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生れ落ちたたった一人のエルフ
最後のチャンスを与えてやるぅ!
しおりを挟む「うわ、100年…」
普通の人間なら既に死んでるぐらいの年月経ってるし、流石ドラゴンと大古の魔王って言う事?一見するとドラゴンと蜘蛛男で何だか妖怪大戦争みたいだけど。視覚的には蜘蛛男のアデルのがペチって潰されそうな感じなのがまたシュール。
実際はドラゴンさんのがアデルの第三の目の怪光線一つで吹っ飛ぶけども。
『酷いのじゃ…妾が、妾がこんなに慕って居るのに…』
空から大量な豪雨が降って来てるんですけど、その滴をひょいひょいとアデルは避けていたのだけど、途中から飽きたのか蜘蛛の糸をあっという間に編上げて大きなテントの様に製作し、その場に広げて濡れない様にしてくれた。
どうでも良いけど、万能だなぁ蜘蛛の糸。
唯一の欠点は色が白一色って事位かな。
更にそろそろ抱き着いてる腕離して良い?
いい加減腕が疲れて来てるし、もう大丈夫なんじゃない?
え、危機感無いって?
一頻り泣き止んだのか豪雨は止んだけど、それでも怨めがましい目で私とアデルを見詰めるドラゴンさん。うーん目が大き過ぎて怖い。軽く私の身長位あるよね、大きさが。
『アーデルベルトォォッ!最後のチャンスを与えてやるぅ!』
いやいやそんな涙目で叫んでも威力は減退してますよ?
とは言えドラゴンさんの大きさが大きさだから左程でも無い気がするけど。
アデルは柳に風って感じで威風堂々としているけどさ。
うん、私?
ドラゴンさんが叫ぶと全身総毛立つけどナニカ?
そしてアデルの腰に再度ビビって力入れて抱き着いてますがナニカ?
アデルの蜘蛛の糸でどの道外れないんだから恥はこの際かき捨てですがナニカ?
『妾の前でイチャイチャしおって~~っ!』
違うんです。
ドラゴンさんが叫ぶから、レベル1しかない私は簡単に吹き飛びそうだから仕方なく糸で縛られているだけです。悪いのは袖に振って居るこの蜘蛛男です。多分。
私は関係無い。私は無関係。寧ろお邪魔虫。
よし、黙ろう。
『ぐぅうう~おのれ!そこな小娘その場所を代われ』
…その大きさなら無理でしょ。流石にアデルもぺちっと潰れる。もしくはアデルがドラゴンの何処にあるか分からない腰の辺りに蜘蛛の糸に拘束され…
なんだろ、うっかり捕食されてる様にしか思えない。
主にアデルが捕食者でドラゴンさんが犠牲者と言う絵面で。
普通逆な気がするけども。
「あのなぁ、どう考えても無理だろお前のその大きさ(体積)じゃ」
『じゃ、じゃが!』
「お前が私に執着しているのが悪い。さっさと故郷に帰って同種と番になれ、その方がお前の身の為だアホドラゴン。迷惑なんだよ」
『じゃが!故郷に帰ったとて妾より強い雄は他に居らん!アーデルベルトだけなのじゃ、妾を倒したもうた立派な雄は!故郷の雄は皆妾より弱い!』
「私を雄とか言うな、迷惑。それにな、そもそもお前から喧嘩を吹っ掛けて来たんだろうが。支離滅裂な台詞付きで。『妾を倒したら妻になってやるー!』って。そんな無茶な話があるか。何度も拒否してるってのに、私の気持ちを少しは考えろ馬鹿トカゲ」
『ぐ、ぐぬぬぬ…』
あ~…押しかけ女房って奴か。
女房に為って居ないから押しかけ迷惑状態かな?
と言うか、あのドラゴンの大きささえ克服出来たらOKって事なんじゃないの?
「言っとくがな、もし仮にお前のサイズが小さくなっても無理だ。そもそも私はお前に100年も追い掛けられ、その度に蹴散らしてと何千回も繰り返して居て迷惑以外何とも思って居ない。それにな、長い事言わなかったが………
お前の恥骨、好みじゃない」
―――は?
ナニソレナニソレナニソレ?
って言うかまた価値観の違いー!?
この世界の魔物って言うか魔王って言うか、価値観わかんないわー!
『あ』
ん?
『アーデルベルトのばぁかああああああっ!エッチ!変態ー!ドスケベぇええ!浮気者ー!わぁああああああんっ!』
鼓膜が破れる程の大声で泣き喚きながら、巨大なドラゴンは去って行った。
…周囲に甚大な森林破壊の痕跡を残して。
つまり見渡す限り焼野原状態だ。
アデルのお陰で私には火傷所か怪我一つも無いのだけど。
「誰が浮気者か。私はレーベルブリュームヒェン一筋だ」
そう言う問題じゃないぞアデル。
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