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311話
しおりを挟むさて、私も王族の家紋が入った馬車に乗る、という覚悟が出来たということで、カイン様、エリザベート様、そして私の順番で馬車に乗り込んだのは良いですが......よく考えると、この登校の時間だってカイン様達にとっては婚約者同士の時間なんですのよね。
そんな大事な時間に、本当に私がお邪魔をしてしまって良かったんでしょうか?
いくらカイン様達の方からお誘いをしてきたとはいえ、やはり断っておくべきだったような......。
そう思いながら、正面に座るカイン様とエリザベート様を交互に見ていると、カイン様は腰を下ろすなり
「急に迎えに来て悪かったな」
急にそう言うと、私に対して軽く頭を下げてきましたわ。
しかも、それに続いてエリザベート様の方も
「私からもごめんなさい」
シュンとした顔でそう言ってきたものですから、私は手を横にブンブンと振りながら頭を上げるようお願いした後に
「い、いえ!それは別に良いんですが.......いくら学園の貴族たちに絡まれるからといってもここまでする必要はないかと.......」
徐々に声が小さくなってしまったせいで、最後の方は蚊の鳴く声となってしまいましたが、なんとか私が思っていたことを伝えることが出来ましたわ。
すると、カイン様は私の言葉を聞いて、なんとも言えないような顔をしながら
「まぁ、それだけの理由じゃないんだけどな」
と言って一区切りすると、ふぅ.....と小さく息を吐いてこう言いましたわ。
「何か悩んでいることがあるだろう」
昨日も陛下の前で言われましたが、
「やっぱり昨日のような陛下の前では言いにくいこともあるでしょう?もちろん解決をするために手を貸してほしい、ということならすぐにでも陛下に伝えますが、まずは私たちにだけでも相談してくれないか、と思いまして.....」
そう言ったエリザベート様は、昨日私が断った、というのもあるからなのか、凄く遠慮気味で私の顔色を窺いながら気を遣ってくれているのがわかりますわ。
しかも、昨日と少し違うのが、強制的に話をしないといけない、という雰囲気は一切感じられず、言いたくないのであれば言わなくてもいい、という2人の感情が伝わってきて、なんだか凄く気が楽に感じますわ。
やっぱり、いくら悩んでいることがあるとはいえ、人に強要されて言うのとは違いますのね。
そう思いながら、心配そうな顔をしているカイン様とエリザベート様に
「ありがとうございます」
とお礼を言いましたわ。
私も自分で抱え込みすぎなところがりますからね。
友人として、この2人に話を聞いてもらう、というのも良いのかもしれませんわ。
そう思ったところで、馬車の準備が出来たのかゆっくりと馬車が動き出しました。
きっと領民たちも、この家紋が入った馬車を目にして驚くでしょうし、今度視察の時に質問されたら正直に答えた方が良いでしょうね。
そんなことを思いながら、我が家の馬車の何倍も座り心地の良い椅子に自分の体を預けました。
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