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77 借りを作っていたのかい
しおりを挟む可愛い。
不破さんと末明さんの赤ちゃん達がほんっとーに可愛い!
おしめを替えるからと雪羽ちゃんを抱っこして居たら、俺に対して「う、うあうー」と言うのでハテ?と思っていたら、末明さんが「あーごめん、雪羽を下に降ろして貰って良いかな?そろそろ雪羽もおむつ交換だわ、滅茶苦茶気張っている」と言うので慌てて降ろした。
そうしたら雪羽ちゃんの顔がちょっとだけ赤くなってぷるぷると力んでいる。とか思っていたら、急にほにゃっと力んでいた顔が緩んで笑った。
「雪羽ってば恥ずかしかったのかな?小林さんに降ろして貰った途端、したっぽいな」
と、末明さんからの報告。
笑って居るのに?と雪羽ちゃんの顔を覗いてみたら、雪羽ちゃんからぷう~んと漂う大の臭い。確実に致しましたね、元気な証拠です。
とか思っていたら、徐々に曇っていく顔。
な、泣く?これは泣く?ど、どどど、どうしよう。俺おむつ交換とかしたこと無い!
「ほい、晃明終了っと。良かったな~キレイになったら御機嫌だな」
と言っているうちに末明さんは「さあ次」と、下に降ろした雪羽ちゃんの元へ来てテキパキと手際よくオムツを交換していく。
「流石お母さん、慣れているね~…」
「これでも産んでから数ヶ月経過しているからね、必然的に慣れてきちゃったよ。とは言え二人だから大変でね。でも今日は小林さんが片方を見てくれるから助かるよ」
「え、見ているだけだけど」
何せオムツを交換だなんて俺には無理。
将来のことを考えたらとか何とか思ったりもするけど、それ以前に嵯峨さんとの関係を…その前に告白が先。
俺、まだ嵯峨さんに気持ちを伝えて居ない。それなのについ脳内で妄想してしまって、将来嵯峨さんとそ、その。子供とか出来たら良いなぁとか、色々考えてしまって。
我ながらアホ過ぎる。
告白だってしていないし、何より付き合って貰えるかどうかわからないのに。
何となく大丈夫だとは思うのだけど、俺の勘違いだったら悲しすぎるし当分の間凹んでしまって落ち込むだろう。
一度『運命の番』相手に振り向かれなかったΩですから、玉砕したらしたで開き直るしか無いのだけどね。
「赤ちゃんが二人居るからね、片方でも側に居て見てくれて相手をしてくれると助かるよ。特に雪羽は甘えん坊で、誰か構っていないと即泣くからね」
意外。
今は末明さんにオムツを交換して貰いながらも徐々に機嫌が元通りになり、ニコニコしているのに。
「あ!」
「ん?」
急に晃明君が俺に片腕をグーにしたまま仕切りに訴えて来る。
なんだろう?構ってくれって言うアピールかな?可愛い。何度も軽くグーにした片手で突付いて来て、徐々に御機嫌に「あ~」と言って笑って居る。
晃明君なりの何かのコミュニケーションかな?
天使か、可愛い。
双子なのに雪羽ちゃんとは違うやり取りは男女の違いなのだろうか?
「あ~…ごめん、小林さん。ちょっと晃明構っていて」
「あ、はい。良いですよ」
「ちょっと席外すね」
「どうぞ」
よいしょ、と言いながら末明さんは雪羽ちゃんを抱っこしつつ、電気ケトルのスイッチを押す。
「ミルクですか?」
あれ?さっき子供達に授乳して無かったっけ?と思っていたら、
「んーん。子供達の哺乳瓶の消毒用。毎回哺乳瓶を使った後もお湯で消毒するけど、使う前にも一度は消毒したくてね」
この子達の為だし、何より俺の身勝手。俺が安心したいからと笑う末明さん。
流石お母さん、年下だけど尊敬!
「ま、小林さんが居てくれて尚且つ子供達の機嫌が良いから出来るのだけどね~」
普段はお手伝いさん達やベビーシッターさん達が来ないととてもでは無いけど出来ないのだと言う末明さんは、急にニヤリとゲス顔をしだした…何故に。
「で、どうなのさ」
「何が?」
…言いたいことは何となく察しているけども。
と言うかね、こう言う時にする顔付きでは無いと思う。折角の可憐な美少年という容姿から下品な顔付きになるのはどうかと思う。
そうして俺の反応を見て楽しんでいますね?
もしかして普段から結構ストレス溜めて居るのかな。それとも恋バナをしたいという欲求ですか?
「嵯峨さんと少しは関係深まった?」
「…」
無い。
関係、未だ、無い。
どう返答しようかと待ち構えてみれば、返事しにくい質問に固まる。
俺達、初回のダブルデート以降何も無い気がします。
いや、確実に無い。
チクショウ~!
「え?先日デートしたのでは?」
「それだけ」
「ん?」
「…落合君と一戸君に俺と嵯峨さんとのダブルデートだけ」
「え、マジか」
「うん。おまけに昨日の例の件でまともに会っていない」
嵯峨さんのアパートの新規の住人らしいし、何か警察からあったらと思うと連絡が取れにくい。更になんて連絡を取ったら良いのか悩んでしまい、一向に連絡が取れない。
「あ~…そうだ、今から連絡取らない?ほら、小林さんのお店、【小林茶坊】お休みしているでしょ?連絡しないと嵯峨さん、また飯を食べるのを忘れるのではない?」
「ありえる…」
「でしょ?」
「ほらほら、さっさと嵯峨さんに連絡しなくちゃね!」と急かされて嵯峨さんに連絡を入れている間、ニマニマと笑っている末明さんが小声で、「嵯峨さんに借りをひとつ返せた♪」と言っていることは気が付かないフリをして置いた。
…と言うか、借りを作っていたのかい。
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