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魂だけでも聖地に
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公爵領から帰るとエリンの様子が少し変わっていた。
「楽しかったですか?お姉様」
「ええ。楽しかったわ」
「それは良かったですね」
どういう風の吹き回しだろう。
お母様に聞いてみた。
「パーティにお呼ばれするようになったからかしら」
「ひとりで出席しているのですか?」
「そうよ」
「問題を起こさずにいてくれるといいですね」
「そうね」
ついに秋のデビュータントの日がやって来た。
「ご無沙汰しております、ガデュエット伯爵、夫人」
「今日はよろしく頼むよ」
「はい」
ガデュエット邸に来て挨拶をしているのはロバート・ピノールだ。
「ビビアン」
「こんばんは」
「……」
「……」
王城の兵舎に住んでいるのだから現地集合でいいじゃないの。
そういえば珍しくエリンが邪魔しに来ないわね。
教育の成果が出たのかしら。
馬車に乗ろうとすると手を差し伸べてきた。
「?」
「……」
そうか。お父様達の前だからね。
「ありがとうございます」
仕方なく手を借りた。
美しい青い瞳の整った顔に最初はお人形の様だと思った。…今も思わなくもないがそれだけ。
この人が相手にしている女性達のような気持ちには全くならない。寧ろ拒否感しかない。
この尻軽騎士との婚姻をどうしても成し遂げたいと 両家の当主が揺るがないことを知って、黙ってはいるが破棄や妾の存在を熱望している。
もう後1年と数ヶ月しかない。
「お忙しいようですが長期遠征とかはないのですか」
お願い!10年くらい帰って来ないと言って!
「無いな」
やっぱり聖地巡礼に行けば良かった。
「はぁ」
「ビビアン。溜息なんて吐かないの」
「申し訳ございません」
「何の溜息だ」
まさかロバートに婚姻しないまま10年遠征に行って欲しかったとは言えない。
「聖地に行ってみたいなと思っただけですわ、お父様」
「新婚旅行に行きたいのね」
「そうかそうか」
お母様 お父様、違いますから!!
「すぐに1人で行きたいのです」
「駄目だ」
は? 何でロバートが言うのよ。
「ふ~」
「そんなに行きたいなら俺が連れて行く」
「あ、大丈夫です。学園の礼拝室にします。
ロバート様はお忙しい方ですからお気遣い無く」
トチ狂ったようね。
いくらお父様達の前だからって。
今夜はとにかく早く離れないと。
会場に着くと令嬢達の目線が突き刺さる。
保護者として付き添われたお姉様方は特に鋭い。
誰かとっとと奪って行ってください。
お祝いも差し上げますから!
「ビビアン」
「はい?」
腕を差し出された。
1人で歩けるんですけど。
「エスコートだ」
知ってるわよ!
仕方なく手を添えた。
国王陛下の挨拶が終わりダンスの時間になった。
ステップを踏みながら私の魂は聖地へ向かう。
「ビビアン」
神様、そろそろ王都に降臨してください。
「ビビアン」
「! はい」
「ダンス中は意識を相手から外すな」
「はい?」
「ちゃんと俺の方を見ろ」
脳裏に焼き付いて魘されそうなんですけど。
「……」
「最近 レオナード・ダークロックと交流があるそうだな」
怖っ。何で知ってるの!?
「友人の仮婚約者というだけですわ」
「だとしてもあまり会うな。勘違いされるぞ」
「どういう意味ですか」
「第二夫人を狙っていると思われる」
「思わせればいいじゃないですか」
「はあ?」
「私達の間にそんな事実はありません。
私とコーネリア様とレオナード様が分かっていれば十分ですわ」
「名前呼びか」
「どうしてしまわれたのですか?」
「……」
疲れと嫌な私の相手をする精神的苦痛でおかしくなっちゃったのね。
「今日はお付き合いいただきありがとうございます。お疲れのようですのでダンスが終わりましたらどうぞご自由に」
帰ってもいいし 他の女性の元に行ってもいいと言ったつもりだったのに。
「楽しかったですか?お姉様」
「ええ。楽しかったわ」
「それは良かったですね」
どういう風の吹き回しだろう。
お母様に聞いてみた。
「パーティにお呼ばれするようになったからかしら」
「ひとりで出席しているのですか?」
「そうよ」
「問題を起こさずにいてくれるといいですね」
「そうね」
ついに秋のデビュータントの日がやって来た。
「ご無沙汰しております、ガデュエット伯爵、夫人」
「今日はよろしく頼むよ」
「はい」
ガデュエット邸に来て挨拶をしているのはロバート・ピノールだ。
「ビビアン」
「こんばんは」
「……」
「……」
王城の兵舎に住んでいるのだから現地集合でいいじゃないの。
そういえば珍しくエリンが邪魔しに来ないわね。
教育の成果が出たのかしら。
馬車に乗ろうとすると手を差し伸べてきた。
「?」
「……」
そうか。お父様達の前だからね。
「ありがとうございます」
仕方なく手を借りた。
美しい青い瞳の整った顔に最初はお人形の様だと思った。…今も思わなくもないがそれだけ。
この人が相手にしている女性達のような気持ちには全くならない。寧ろ拒否感しかない。
この尻軽騎士との婚姻をどうしても成し遂げたいと 両家の当主が揺るがないことを知って、黙ってはいるが破棄や妾の存在を熱望している。
もう後1年と数ヶ月しかない。
「お忙しいようですが長期遠征とかはないのですか」
お願い!10年くらい帰って来ないと言って!
「無いな」
やっぱり聖地巡礼に行けば良かった。
「はぁ」
「ビビアン。溜息なんて吐かないの」
「申し訳ございません」
「何の溜息だ」
まさかロバートに婚姻しないまま10年遠征に行って欲しかったとは言えない。
「聖地に行ってみたいなと思っただけですわ、お父様」
「新婚旅行に行きたいのね」
「そうかそうか」
お母様 お父様、違いますから!!
「すぐに1人で行きたいのです」
「駄目だ」
は? 何でロバートが言うのよ。
「ふ~」
「そんなに行きたいなら俺が連れて行く」
「あ、大丈夫です。学園の礼拝室にします。
ロバート様はお忙しい方ですからお気遣い無く」
トチ狂ったようね。
いくらお父様達の前だからって。
今夜はとにかく早く離れないと。
会場に着くと令嬢達の目線が突き刺さる。
保護者として付き添われたお姉様方は特に鋭い。
誰かとっとと奪って行ってください。
お祝いも差し上げますから!
「ビビアン」
「はい?」
腕を差し出された。
1人で歩けるんですけど。
「エスコートだ」
知ってるわよ!
仕方なく手を添えた。
国王陛下の挨拶が終わりダンスの時間になった。
ステップを踏みながら私の魂は聖地へ向かう。
「ビビアン」
神様、そろそろ王都に降臨してください。
「ビビアン」
「! はい」
「ダンス中は意識を相手から外すな」
「はい?」
「ちゃんと俺の方を見ろ」
脳裏に焼き付いて魘されそうなんですけど。
「……」
「最近 レオナード・ダークロックと交流があるそうだな」
怖っ。何で知ってるの!?
「友人の仮婚約者というだけですわ」
「だとしてもあまり会うな。勘違いされるぞ」
「どういう意味ですか」
「第二夫人を狙っていると思われる」
「思わせればいいじゃないですか」
「はあ?」
「私達の間にそんな事実はありません。
私とコーネリア様とレオナード様が分かっていれば十分ですわ」
「名前呼びか」
「どうしてしまわれたのですか?」
「……」
疲れと嫌な私の相手をする精神的苦痛でおかしくなっちゃったのね。
「今日はお付き合いいただきありがとうございます。お疲れのようですのでダンスが終わりましたらどうぞご自由に」
帰ってもいいし 他の女性の元に行ってもいいと言ったつもりだったのに。
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