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お呼ばれしました

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豪華な待合室に恐れ慄く私に、ロバートが手を握る。

「まだ駄目?」

「何もかも 内臓が出ちゃいそうです」

「王族に会うのは初めてじゃないだろう」

「個人的にはありません。私など景色の一部です」

「困ったな」

騎士服を着たロバートが抱きしめて背中を摩ってくれた。


「ロバート。イチャつきに来たのか?」

「いえ。私の婚約者が怖がっていたので落ち着かせているところです。何故 王太子殿下が?」

「見学だよ。君の仮婚約者が来ると聞いたからね」

「ピノール卿」

「陛下」

すぐに陛下も入室なさった。

ロ「彼女がビビアン・ガデュエットで、私の婚約者です」

殿「仮」

陛「此度は災難であったな。ガデュエット嬢」

私「国王陛下、王太子殿下にご挨拶を申し上げます」

陛「座ってくれ。

話を始める前に、これは口外してはならない話だと肝に命じて欲しい。
守れなければ伝えた相手や君自身が処分されてしまうぞ」

殿「この世からね」

私「!!」

陛「いいかな?」

私「はい。口外いたしません」

陛「ピノール卿は暗示をかける能力を持つ特別な存在だ。

在学中にスカウトし、訓練し、環境を整えて来た。

彼の顔が良かったから、女性に色仕掛けで情報を聞き出す役割を与えていた。

接触し 暗示をかけ 情報を聞き出し終えると、質問されたことを忘れさせて男女の関係を持ったことにさせている」

私「え? 触っていましたが…」

殿「ククッ」

ロ「触れられた感触と暗示が合わさって、男女の関係を持ったと信じ込ませることができるんだ。
唇に口付けもしないし、抱くこともないんだよ」

私「……え?」

殿「つまり、ロバートは他の女性と寝ていない。
彼女達は思い込まされているだけなんだ」

私「は?」

殿「喜ぶところだと思ったんだけどな…」

私「私と交流しませんでしたよね」

ロ「関係を持ったと思い込んだ女性達がビビアンを標的にしないために距離を取った。

子爵夫人を狙う者が少ないように、ピノール家との婚姻は融資が必要だと噂を流した」

私「……」

ロ「ビビアン?」

私「私、毎日学園の礼拝室で祈ったんです。
貴方との縁談がなくなりますように、貴方が誰かを孕ませますように、せめて白い結婚にしてくださいって!

毎日毎日!

聖地巡礼にも行こうとしていたんですよ!」

ロ「だからそんなところに行きたがったのか」

殿「ハハハハハッ」

陛「この契約はガデュエット嬢と婚姻するまでとなっているのだが、まだ婚約していないようだな」

ロ「ビビアン、婚約してくれるよね」

私「今は出さずに済んだ内臓が煮え繰り返っていて お答えできません」

殿「ロバート。長く勤めてくれ」

ロ「嫌です。ビビアンと結婚したいんです!」

私「もしかして、エリンのあの盛大な自白は…」

ロ「俺の暗示だ」

私「……」

陛「そういうことだから、ピノール卿は潔白だ」

ロ「陛下、何故“多分” なんですか」

陛「卿の全てを見ているわけではないからな」

私「……」

ロ「ビビアン、そんな目で見ないでくれ。
本当に手を付けてないから」

私「……」

ロ「10年に一度 蟻ジュースを飲むから」

陛「アリジュース?」

殿「まさか、アリって…虫の蟻!?」

私「ちょっと!ロバート様!」


ロバートが蟻ジュースの説明をした。

陛「ハハッ そうだった。私が“蟻ジュースは10年に一度”と決めたんだった」

殿「私も蟻ジュースのお代わりは止められたよ…クッ」

陛下も殿下も揶揄って!!

ロバートが変なことを言い出したせいよ!
横でニマニマしてる場合じゃないわよ!

私「王太子殿下。ロバート様は30歳になるまでは今のお仕事を続けるそうです」

ロ「ビビアン!?」

殿「そうかそうか。ではロバートの30歳の誕生日に式を挙げさせよう。
いい教会を押さえておいてあげるよ」

ロ「ビビアン、6年近くあるんだよ!?」

私「カーネラ嬢とのあのシーンを忘れるには そのくらいかかると思います。

結婚式、荒れそうですから、領地で身内だけで済ませます」

ロ「ビビアン…」

殿「いいじゃないか。結婚してくれるって言っているんだから」

ロ「破棄させないから。
今度嫌がったら暗示をかけるからな」

私「あ、乱用していいんですか? 陛下」

陛「規定違反だな」

殿「頑張って口説きなよ」



解放されて屋敷に戻ると、ロバートが両親に正式な婚約の返事をもらったと言ったので、お父様は大喜びで子爵家に書類を送る準備をしだした。


その後、私の部屋でロバートがキスをした。
拙いキスにちょっとニヤついてしまった。

本当に他の人とキスをしていなかったみたい。

「ビビアンと結婚したいのは、俺がビビアンを好きだからだ」

「よく分かりません」

「結婚したら蜘蛛を退治してあげるよ」

「約束ですよ」

「寝てたら起こしてくれれば退治するよ」

「すぐ起こします」









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