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75 徹夜なので
しおりを挟むside.木村壽人
あれ?小林さんが落ち込んでいる?
朝になったので不破さんの所へ荷物を配達に来たついでに、昨夜のことを報告する為に足を運んだ。更についでと、余計かなと思ったが閉まっている小林茶坊に並んでいる常連客の元へ行き、昨日の出来事を話して本日は臨時休業していると説明をした。
それから、後から来るだろう人達の為に臨時休業と紙に書いて貼り付けて置いた。
落ち込んでいる理由はコレだろうか。
臨時休業の張り紙、自分でしたかった?余計なことをしてしまったなぁ。
「小林さん、落ち込んでいます?もしかして俺が勝手に臨時休業の張り紙勝手に貼ってしまったからならその、すいません」
「え、ああ、いえ。有難う御座います、ってそうじゃなくて」
しまったと言った風に片手で口を抑える仕草を見て、違ったのかと判断。
では何故落ち込む?
…分からん。
よし、ならば別のことで気を紛らわさせるのが一番。
とは言えたいしたことは出来ないけど。
「不破さんか末明さん居ます?社長から不破さん宛に届いた荷物を持って来たのですけど、中身を確認して欲しくて」
※
「うわ~クラウディオ、荷物届いたばかりなのに当人は既に本国に帰国、っと」
「この荷物、結構前に出したのかな?」
「まさか本国に戻った初日に荷物を出した?」
「それだと日数的に超特急料金掛かるのでは?」
現在俺が持って来た荷物を取り囲んで不破さん夫妻、不破晃洋さんと末明さんがダンボール箱の封を切っている。因みに届いた荷物は二箱。
片方が異様な程重かったので腰を悪くするかと思った。
もうそろそろ三十路なのでこの重量はキツイ。次は神宮寺に持たせよう、もしくは暇なα。βの俺だともっと鍛えないと無理。そろそろ本格的に事務仕事になりたい。
αと共に仕事するのはキツイのですよ…特にライモンド先輩と。
精神的にも体力的にも諸々削られる。
SAN値減少なんて言葉、ライモンド先輩が来てから知りましたよ。正気度は減らないように平常心で常に向かえとは他の先輩達からの助言です…とほほ。
所で、箱の中身は何が入っているのやら…。
「ぶ」
「うは、流石クラウディオやりやがった…」
重かった荷物から封を切った不破夫妻は、中身を見て苦笑やら絶句やらと忙しい。そうして俺も中身を見てから「社長…」と、変な声が出た。
「ダンボール箱の中身全部、トマト缶」
中身を見て、うひゃひゃひゃと変な声で笑い出す不破さんに、
「一応メーカーは違うのな、全部イタリア産だけど」
と、冷静な判断を下す末明さん。
「カットトマト缶とホールトマト缶の二種類なのですね」
小林さんもまた冷静な台詞が出て来る。
Ωって結構客観的な判断を下すのが早い。
…食品関係の仕事をしている末明さんと小林さんだからと言う気もしないでもないが、それでも家庭的な面に関して特に早い。
「此方は何かな、何が入って居るかな~♪」
不破さんがもう片方のダンボールも開いて中身を確認すると、
「おおう、酒~♪ウォッカとワインか。結構いい趣味しているな、アイツ。あ、末明は20歳になってから、な?」
「え~」
「おお、ウィスキーボンボンが入っている。何故か4箱も。ほら、1つは末明ちゃんに。後店長ちゃんもあげる~」
「良いのですか?」と言いながら、小林さん嬉しそうだ。
「後2箱もあるし、イイよ。俺と末明宛だって中に入っている手紙にも書いてあるし。何ならトマト缶も幾つか持って行く?小林茶坊の朝食で使ってもよし、家で使ってもよし、だよ~」
どうやら落ち込んでいた小林さんの気分は上向きになったようだ、良かった。
俺だとどうにも細やかな判断が出来にくいからな。特にΩ男性は俺みたいなβには難しい。本来ならばαの、小林さんを気にしている嵯峨さんが居てくれると助かるのだが今は仕方無い。
この後の事は不破さん夫妻に任せ、俺は裏方仕事へと戻りますか。
クラウディオ社長へと報告もあるし、昨夜のことも簡易的には報告をしたけれど、詳細に報告書を作成しておかなければならない。
何せ昨夜の件で当分の間神宮寺とは連絡が付かない。恐らく例の運命の番であるΩと密月中であろうと推測している。もしくは神宮寺αだが見た目と違って中身がヘタレだから口説いている真っ最中かも知れない。兎に角辛うじて早朝に我が社にある密月休暇…ライモンド社長自身が己のために作ったと言わんばかりの制度(社長自身はまだ一度も使ったことは無い、緊急時でも一度だけ許可が降りる休暇)…の申請があったから、少なくとも一週間か二週間程我が社には顔を出さないだろう。
申請があったという事は、少なくとも肉体関係ぐらいは出来ただろう。
問題は運命の番相手が所属している会社等に連絡を入れることが出来ているかどうか…。
神宮寺の事だからアイツからのフォローは微妙。
仕方がない、此方でフォローしておくか。
その前に、徹夜なので日本支部に戻って少しだけ仮眠しますか…流石に眠い。
※
・今回のツッコミどころ
SAN値 クトゥルフ神話を題材にしたTRPG『クトゥルフの呼び声』(『クトゥルフ神話TRPG』)で使われるパラメーターのこと。SANチェック、正気度ロール等ともいう。どれだけ精神的ショックに耐えられるかと言う感じ。今文章においてはドアを開けたら亀甲縛りの変態が天井からぶら下がっている状態に耐えられるか、もしくはライモンドの変態度合いに付いて行けるかといった所。
時々オカルトチックにもなるのでSAN値減少等と言われている。
なお、ライモンドの番相手は勇者なので減少ではなく増加とか何とか言われている(社内メンバー限定)。
クラウディオの会社 勤務時間は完璧なブラック企業である。その分特殊任務の為高給取り。また、α等のメンバーには密月休暇等といった珍しい有給休暇が取れる。それに対してβも同じく有給休暇があり、ある程度融通がきく。現場で働く者のほうが危険手当もあるため給料が良いが、事務方も優秀な人材には高待遇である。
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