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327話 アーリアside

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嫌な予感をしながらも、呼ばれたから仕方がない、と応接室に向かうとそこにはいかにも真面目そうで、気難しそうな50代くらいの男性が椅子に座っているのが見えたわ。

役人だ、というだけあって、ただ椅子に座っているだけなのになぜか威厳があって、何か意見を言ったら全て論破されてしまいそうな......そんな雰囲気を感じるわね。

こんな人とお母様が話を....と思ったらなんだかゾッとするわ。

そう思いながら、役人の様子を窺いつつ

「し、失礼します」

と正面の椅子に腰を掛けたとほぼ同時に、急いで着替えを終えたお母様がバンッと大きな音を立てて応接室の中に入ってきたわ。

正直、お母様が大きな音を立てて部屋に入ってくるのは毎回のことだから私は何も思わないけど、一応今日は来客がいる、ということでチラッと役人の方に視線を向けると、案の定眉をピクッと上げて怪訝そうな顔をしてお母様のことを見ていた。

そんな役人のことなんて自己中なお母様が気付くわけもなく

「それで?なんで役人なんてお偉い様がわざわざ来たのかしら?」

挨拶も無しにドカッと椅子に座ると嫌味を言うようにそう言った。

はぁ.......役人のひとも暇じゃないんだから家に来るのはどういうことなおんか、聞かなくてもいい話じゃないのはわかるはずなのに。

よくそんな態度がとれるわよね。

心の底からお母様に呆れながらも、私がここで諫めるとお母様が暴走するのはわかっているし、何も言わずにやり取りを見守ろうと決め、役人に視線を向けると

「税金がまだ支払われていないんですが」

大きくため息をつきながら、役人はお母様にそう言った。

税金って.......今までお父様がいくら支払っているのか、全く把握をしていないけど......てっきりお母様が支払っているものだと思っていたわ。

湯水のようにお金を使っているお母様を見ていた私からすると、大事な支払いをしていなかったことに驚きしかなかった。

もしかして、支払う分まで使っていたとか....そんなわけがないわよね?

そんなことをしたらどうなるのか、お母様でもわかっているはずだもの。

そう思いながらお母様を見ると、どうやら私の予想は当たっていたらしく、顔色を悪くさせながら

「はぁ!?そんなの私に言われても知らないわよ!」

役人に対してそう叫んだわ。

これは.......もしかしなくても、お母様が家のお金を使い込んでいるわね。

今までお父様に金銭関係を握られていたからこそ、上手く男性達に貢がせていたのにそれがなくなってしまってから、お母様の方が男性達にお金を払っていたもの。

はぁ......どうりで週一で買えた私のドレスもお父様が居なくなってから買えなかったわけよね。

思わずため息をつきながら俯いていたけど、そんな私たちを見ても

「そう言われましても、支払うのが義務ですので........」

淡々とした口調でそう言う役人に恐怖を感じたわ。

でも、悪いのは支払いをしなかったお母様だし、流石に謝罪をしてお金を払うわよね?

なんて思いながらやり取りを見ていたけど、私の考えが甘かった、とすぐに反省することになったわ。

役人がお母様に対して支払うよう促しているのに対して、お母様は

「なんでそんなもの払わないといけないのよ!私は何も聞いていないわ!」

と支払う気がさらさらないのは誰が見ても明らかだ。

こんなことになるならお父様と離婚しなければよかったのに.......。

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