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211話

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正直、断ってくれるだろう、とは思っていますわ。

ですが、もしかしたら何か思うところがあってこの令嬢と踊ってあげたい、と思う可能性だってあります。

ただ、レオンハルト様がこの令嬢とダンスを踊ってくるのであれば、止めはしませんがやっぱりショックは受けますわよね。

なんて思いながら、どう答えるのか、と一歩後ろに下がって様子を窺おうとすると

「すまないが、今日はパートナー以外と踊る気はないよ」

そう言ったレオンハルト様は、後ろに下がった私を自分の隣にしっかりと並ぶように前に出すと、私の顔を覗き込むように見てきましたわ。

まるで私に対して、安心して、とでも言っているかのような行動で思わずドキッとしてしまいましたわ。

ただ、当然ですが私とレオンハルト様の様子を見ていた令嬢は沢山いるので、少し離れたところから

「キャーっ」

という悲鳴といいますか、黄色い歓声のようなものが上がりましたわね。

まぁ、音楽の音が大きいので意識して聞いていないとわからないくらいの大きさですが......。

近くにいた人たちは一体何事なのか、と驚いているでしょう。

思わず苦笑してしまいましたが、そんな私たちを見た令嬢は何を思ったのか

「で、ですが、まだ踊っていないみたいですし、だったら私が先に......」

そう言いながらチラチラと私のことを見ながらレオンハルト様に縋りつくように近付いてこようと腕を伸ばしましたわ。

ですが、レオンハルト様はそんな令嬢の手をバッと手で払ったかと思ったら

「なぜ婚約者でもないのに優先されると思ったの?」

今まで見たこともないくらい冷たい目を令嬢に向けてそう言いましたの。

流石にこれには

「レオンハルト様、流石に言い方が強すぎますわ」

と言ってしまいましたわよ。

きっと令嬢も私と同じことを思ったはずですし、まさかそのような対応をされるなんて想像もしていなかったんでしょう。

驚いた顔をした後に、目に少しずつですが涙が溜まって言っているのがわかりますわ。

ですが、そんな令嬢を見ているにも関わらず

「そうかな?」

と首を傾げるレオンハルト様を見て私の方も驚いてしまいましたわよ。

な、なんだか普段のレオンハルト様と雰囲気が違うような気がしますし.......もしかして、これがレオンハルト様の本性とかですの?

そうだとしたら、私にもいずれは本性を出してくるとか......。

いや、きっと今のレオンハルト様は気分が優れないんですのよね。

なんて思いながらも、レオンハルト様の顔色を窺うように様子を窺っていると、レオンハルト様は必死に涙を堪えている令嬢に対して、まるで追い打ちをかけるかのように

「そもそも約束も何もしていないのに踊ってもらえるって思えるのが凄いよね」

冷たくそう言い放ちましたわ。

流石の令嬢も、ここまで言われてレオンハルト様と踊りたい、とは思わないらしく、目に涙を溜めたまま逃げる様にその場を後にしましたわね。

まぁ、当然だとは思いますが......。

私もここまで言われるとその場から逃げ出すと思いますし、最初の段階で逃げなかっただけ凄いですわ。

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