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王都ダンジョンクリア!

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    いつもの町でのお買い物。そろそろ蜂蜜が売られ出してもいいと思うんだけど、店に出る様子はない。
(まだみんな、15階層まで行けてないのかな?)
(売られるとしても、最初は貴族相手じゃないか?欲しいなら、我が採ってくるが)

(ううん。気になっただけだから。いい加減、16階層に続く階段も見つけたいし、私も行くよ)
(ボクは魔力の登録をしていなかったから、最初からになると思うの)
    そっか。なら尚更ちゃんと服を揃えないとね。

    フレイムは見かけ人族と変わりない。だから加工なしで服をそのまま着られる。
「冒険者登録もするのか?」
「それは武器が決まってからでもいいと思うんだけど?」
「でも、とりあえず名前だけでも登録しておきたいの。ボクはFランクからだから、薬草だけでも収めておきたいの」

    別に得意武器は書かなくても登録は出来るもんね。
「ええと…リーダーはメイさんでよろしかったんですよね?…そろそろパーティー名を付けて貰えるとギルドとしても助かるのですが」
    みんな、一斉に私の方を見る。

    やっぱり私なんだね…知らないよ?変な名前になっても。
「次までに考えてきて下さい。今回はこの薬草だけで宜しいですか?」
「お願いします」

「そういえば、痛い名前を名乗っているパーティーもいるよね?」
    中二的な意味で。
「痛い?」
「あ、気にしないで」
 
    とりあえず必要な物は揃ったので、文字を書く練習用にいい物はないかと道具屋を覗く。
「えっ…コーンスターチって、糊の代わりに使われてるんだ」
    まあ、プラがないから当然なのか…ご飯も糊になるけど、この辺では栽培されてないしね。

    検索…なるほど。ゼラチン代わりにも使えそうだ。
    片栗粉はポテ芋から作ったけど、ゼラチンがあればもっと手軽に色々なお菓子が作れる。
「えへへ…」
「主…道具屋で売られている物を食すのか?」

「ん?そのまま食べるなんて言ってないじゃん?」
「メイの目は、美味しい物を見つけた時の目と一緒にゃ…」
「まあ、そこは私を信じてよ。食べられない物は出さないから」
「う…うむ」
    トウモロコシは…残ってなかったかも。次植えよう。

「あとは何か、欲しい物ある?」
    特にはないみたいだ。強いて言えばゴムかな…下着もズボンも紐で縛るのが一般的だけど、ゴムの方が便利だし、伸びてきた髪も縛りたい。

    検索…一応あるんだ。一般庶民は使わないけど、グリーフロッグっていう魔物の皮が伸縮性があって、装飾品等に利用されている…検索。魔素が濃い所にある沼地にいるのか…なら深淵の森にいてもおかしくないよね?
「アロカシア、グリーフロッグって知ってる?」
「ふむ…深淵の森にもいたな。食べたいのか?」
    えええ…フロッグって事はカエルだよね?カエル肉はちょっと…

「ううん、必要なのは皮」
「なら、見つけたら採ってきてやる。肉も旨いと聞くが」
「それは、食べたくないかな」
    確か鶏肉に近い味だって聞いたけど、美味しい肉は他にも沢山あるし、無理に食べる必要はないよね。

「魔法で倒せるのかな?私も倒すよ」
「いや、毒もあるし…むしろ刃物では表面が滑っているから、魔法で倒した方がいいな」
「なら、私も。欲しいのは私だし」
「…いや、我が行こう。潰されても何だし」
    潰…っ?でっかいカエルなのか…ちょっと嫌かも。
「まあ…急ぎじゃないし、ゆっくりでいいよ?」

    次の日は、王都ダンジョンの16階層を目指す。
    たこパだけでは食べきれなかったけど、他にも色々使えるし。
    
    だけど、中にいたのは巨大なイカだった。日によって違うのかもしれない。
    イカは吐く墨が粘度があり、滑るから厄介だ。
    やはり再生能力有りで、下足狙いで沢山切り取る。
    鑑定ではビッククラーケンと出た。海にいるなら、いつかは戦ってみたいな。下足だけじゃなくて、イカステーキも食べたいし。

    影からメタルを出して戦ってもらったけど、みんなに負けない動きをしてた。でも刃物はやっぱり必要だね。格闘技では下足を取れない。

    下足を充分に確保して、ホーリーでとどめを差す。
    おや。宝箱が出た。中身は槍だ。絶対槍が入る大きさじゃないけど、するすると出てきた。

    鑑定    氷雪槍    突いた所が氷る魔槍。雪と氷を出す事が出来る

    何か凄いの出た。もしフレイムが槍を使うなら、あげよう。
    
「階段があるが、どうする?」
「勿論、降りるよ」
    
    17階層も、ボス部屋みたいだ。という事は、2連戦はしなきゃならない。
    そして魔物は…映画で見た、竜巻に飛ばされてくる鮫に似ている。
    不思議だよね…どうして鮫だけ飛ばされるのか…なんて考えてる暇はない!

    あの映画みたいに狂暴で、凶悪な鮫だ。
    予見のスキルを意識して使い、狙われた人には注意を促す。
    だけど、予見を使いながらの魔法は難しい。
    様子見していたヤブランが、竜の姿に戻る。
    仲間になってくれた時よりも少し大きくなっている。
    ブレスで牽制し、尻尾で叩く攻撃も威力が凄い。
    シュガーの落とした剣が、鮫に噛み砕かれた。

    私は支援に徹する。じゃないと本気で命が危険だ。
    それでも、かなりのダメージは蓄積されている。
    ほんの少しの間でも、動きを止められたら…

    時間停止。それに合わせて竜の爪が深々と切り裂く。
「やった?」
    フラグじゃないよ。ちゃんとやられた。

    出現した宝箱には、マジックバッグが入っていた。
    ううん…大きさは一畳分位?模造品の勇者の巾着よりも大きいな。そして時間遅延の付与もされているけど、これ位なら私にも作れる。売却でいいかな。
(主、下る階段がある)
    もういいって気持ちもある。竜に戻っているヤブランは、軽い興奮状態にあるみたいで、行く気満々だ。

「…なら、三人で行こう。ランスとシュガーは影に入れる」
(無論だ。主だけなら何があっても守れるし、メタルに実戦の経験を積ませるいい機会だ)
    シュガーは喜んで入ってきた。ランスは躊躇ったが、力不足を実感したのだろう。

    いのちだいじに、の作戦には外れるけど、なんとなく行ける気がした。

    階段の途中にセィフティエリアがあり、魔法石がある。
    という事は、ボス三連戦にはならないという事だ。
    時間停止の魔法は、かなりの魔力を使った。トレントの実から作ったマジックポーションを飲み、ヤブランにも渡した。

(魔力、気力共に充実している。主、行こう!)
    うーん。まあいいか。
「でも、次で最後だからね?」
    強い魔物との連戦はきつい。

    扉が閉まる。やっぱりボス部屋か。
    魔物は…超大型の蟹?!
(よし、メタルよ、勝負だ!)
    えええ…張り合っていたの?

(鋏や足を先に砕いて!)
    鑑定の結果、再生能力はない。だけど攻撃力は凄まじい。蟹の吐く泡が弾けると爆発が起きる。メタルやヤブランの鱗に傷をつける事は出来ないけど、私はさすがに死ぬかも。
    
    今の私はヤブランの竜鱗結界に守られている。そこから支援魔法をかけたり、隙を見て泡のブレスを範囲結界で潰したり、魔法で応戦している。
    脚や鋏が身体から離れたら、ロングハンドを使って即収納庫に回収だ。

    というか、さっきの鮫より実力的に弱くない?
    いやいや。巨大な蟹脚というご褒美があるからだろう。

    ついには脚と鋏全てを失くした哀れな蟹が残った。それでも泡ブレスを吐いてくるのは凄いけど。

    頭を狙ったホーリーは、動けない蟹には容易に当たる。
    農園の海岸付近にいる蟹とは違う、恐ろしい蟹だった…でもこの脚1本でも、いくらヤブランのお腹がブラックホールとはいえお腹いっぱいになるだろう。

    ここが最終階層みたいだし、帰ってこの蟹脚をどう料理しようかな…えへへ。
(主?宝箱はいいのか?)

    うわ…蟹の魅力の前には宝箱も負けるんだ。
「はは…気が付かなかった。中身は何かな?」

    中身は気配遮断のマント。隠蔽の効果は付与できるけど、遮断は私にはまだ無理だ。
    試しに着けてみると、ヤブランでさえも驚いていた。
(パスがなければ我でも主を見失いそうだ)
「相当強力なんだね…これは売らないで有効活用しようね」
(うむ…それがいいだろう。それよりも主は強い魔物を目の前にしても冷静だな)
「そう?ヤブランの結界を信用していたからだよ」

    いや…きっと食欲に負けたのだろうな。主がスマホから持ち帰るカニとやらに形はそっくりだし、きっとこれも旨いのだろう…食欲で危険を見失うのはまずいな。

    それでなくても大切な存在だ。守り切る自信があったとしても、連れてくるべきではなかったか?

    嬉しそうにニマニマと笑う主は、強大な力を持っているとは思えないほど小さくて、簡単に壊れてしまいそうに見える。
    
    メタルという主にとって役立つ存在が現れたから、嫉妬しているのかもしれない。だが単なる承認欲求で無理を言うのは従魔として間違っている…気をつけねば。
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