ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
24 / 52
ダンジョンは地下深く

もしくはアオハルか

しおりを挟む
 ナンテコトデショウ。
 我が配下の認識はこんなんなってました。


『マスターが旦那でアデル様が嫁」


 ちなみに全員この場には居ないので、ダンジョンの中を警備していたオーク達とドア前で警備していたゴブリン二名が参加です。

 それで良いのか認識。
 むしろ常識を覆すな認識。

 そしてアデル、その場でぷるぷる震えるな。「嫁でもいい…っ」って言うな。ルクレツィアがつんつん蜘蛛足をつついているから足場気をつけてよ?


「それ違うから。アデルとは結婚してないし、好きでもないし、ただの魔王で知り合いよ」


 うわ、アデル顔面蒼白になった。
 ちょ、ちょっと言い過ぎた?


「ただちょっと、アデルが親切にしてくれるからその、ええと」


 どう言えば良いのか戸惑っていたらアデルが辛そうな顔をして、


「レーベル、知り合いは嫌だ」

「え、ええと。ついこの間知り合ったばかりで」


 他になんと言えばいいの?ご近所さんとか?


「せめて恋人候補と」

「却下」

「無慈悲な…っ」


 あ、崩れ落ちた。


「ああでも、却下って言ったレーベルの冷たい瞳がまた、いい…っ!綺麗だった!氷山の中に居るような錯覚を覚える程に痺れた!其処がまた堪らない!なんて美しい!クールビューティー!やばい、益々惚れた!」


 落ち着け、変態。
 床に這い回って悶ているこの変態蜘蛛、取り敢えず外に蹴り出して良いよね?






「ぱぱ、哀れ。なむなむ、ちーん☆」

 ぽーんとダンジョンから蹴り出し(ダンジョン機能に丁度『対象放り出し』と言う機能が追加されていた。もしかして狙ってないか?狙って追加してないか?)、私のダンジョン内部にアデルを一時的に入れないよ様に追放。明日には入れるようにはしたけど、変態はちょっと…まぁアデル事態は嫌いじゃないんだけども。散々世話になったし、ねぇ。

 ただ見境なく告って来るのは勘弁して下さい。

 …正直ドン引きます。


「うー、うー、ますた、アルフォンソ、は、旦那、なる、にょ?」

「そうね、アルフォンソが許可してお互いがお互いを好きならそうなるのよ。勿論大人になってからね」

「ルクレツィア、まだ、子供」


 こてん、と小首を傾げるルクレツィア。
 そして遥か彼方の地上の方からガンガンとドアを叩いている音が聞こえてくる辺り、「ドアを壊す気!?明日になったら解除するから!」と怒鳴ったら、諦めたらしく大人しくなった。
 ちょっと悪い事したなとは思うけど、あんな恥ずかしい事を何度も言われてしまうと困ってしまう。絆されるとかは勘弁して欲しいんだよ、まだこの世界に来て数日なんだし。

 数日以上立ったら良いのかって問題では無いけどもね。


「そうね」

「うー。ルクレツィア、旦那のが、いい」

「それだとアルフォンソが旦那のが良いって言ったらどうするの?」

「あ、そか。アルフォンソ、大事。ルクレツィア、ワガママ、ごめんちょ、なの」

「ルクレツィアはアルフォンソの事が好きなの?」


 そう言うと真っ赤になってコックリと頷いた。

 え。
 わー…まじか。


「ルクレツィア、アルフォンソ見た、すぐ、ちゅきに、なた」


 ぽっと益々真っ赤になる頬。
 林檎のようで真っ赤で可愛い。


「アルフォンソ、は、わかって、ない。おも、う。キョトンと、して、た」

「そうなの」


 コクコクと二度頷くルクレツィア。
 可愛いなぁ、小さな恋の物語って感じでいじらしい。


「だから、恥骨、みて、ゆた」


 ぶふーーー!恥骨の悪夢再び!
 こういう所やっぱり異世界だったのねー!って感じがするわっ!


「アルフォンソ、駄目、いた。ルクレツィア、見て、ほしい、の、に」


 ぶわわわっと目頭に涙が浮かんで、って、え、えーーー!?


「うわぁああーーーんっ!」


 盛大に泣き出したルクレツィアに、私はどうしたら良いのかわからずオロオロするばかり。そうこうする内に獲物を抱えて帰宅したオーク達がワラワラ群がり、オークの女性達、ミンにジョカが泣き喚くルクレツィアを抱えて部屋を出ていった。


「大丈夫ですから、マスターは気になさらずに」


 って言われたけど、グズグズとグズっているルクレツィアはずっと泣いていて心配になる。
 その後すぐにオークの女性達がすっかり寝付いてしまったルクレツィアを抱えて来て、


「マスター、恋煩いですよ。こんなに小さいのに中身が成熟するのは早いですね」


 って言われて驚いてしまった。
 そして部屋の隅でずっと挙動不審だった『姫』の『騎士』のアルフォンソが、明らかに動揺して居て他のゴブリン達に小突かれて居た。

 あれ、イジメじゃなくって弄りだよね?つい心配気味に見ていたら、ゴブリン達が「すいません、姫を寝かせたいのですが」と告げてきたので慌てて部屋を増やす。
 取り敢えずでルクレツィアの部屋を一つ、それとゴブリン達の部屋をすぐ横に。
 ただし此方は共同部屋で。
 更にオーク達の部屋を男女別で二部屋。此方も男用と女用に作った。
 尚部屋の構造はやっぱり学校の教室並にしてみた。残念ながらベットとかはポイントが少ないので作れず、何時か二段ベッドとか起きたいなぁーと思いつつ、雑魚寝をして貰うことにした。

 ルクレツィアの部屋だけは一人部屋にしてみたけどね。
 何となくその方のが良いだろうって思って。





 * * *






「ルーレットぜんっぜん回せて無いし…」


 一旦部屋に配下のオーク達がアデルから貰った布を持ち寄り、部屋から出ていったので今更だが一人『魔王の間』にて一人思案する。
 そう言えばアデルに会ってドラゴンさんに会って、それから配下が増えてって気が付いたら一人になったのって最初の夜ぐらいじゃないかな。


「何か疲れたなぁ…」


 ルクレツィアは泣き疲れて眠ってしまったし、アルフォンソは「頭冷やしてきます」と言って先程『魔王の間』から出て行ってしまった。恐らくダンジョン内部を彷徨いて居るのだと思う。
 そう言えばそろそろ夕飯の支度をしなくてはいけないな、と一人台所予定の部屋に移動する。アイテムボックスから鍋やら水やらを取り出し、野菜らしき草等も取り出す。


「そう言えば草、結局何の草貰ったのか聞いてないや…」

 恐らく食べられるだろうと思うけどと一口齧る。


「う、苦い」

 もう一つ別の草を食べてみる。


「ん、んんん?」

 しょっぱい!?

「これは一体どう調理したら?」


 とか思い悩んでいたら、ピコーンという音声が聞こえてきた。

 なんだコレ?
 と思って手にしたままの先程のしょっぱい葉を見つめると、

【グリーンソルト】
 そのまま齧るとしょっぱい。食材に混ぜると塩の代わりになる。水に付けて置いて煮ると緑色の塩水が出来る。水分を飛ばすと塩が出来上がる。色は薄緑。

 ほぉぉー…
 そう言えば鑑定あったっけ、すっかり忘れていた。

 もう一つの最初に齧った苦い草を見てみると、

【ニガクサ】
 名前の通りそのまま齧るととても苦い。煮ると美味い出汁が出る。
 グリーンソルトと煮るととても美味い。

 ほうほう、これは!
 幾つかあるグリーンソルトとニガクサ、それに肉を鍋に入れて煮込んでみる。
 配下の人数が結構居るから多めに為るように鍋で作り、煮込んでいる最中じっくりとルーレット画面を見詰めてみる。
 ちなみに鍋からやたらといい香りがしてくるのでつい鍋に目線がいってしまうのはご愛嬌。


「ボタンみたいなのを押せば良いのかな?」


 ルーレットの画面左端に赤いスタートボタンがテカテカと光っている。
 よし、押すか。
 そう思っているとーー…


「ます、た、何処?」


 ルクレツィアの声が『魔王の間』から聞こえて来た。




「お腹すいた、の」


 オークのお姉さんに抱っこされて来た『姫』なルクレツィアはちょっぴりバツの悪い顔をして、それからペコリと頭を下げてきた。


「ますた、さっきはゴメン、なの。気持ち、えと、えーと」


 ううーんと悩みだしてコテンと頭を傾げるその姿は可愛いけど、やっぱり何処かあざとい。


「焦りすぎた、の」

「そうだね、ルクレツィアはちゃんと謝れて偉いね」

「ますた、た。ルクレツィア、えらい?」

「うん、偉い偉い」

「ますた、は、あやまれ、た?」

「…え」

「ますたー、ぱぱ、ますた、大好き、だよ。えっちぃ、けど」


 エッチなのは否定しないんだ。


「謝って居ないね」

「謝らない、の?」

「…難しいかな」

「う?」


 と言うか、謝る気も無いし。


「ん、んー…ぱぱ、気持ち、ルクレツィアと同じ、押し付け、すぎ?ぎ?」

「そうだね。私はそんな気なんてまだ起きて来ないんだよね」


 ふぅ、と思わず溜息が出る。
 この世界に来てから生活の糧とか諸々全然なのに、急に怒涛のようにお仕掛けて来られてもどう対応したら良いのか分からないし、何より『感性の違い』で困惑してしまうので正直迷惑気味なんだよねぇ…


「ん、んーぱぱ、ルクレツィア、注意、する。ますた、まま。でも、ちゃんと、言った方が、いい、よ?」

「だよねぇ」


 分かっているんだけどね、でも色んな事があり過ぎて気分はお腹一杯です。


「ますた、まま。ルクレツィア、アルフォンソ謝って、くる!」


 ダッと走っていったルクレツィアの後を心配したオークの女性、ミンが走って追い掛けていく。


「はー…青春か。もしくはアオハルか」

 どっちも同じなんだけど、呟いてしまうのは仕方がないと思います。

 そして、ルーレットをやっと回してみた結果に驚いた。



【スレイプニル】
 ってなんぞね!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...