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267話 レオンハルトside
しおりを挟む僕と夫人が牢屋に続く階段を降りると、きっと足音が聞こえていたんだろう。
牢屋の鉄格子をガシャンっと掴む音が地下室中に響き渡った。
さて……ユースティン様の家の従者、といえことは僕と顔見知りの可能性があるんだけど……出来ることなら新しく雇った執事とか、僕と関わりがない人だったら嬉しいよね。
やっぱり、いくら悪い事をしたとはいえ知人が牢屋の中にいる、という状況は複雑な気持ちになってしまうし。
そう思いながら、夫人の後ろに続いてゆっくりと牢屋に近付いた。
すると、
「れ、レオンハルト様!?なぜここに……」
という声が牢屋の中から聞こえてきたではないか。
僕に対して親しげに話しかけてきた、ということは……最悪なことに僕の希望は叶わなかった、ということか。
そう思った僕は、思わずため息をつきそうになってしまったけど、夫人の前だからグッと堪えて
「なぜって……婚約者の家に遊びに来ているのがそんなに驚くことですか?」
淡々と、冷静にそう声をかけた。
言ってしまった後に、少し意地の悪い言い方をしてしまった、とは思ったけど、牢屋の中に捕らえられている、ということは犯罪者だ。
しかも指示されていたとはいえ、僕の婚約者に危害を加えようとしたんだから優しくする理由もない。
ちょっとした罪悪感のようなものはあるけど、心の奥底にグッと押し込んで、今まで向けたことがないような冷たい視線を牢屋の中にいる執事に向けると、僕の態度で何かを察したんだろうね。
「い、いえ……そのような訳では……」
と顔色を悪くさせて下を向いてしまったよ。
まぁ、今までは僕に対して何も害がなかった、ということで仲良くするまでもいかないが、普通の態度でいただけだ。
自分からこのような態度をとられるようなことをした、と執事の方もわかっているだろう。
なんて思っていると、僕と執事の様子を黙って見ていた夫人が
「2人は顔見知り、という感じかしら?」
と少し複雑そうな顔をしながら質問をしてきた。
正直、素直に頷いてもいいものか、と一瞬悩んでしまった。
だって、セリスティア様を襲おうとした人と知り合いだ、なんて……今回の件に僕も関わっていると思われてしまう可能性があるし……いや、夫人だからそのような勘違いはしないと思っているけど……。
そう思いながらチラッと夫人に視線を向けると、僕に対して向けていた視線は疑いとか、警戒、というようなものではなく純粋に興味で聞いているのが伝わってきた。
だから、変に嘘をついた方が後に面倒なことになるだろう、と判断した僕は
「はい、ユースティン様のお屋敷で何度か顔を合わせたことがあります」
と素直に答えると、夫人は、なるほど……と呟いたかと思ったら、複雑そうに苦笑しながら
「……ということは本当に公爵家の従者ということね」
そう言った。
多分だけど、夫人としてはユースティン様の従者だ、と言っていたけど実は違う家の従者だった……というのを期待していたんだろうな。
それほど、普段のユースティン様からは考えられないような指示を出していた、ということなんだけど、過ぎてしまったものは仕方がない。
夫人の言葉に対して
「そういうことですね」
と短く返事をして、牢屋の中にいる執事たちをじっと見つめた。
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