【完結】婚約破棄された令嬢は、嫌われ後妻を満喫する

ユユ

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改革の主

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【 クリストファーの視点 】

「あれ、見てください。みんな同じ物を付けています」

補佐のパトリックが指をした。

魚の形をしたブローチのようなものに名前が刻まれていた。

「名札か?領民だけのようだな」

「あっちに掲示板みたいなものがありますよ」

「というより地図か?」

近寄って見てみると、漁港の町全体の見取り図になっていて、番号がふってあり、わきに番号と店の名前とマークが付いていた。

「あ、なるほど。①漁港商会 と書いてあります。図の中の①を見ると確かに漁港商会の事務所がある場所です。これはいい。
横のマーク、フォークのマークは食事ができる店ですね、お茶を出す店はティーカップマーク、飲み屋はジョッキのマーク、お菓子の店はクッキーのマーク、ケーキを扱っているところはケーキのマーク、魚を売っているところは魚のマーク。現在地は▲なのですね。素晴らしい。
マークの隣の数字は、営業時間ですよ」

「漁港商会の事務所へ行こう」

町を見ながら事務所を目指した。

「旦那様、あれ、すごい並んでますね」

「貝の串焼きだな」

近寄ると、以前は塩焼きだけだったのに、塩、バター、ガーリックバジルと3種類あって、無料で粉唐辛子、有料で粉チーズがかけられるようになっていた。

並んで買ってみた。

「美味い!バター焼きにレモンを絞ってくれたからさっぱりします」

「このガーリックバジル、すごいぞ。しかもトマトが良い役割をしている」

「美味い!」

「チーズをかけるとまた違うな。どれも美味い」

「どこまでかけるかも指定できたら一本でいろいろ楽しめますよ。トッピング無し、粉チーズ、粉唐辛子の3色にできますからね」

食べ終えて 串入れに捨てたとき、子供が露店主に話しかけた。

「メイおばさん、スタンプちょうだい」

「貸してごらん」

露店主が渡された紙にスタンプをおした。

「また来ておくれ」

「すごく美味しかった。また食べたい!友達に宣伝するね!」

子供はまた別の店に向かっていった。

露店主の名札にはメイと書いてあった。
名前が分かるだけでコミュニケーションが取りやすいな。



漁港商会の事務所に到着し、中に入ると私を見た者が商会長を呼んだ。

「お待ちしておりました」

「話を聞かせてくれるか」

「どうぞこちらへ」

応接間に通されるとコーヒーと菓子が出てきた。
うさぎ型のクッキーと、星型のタルトだった。

コーヒーは不味くて好きじゃない。だが一口くらい飲むか。

「領主様、コーヒーに蜂蜜を少し入れてみてください」

言われた通りにして飲んだ。

「…何なんだ。今までのコーヒーは絞りカスで淹れていたのか」

濃くて深みのある味と香り、そこに蜂蜜がわずかに香る。苦いものと甘いものが調和している。

「焼き菓子もどうぞ」

「クッキーを食べた」

「これは…」

「3種のナッツとドライベリーを細かくして練り込んでいます。砂糖控えめでなかなか良いと思いませんか」

「美味い」

「うさぎ型は子供や女性向けのクッキーに使っています。他にもクマ型リス型などいろいろあります。
今回 中身は大人向けのクッキーにしました。領主様に説明をするためです。
味も工夫していますが動物型にするだけで、子供や女性が買ってくれるのです。
タルトもどうぞ」

「美味い」

「レモンクリームチーズのタルトです。下の生地には塩味が少したけ感じられるように調整しております。
もう一つの白い方をお召し上がりください」

「!!美味いが菓子ではないのだな」

「パイ生地を敷いて、その上にグラタンなるものを乗せて焼きました。食事に出てきても 酒のつまみに出てきても ティータイムに出てきても活躍できます。具は鶏肉でも野菜でも魚介類でもいいのです。さらにチーズを乗せて焼くとまた美味しいのですよ」

「どれもコーヒーにも合うな」

「コーヒーは炒り方も淹れ方も間違えておりました。本来はコレが正解らしいのです」

「子供がスタンプを貰っていたが、アレはなんだ?」

「スタンプラリーと言って、10歳以下の子供だけ参加できます。本人か保護者がその店で食べるとスタンプを押してもらえて、実施している全店集めると土産用の菓子と交換できるのです。それが夫人にも評判なのです」

そう言って商会長は美しい細工のガラス瓶をテーブルの上に置いた。丸めの香水瓶のような感じで、大きさはオレンジ程。その中には何種類かの飴が入っていた。

「レモン味、オレンジ味、チェリー味、アップル味、ミント味の内の3種類を入れます。季節次第ではストロベリー味なども加えられます。そしてこちらも」

少し小さく横に広がった瓶をテーブルに置いた。

「こちらの飴はコーヒー味、茶葉味、蜂蜜味です。
こんなに多彩な味の飴が楽しめて、食べ終わった後は、空き瓶に別の店で買ってきた飴を入れてもよし、小物入れにしてもよし、浅い方はアクセサリー入れにもできますし、砂糖入れにすることもできます。
しかもこの飴、非売品なんです。すごい贅沢だと思いませんか?飴だけでも確実に売れるのにですよ?家から離れられない町民が自宅で飴を作っているんです。一人一味作っています。だから工房を借りることなく済みますし、外に働きに出られない領民の収入になっているのです。
瓶目的のお客様もいるのですよ」

「この港町は何をきっかけに変わったんだ?」

「夫人ですよ?」

「え?」

商会長は、何をいっているのだと言いたげな顔をした。






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