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319話
しおりを挟むカイン様に冷たい視線を向けられているデール様はどうするのか。
私の知っているデール様だったらこの場から逃げ出すか、それか顔を真っ赤にして黙り込んで俯いてしまうかのどちらかなんですが......。
そう思いながらエリザベート様に腕を掴まれ、カイン様の肩越しにデール様の様子を窺っていると、案の定
「あ、え....えっと......」
と都合の悪そうな顔をして言葉を詰まらせているのが目に入ってきましたわ。
まぁ.....半年経っても人というのは簡単に変わらないですわよね。
その証拠に叔父様も何も変わっていませんでしたし。
そう思いながら心の中で小さくため息をついていると
「も、申し訳ありません。セリスティア....様」
小さな声ではありましたが、しっかりとデール様の口から謝罪の言葉が聞こえてきましたわ。
これには驚きと、一瞬何を言ったのか理解出来ずに
「え?」
と声を出してしまいましたが......今デール様は謝罪の言葉を言いましたわよね?
あのプライドの高いデール様が?
思わずデール様の顔を凝視すると、私の視線にデール様も気が付いたようで、今までではありえなかったですがしっかりと私の目を見て軽くではあるものの頭を下げましたわ。
流石のカイン様もデール様のこの対応と言いますか.....謝罪には驚いたみたいで
「そ、それで?セリスティア嬢に一体なんの用だ?何の用事もなく話しかけたわけではあるまい」
軽く言葉を詰まらせながらも、用件を聞こうとしていますわね。
私に用事があるから話しかけてきたので、デール様の対応は私がしないといけないはずなのに、そう考えることが出来ないくらいには動揺しているんでしょう。
そう思いながら、私も何をしに来たのか、は聞きたかったので、とりあえずカイン様とデール様の様子を窺っていると、デール様は大きく息を吐いた後に
「あの......セリスティア様と話をさせてくれませんか?」
眉を下げて不安そうな顔をしながらカイン様にそう言いましたわ。
すると、
「それは.......」
流石のカイン様もすぐに頷くことは出来ないんでしょう。
顎に手を当てて悩んでいますわね。
まぁ、私がいない間のデール様の行動は軽く耳にしていましたから気持ちはわかりますわ。
エリザベート様なんて私が先に了承しないように、と腕をギュッと掴んでいますし......。
ただ、このデール様の様子を見て、私に危害を加える、とか文句を言う、とかそんな感じではなさそうなんですのよね。
そう思った私はチラッとデール様の方を見ると、カイン様が悩んでいるのを見たデール様は
「も、もちろん2人きりでとは言いません。殿下やエリザベート様が一緒でもいいので、一度話をさせてください」
と言って、深々と頭を下げましたわ。
ここまでされて勝手に断わってしまうのも気が引ける、と思ったのか、悩んでいたカイン様は顎から手を離して
「セリスティア嬢、これは俺が決めることではないから聞くが、どうする?」
と聞いてきました。
正直、半年前の私だったらデール様に何を言われても断ったでしょう。
ですが、頭を下げるデール様を見て断るのも気が引ける、と思った私は
「わかりましたわ。ですが、2人きりではなくカイン様とエリザベート様も一緒に居てもらってもよろしいでしょうか?」
そう言って確認するようにエリザベート様とカイン様に視線を向けると、2人とも頷いてくれましたわ。
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