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パーティー名はもふもふ

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     ダンジョンから出て、マジックバッグを売って驚いた。
    金貨100枚?!私が鑑定スキルを持っていると知っていても、ただ言ってるだけかもよ?
    あ、嘘をつくと分かる真偽官の方がいたのですね…。

    元の世界で一千万円…ちょっと震えてしまった。Aランク冒険者なら、一度の依頼でこれ位手にする事もあると言って笑われてしまったけど、こんな大金、前世でも手にした事はなかった。

「それよりも凄いのは、あのダンジョンをクリアしてしまった事だ。しかもさぞや名の通った冒険者かと思いきや、DランクとFランクの冒険者達だなんて…そういやパーティー名は?」
    え、か、考えてなかった…
「ええと…もふもふ、とか」
「…。確かに、ランス殿とシュガーは、もふもふしているな?」

(メイ…それはちょっと)
(だってランスもみんなも私に任せるみたいな感じだったじゃん?全然考えてなかったよ…)
「それでいいのか?」
    ランスとヤブランの顔色を伺っている。

「リーダーが決めたなら問題ない」
「リーダーって…こんな小さい子にやらせるか?」
「それに関しては、私の我が儘なので」
    ギルドの人は呆れてるけど、みんなは従魔であり眷属だからね…いっその事、ヤブランに…いや、みんな嫌がるだろうな。

「もふもふでいいにゃ。メイはもふもふが大好きだから」
「まあ…こちらはどんな名前でも拒否は出来ないが」
    もう、何でもいいや。いい名前も浮かばないし。

「とりあえず、全員でクリアしたんだよな?」
「一番活躍してたのはヤブランだけど」
「ううん…フレイムは、登録したてか…彼も参加してたのか?」
「ううん、ボクは一緒にはいたけど、戦ってないよ?」
「…いや、ただいたなんて、あり得ないだろう。一応聞くが、メイも参加したのか?」
「魔法が得意なので」
「…そ、そうか」
    真偽官が頷いている。

    嘘を見抜くスキルを持つ人はそれなりにいるようだ。主に商業ギルドに。
「あのダンジョンは、クリアしたパーティーがとても少ないんだ。16階層までは何とか行けても、17階層で…」
    あの鮫は確かに強かった。私も、ヤブランやメタルがいてくれなかったら…
「とりあえず、皆1ランクアップだ。Bランクに上がるのには試験が必要だ。それと、メイは10歳になるまでは試験はお預けだ」

    Cランクの冒険者が数は一番多い。Bランクに上がるには、ギルドから出された依頼をこなし、護衛依頼もこなさなきゃならない。

    当然ながら子供には護衛依頼は受けられない。そりゃそうだよね。どんなに強かったとしても、子供に守ってもらうなんて不安だろうし、盗賊とはいえ、子供のうちから人を殺すかもしれない経験なんてしたくない。

    盗賊を殺すのは罪にはならないし、放っておくと傷つけられるのは、何の罪もない人達だ。
    私は…どうなんだろう?魔物も生き物なのに、殺すのに抵抗はなかった。
    弱肉強食の世界だから、肉を食べるのには当然、戦うしかない。前の世界だって、肉が初めからパックに入っていた訳じゃないんだよね…考えた事もなかったけど。

    相手が人でも、躊躇ったら大切な人を守れない。
    多分、大丈夫。

    鑑定も頼まれたから幾つかやって、亜空間に入った。

    蟹も楽しみだけど、ワイバーンの解体がやっと終わったから、そっちを先に調理する。
    まずは小さく切って、塩のみの味付けで焼いてみる。
「うわ…独特の風味と溢れる肉汁が凄い!美味しい!」

    このままでも充分美味しいけど、お肉の巨大な塊がこんなにあるんだから、色々な料理にしてみたいな。

    ステーキ、カツ、ローストワイバーン。
    味見だけでお腹いっぱいだ。勿論出荷箱にも入れるつもりで取り置いてある。
    こんなに作っても、一度で無くなりそうだ。

    うん…これはレモンをかけて、さっぱりと食べたいね。
    そうだ。タコのカルパッチョもあった方がいいかな。

    亜空間が繋がった気配がした。
「本当に行き来出来るのだな…羨ましい」
「眷属になったからなの…うわ、いい匂いだね!」
「離れてたみたいだけど、どこかに行ってたの?」
「深淵の森だよ。ヤブランに、色々教わっていたんだ。それと、槍の練習」

「主!フレイムのように我も眷属にしてくれ!」
「えええ…」

    ランスとシュガーも戻って来た。こっちは入り口を開いて固定してあるので、王都からの戻りだ。
「にゃ!海苔を買って来たにゃ…それと、これにゃ!」
「新しいブラシだね?」
「にゃーが長毛種になったから、元のブラシではメイ、ブラッシングやりにくいって言ってたにゃ?」
「そっか…いい物が見付かって良かったね」

「主…我の話はまだ終わっていない。聞けば、収納庫間の物の移動も出来るとか」
「ああ…うん。そうだね」
「それに、多分だけど、ボクが錬金術を扱えるようになったのは、メイのお陰だと思うんだ」
「そうかもね…能力も一部共有しているっぽいから」

「それは羨ましいにゃ!」
「でも…どうして眷属になったのか良く分からないんだよね」
「ボクは死にかけて…というより、殆ど死んでたと思う。メイの力で蘇ったんだと思う」

「駄目だよ?!そんな危険な方法!」
「確かに怖いにゃ…でもそんな風に特別になるなら…にゃーも」
「ふむ…だが他に方法がないのなら…」
「駄目!絶対駄目だよ!ちょっと待って…検索」
    魂の容量…全てを受け入れる…え?!

「駄目…ごめんなさい!フレイム」
「え?メイ、どうしたの?」
「だって…眷属は全てを共有するから。私が死んだらフレイムも死んじゃう!」
「そう…なの?でもボクはフェニックスだよ?」
「ええと…ごめん、でも普通の魔物は、死んじゃう…だからみんな、駄目だよ」

「にゃーはそれでもいいにゃ?元々メイに救われた命にゃ…それにメイが危ない時、それでメイが救われるなら」
「俺も。メイのいない生活になど今更戻れない」
「我の本体である金竜はどうなるのだ?我自身は構わないが」

「駄目だったら!…本当にもう一度良く考えて。エルドさんがどうなるかは分からないから、聞いてからの方がいいし、親みたいなものでしょ?ちゃんと相談しなきゃだめだよ」

    眷属は己の命を犠牲にしても主を生かそうとする…
    この太くなったパスを通して命を渡す…命を繰り返すフェニックスは、再生の能力で甦るかもしれない。でも他のみんなは…
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