飲んだが、効き目が出てから飲んだので療養が必要だった。
モアナ様とシャンティ様からは泣きながら叱られた。
“どうして私達が居ないと知ったときに退室しなかったのですか!”
“そんなに私達の居ない席が良かったのですか!”
迂闊さに怒っていたはずなのに、避けられているという話になり、ひどい!傷付いた!と泣き出したのだ。ペルペナに助けを求める合図を送るが知らんぷり。ペルペナ式お仕置きらしい。
皇帝陛下は時間ができれば様子を見に来てくださる。
こんな扱いを受けて、心を許してから飽きられたり他の女性を慕って捨てられたら立ち直れそうにない。
だから正気を維持できるよう気をつけているつもりだ。
後宮を解体したってまた建てることもできるし、沢山部屋がある本宮殿に住まわせれば済む。
「そろそろ普通の生活に戻しても構わないでしょう」
チラッとペルペナに視線を送る。
「ユピルピア様はまだ目眩があり、トラウマの真っ最中です。少しずつゆっくり日常生活に戻していきます」
「そうでしたか。命を狙われて大変な苦痛を強いられましたから、それも当然でしょう。
ペルペナ様の応急処置と煮出し薬のお陰ですね」
あのような食事会に参加するときは、念のため、毒を盛られたときに使う胃洗浄液と 胃や腸の止血や粘膜の再生を促す薬を煮出して用意している。
もちろん、皇帝が全員を朝食に呼んだときも。
「そうか…死にかけたのだからな。
ギリグス、引き継ぎユピルピアの面倒を見てくれ」
「しっかりとお守りいたします」
後宮の一警備兵だったギリグスは、毒を盛られた私を運んで、持ち上げて撹拌した兵士。
皇妃の専属護衛に大昇格した。
愛想が無くて不器用だが、真面目で、咄嗟の事態にメイド兼侍女でしかないペルペナの指示に従った彼をペルペナが気に入っている。
「ところでペルペナ。会わせたい者がいる。会ってくれないか」
「私はユピルピア様から離れません」
「其方の家族に会わせたい」
「私は捨て子です」
「ちょっと違う。ペルペナが彼の娘だとしたら、誘拐されて行方知れずだった。彼は職を辞して娘を探した。だが犯人を見つけたが売ったと言われ、その後の足取りが途絶えてしまった。
未だに人を雇って探し続けている。だが帝国内と隣接した国だけで、まさか一番離れたプロプル王国にいたとは。多分、彼の執念を恐れて君という証拠を隠滅しようと遠くに捨てたのだろう」
「何故私だと思われたのですか?」
「よく似ているんだ。特に、ユピルピアが毒を盛られた後、剣を握ったペルペナは若き元騎士団長にそっくりだった。気迫もそっくりで眉の釣り上がり方まで似ていた。
彼は娘を溺愛していた。跡継ぎの息子より可愛かったのだろうな。
残念ながら夫人は、娘が誘拐されて見つからず、売られたと聞いて心を病み、現実の世界から逃げてしまった。乳児に見立てた人形を包んで片時も離さず抱いている。29年も経った今も抱いているんだ。会ってやってくれないか」
「私はユピルピア様のお側を離れません」
「ペルペナ、私もお会いしたいわ」
「……かしこまりました」
2日後、皇族の応接間にペルペナの両親を連れてきたと連絡がはいり、療養中を装っている私を車椅子に乗せて、ペルペナは応接間に向かった。
何故かギリグスの白目が充血していた。
入室すると、皇帝の正面に座っていた大柄の男性が立ち上がった。
振り向き、ペルペナを見ると破顔一笑した。
「エリザベス!!」
エリザベス!? もっと凛々しい名前だと思っていた。まるっきりお嬢様じゃない!
ペルペナとそっくりの大柄なおじ様は、ペルペナの脇に手を通して持ち上げるとくるくると回った。
ギリグスは嗚咽しながら車椅子を後退させて、遠心力に振り回されるペルペナの足から私を守った。
ギリグスの赤い目は、既に泣いていたのね。
私はこういう心優しい人と結婚したかったわ。
「卿、下ろしてやってくれ。酔って戻してしまうぞ」
「す、すまない」
下ろされたペルペナはふらついた。
「彼は元騎士団長 レイダー・ルノウ卿。子息が大人になると、エリザベス嬢を探すことに集中したいと爵位を継がせ、若き侯爵を支えた。
こちらの夫人がエリザベスの母 シシリー・ルノウ夫人。
こちらの車椅子の女性がプロプル王国出身の王女で、俺の第一皇妃ユピルピアだ。
そして彼女はペルペナ。ユピルピアの近侍でメイドも務めている。
ユピルピアが施設で虐められていたペルペナを引き取った。それ以来ずっと一緒にいるそうだ」
皇帝が両者を紹介すると、ルノウ卿は私の前に跪いた。
「皇女様にご挨拶を申し上げます。娘を救ってくださりルノウ家一同心より感謝を申し上げます」
「そっくり過ぎて疑いようはありませんが、偶然、もしくは他の血縁者の娘という可能性もあります。ペルペナがエリザベス嬢だという証拠はありますか?」
「エリザベスには、左足の小指と薬指の間に二つの小さな黒子があります。
右耳の後ろには稲妻のような痣があります」
「「!!」」
私もペルペナも驚いた。どちらもペルペナの体にあるからだ。
「ペルペナ、夫人の前で見せてやって欲しい」
ペルペナは乳児に見立てた人形を抱いたルノウ夫人の前で足の指の間のホクロを見せた。
「……」
夫人は目を見開き、ペルペナを見上げた。
次に耳の裏の稲妻の形の痣を見せた。
「エリザベス?」
「そうだ……エリザベスだ」
「でも、エリザベスは赤ちゃんよ?」
「君がエリザベスを産み、直ぐに誘拐されてから29年経っているんだ。赤ちゃんのままではいられないよ」
「29年前?」
「そうだ。見つけ出すのにこんなにかかって悪かった、シシリー」
「本当に?本当に私のエリザベスなの!?」
「そうだ。私と君の最愛の娘エリザベスだよ」
夫人は人形を置いてペルペナを抱きしめた。
「許して…許して…エリザベス…ほんの少し目を離したら消えていたの。1分よ、あなたのおしゃぶりを交換しようと、メイドに渡して次のおしゃぶりを選んでいる間に、メイドに扮した誰かに連れ去られたの。私のせいよ。全部私のせい」
「シシリーのせいではない。全ては私の責任だ。エリザベス、申し訳なかった」
「ユピルピア様に拾っていただくまで辛い日々でしたが、ユピルピア様と出会ってからはずっと幸せです」
「ペルペナ…いえ、エリザベス嬢ね。
ご両親と庭園のお散歩に行ってきたら?
私はギリグスに部屋に連れていってもらって休むから。そのまま水入らずで食事でもして。ルノウ家に戻ることも考えないと」
「私は、」
「ダメ。今は答えを出すときではないわ。
皇帝陛下、ルノウ卿、ルノウ夫人。私は失礼いたします」
ペルペナを残して部屋に戻った。
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