上 下
332 / 344

332話

しおりを挟む
メイド長が部屋から出て約10分ほど。

本当は顔を合わせること自体が嫌なんですが、そうも言ってられませんわ。

だって、私が門に向かっている最中だというのに、既に

「さっさと屋敷の中に入れろ!俺を誰だと思っているんだ!」

という怒鳴り声が聞こえているんですもの。

ここから見ても門番の2人が困っているのがわかりますわ。

はぁ......本当に迷惑ですわよね。

いくらここが領民たちの住宅街から離れているとはいえ、人通りがないわけではありませんわ。

それなのに領主の家の前で、しかもどこに居たのかわかりませんが、浮浪者のような格好をした人が騒いでいるなんて.......。

そう思いながら、門へと急ぎましたわ。

私が近付いているのに気が付かないのかいまだにギャーギャーと騒いでいる叔父様に

「一体何の用ですか?」

と冷たく声をかけると、門番の2人は明らかにホッとしたような顔をしていて、一方叔父様の方は

「そろそろ考えを改めたんじゃないかと思ってな」

どこからそのような自信が湧いてくるのかわかりませんが、ドヤ顔でそう言ってきましたわ。

しかも、考えを改めるって.....一体何を改める必要があるんでしょう?

そう思いながら、今にも門番を押しのけて中に入ってこようとする叔父様に

「改めるだなんて、随分と面白いことを言いますのね。私は何も間違ったことを言っていないのに」

わざと小馬鹿にするように鼻で笑ってそう言うと、流石の叔父様もキョトンとした間抜けな顔をしていますわね。

きっと私に言われたことが一瞬理解出来なかったんでしょう。

その証拠に、少し間を空けてから徐々に顔を赤くして

「そ、そうやって強がれるのも今のうちだけだぞ?陛下に話をして今すぐにでもこの家を乗っ取ってやってもいいんだ」

と言ってきましたもの。

ただ、陛下に話をして叔父様を当主に、と言うのであればどうにか手を打たないといけませんわ。

だって、仮にもこの家の血を引いていますし.....何より、成人している叔父様と私では出来ることも差が出てしまいますもの。

そう思った私は、どうにか叔父様を追い返そうと、言葉を選んでいると

「その件だが、父上がダレス殿に話をしたいと言っていてな。今すぐに王宮に来てもらってもいいか?」

と急に聞き覚えのある声が聞こえてきましたわ。

王宮、そして父上、ということは確認をしなくても誰の声なのかわかりますが......。

そう思いながら声のした方に視線を向けると、そこには私が思った通りカイン様が立っていて、腕を組みながら眉間に皺を寄せていますわ。

そんなカイン様に

「か、カイン様?いつから居ましたの?」

と声をかけると

「変なことをしないよう、見張らせていたんだ」

そう言って、見張らせていた兵士の方に視線を向けました。

まぁ、兵士とはいえバレないように変装をしているので、パッと見では王宮の兵士だ、とわかりませんけどね。

なんて思っていると、まさかカイン様が現れるなんて思ってもいなかったんでしょう。

「へ、陛下が俺に話だと?」

と警戒した様子で呟きましたが、何を思ったのか叔父様はニヤッと嫌な笑みを浮かべて

「ははっ!やはり陛下も俺に侯爵家を任せた方がいいと考えたんだな」

叫ぶようにそう言いましたわ。

もちろん、そんな話をする訳がない、というのはわかっていますが、ここまで自信満々に言われると、本当に陛下は叔父様を当主にするのでは?と勘違いしてしまいそうになりますわね。

まぁ、叔父様は仕事が出来ない、というのは陛下もわかっていることなので絶対にありえませんが.......。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。ありがとうございます。

黒田悠月
恋愛
結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。 とっても嬉しいです。ありがとうございます!

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~

榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」 そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね? まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?

7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。

なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。 7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。  溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!

婚約破棄って、貴方誰ですか?

やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。 何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。 「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」

処理中です...