上 下
85 / 138

83 気不味い

しおりを挟む

 気不味い。
 何が気不味いって、時折背後から視線が。
 喫茶ロインの朝食タイムで忙しい最中、始終嵯峨さんの視線を感じます。ハイ。

 その状態のまま、普段朝食を食いに俺の店に来ている常連さん達が何故かハラハラしながら見ている。ついでに先程来た京夏君のお連れさんである、Ωの可愛らしい容姿の男子君も。
 ちょっと困る。
 いいや、滅茶苦茶気不味い。

 嵯峨さん自身も不味いと思ったのか、先程感じた圧。今は何も感じない。その替わりに視線を滅茶苦茶感じます。

 そんな俺の状態を京夏君は明らかに面白そうにワクワクした顔付きで此方を見ているし、そんな状態の京夏君を落合君はうっとりした顔付きで見ている。あれ、絶対に京夏君を可愛いと思って見ているな。
 そうしてもう一人の有名人っぽいα男子は此方をスルー。Ω男子君を愛でるのに忙しい様だ。

 …こうして見ていると人にもよるけどαって、自分の交際相手と言うか番相手(一部違うが)のことしか眼中に無いみたいだな。
 という事は、だ。
 再度視線を感じ、忙しなく珈琲を淹れ調理をしている不破さんの方を見る。
 すると苦笑しつつ頷いた。


「小林さんと嵯峨さん、お手伝い有難う。良かったら朝飯のまかない作ったから休憩して」


 お気遣い有難うございます不破さん。頷きお礼を言いつつ場所どうしようかなと思っていたら、


「事務室兼倉庫として使っている地下があるから其処で休憩して来て」


 テレビがあるから見ていて良いけど置いてあるものは触らないでね~と言われ、嵯峨さんと二人で喫茶ロインの地下へと向かう。
 途中不破さんが声を出さずに口を動かし、『なんとかして』とジェスチャー。
 嵯峨さんのことだよね、店内の常連客達も何となく此方を伺っている気配を感じつつ、不破さんに言われた地下へ向かう扉を開けて進む。
 地下と言うだけあって灯りが1つもない真っ暗な空間。
 扉横にあるスイッチを押すと、天井にある明かりが灯される。

 壁一面コンクリートで覆われている「昔映画で見た秘密の部屋へ続く階段みたいだ」と言う雰囲気の階段を、嵯峨さんと俺の二人で降りて行く。


「確かにゲームか映画か何かに出て来そうですね」


 どうやら口に出して居たらしい。
 無意識に喋り過ぎだろう俺。


「そこが可愛いですよ」


 ぐぬぬ。またしても口にしていたようだ。
 可愛いと言われるより格好良いと言われたいけれど、本物の格好良い男である嵯峨さんを前にしてどう考えても無理なので諦める。それ以前に俺、格好良いタイプでは無いからなぁ。つくづくΩとは格好良さとは無縁な生き物である。多分。
 …時折格好良い人も居るけれど。

 格好良い人は羨ましいとか何とか思いつつ、お盆に乗せたまかないを手に地下の事務室らしき部屋へと足を運ぶ。その際此方も先程同様真っ暗なので何処かに明かりを付けるスイッチは無いかなと入口付近の壁をキョロキョロと見ると、カチッと言う音。
 どうやら嵯峨さんがスイッチを見付けて明かりを付けてくれたようだ。それから、事務室に置いてある小型のテレビのスイッチも付けてくれた。

 あれ、もしかしてこの事務所嵯峨さん来たことあるのかな?
 テーブルの上に嵯峨さんが持って来た賄いを乗せたトレイを置き、事務所隅にある小さな台所へ行き一口ガスコンロに水を入れた薬缶を乗せ火をつける。

 すると事務所の机に一台ある電話機が鳴る。


「はい」


 嵯峨さんがあっという間に受話器を取り、「お湯沸かしておきました。」と一言。
 ん?店舗の方でお湯使うの?と思っていたら急いで階段を降りて来る足音が聞こえ、「有難う~!持っていくね」と不破さんが先程沸かしたお湯が入った卓上ポットを持って二階へと上がっていった。

 その際何かを嵯峨さんに言ったのか、小突かれていたけど…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗
BL
夏休み中に家族で田舎の祖母の家に帰省中、突如Ωになりヒートをおこした僕。 そして豹変したように僕に暴言を吐き、荒れ狂う祖母。 呆然とする父。 何も言わなくなった母。 そして、僕は今、田舎の小さな無人駅で一人立ち尽くしている。 こんな僕だけど、ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか。 初BL&オメガバース連載で、オメガバースは三ヶ月前に知った、超が付く初心者です。 そのため、ふんわり設定です。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

処理中です...