商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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「何がぐ~と?腹でも減っているのか?」

「…」

「違うか?」

「…」

「その沈黙は、何故此処に居ると言うことかな?」


 黙って固まってしまった俺に対し、困ったような顔付きの大家さん…いや、嵯峨さん。
 このまま沈黙を続けるのは失礼だしと考え、何とか口を開く。


「今日はもう閉店していますし、此方側は店舗では無いです…」


 口調はちょっと冷たいかも知れない。少し反省。
 と言うかね、午前中に告白されてその日の午後、つまり今会うとかどんな顔をしろというの!?内心パニックだよ!顔には出さないように気を付けてはいるけど、ちょっとしたことで即変な顔付きになりそうで困る~!

 一先ずと事実をありのままに話すと、嵯峨さんは思案の為かうーんと唸ったあと、


「帰り際の小林さんが心ここにあらずと言うか、何と言うか。俺のせいだとは分かっているのだけど、その、気になって」


 あ、はい。
 確かに放心状態でした。
 告白とか花束とか、今までの人生で一度だって向けられたことのない感情とプレゼントに驚いてしまって。
 何せそんじょそこらに居る、地味な顔付きの男だ。
 Ωと言う性別を抜きにしても、普通は気にかけられる様な美しいワケでもないし、身長だって低めで困っている位だ。

 幼少時から中学まで田舎で育ったけれど、αなんて俺が知っているだけで一人しか居なかったし、Ω等俺を入れてもう一人しか知らない。そんな田舎で綺麗で美しい顔をした人なんて、俺以外のαとΩのカップルだけだった。
 …そのαが俺の『運命』だったワケだけど。
 そうして俺以外のもう一人のΩが俺の『運命』のαの伴侶だったのだけど。

 だからこそ、辛すぎて中学を卒業したのを良いことに田舎から都会の高校、バース性の学校へと入学した。そうでもなければ当時、まだまだ子供だった俺の気が狂いそうだったから。

 嵯峨さんが今目の前に居るのに、思い出すのはもうやめよう。
 失礼な気がするし。
 嵯峨さんの前ではなるべく真摯(しんし)でいたい。


「それで、だな」


 何だろう。
 先程からチラチラと此方を見て、それから目線を外しと繰り返している。もしかして照れている、とか?いやいや、まさかね。
 …いや、「付き合って下さい」なんて直球ストレートな告白されてしまったワケですし、更に言うと薔薇の花束まで頂いてしまいましたし。マジで照れていらっしゃっている、とか?

 そう言えば俺、直球ストレートの告白をされても気が付かずにアホな回答してしまったけど。
 うぐぐ…今思えば余りにも学生時代モテなさ過ぎてバース性の学校に入ったにも関わらず、日々ひたすらに出会った番のことを忘れるべく、逃避するように勉学に取り組んだ。結果、何故か此処でお茶屋をしているわけですが。あの勉学の日々は一体何だったのか。
 まぁモテナイだけですからねぇ…現在のモテ期に少々困惑しているけど。


「時間あるか?」

「はい?」

「そうか、あるか!」

「あ、いやその」

「駄目なのか?」


 そんなあからさまにシュンと落ち込まないで欲しい。
 今の嵯峨さんに犬の尻尾と耳があったら、犬耳と尻尾はへろへろと垂れ下がって居るだろう。そんな、幻覚が!!


「その、これから買い出しに行かないといけなくて」

「それは店の?」

「家で使う物もあります」

「よし、それじゃ付き合う」

「え!」


「直球ストレート告白再び!」と、うっかり驚いて言葉にしてい一歩下がってしまったら、嵯峨さんまで驚いた顔。え、何で?いや、結構失礼なこと言ってるよ俺!と硬直していたら、


「そうではなくて、買い物に付き合うと言うことで…」


 と、片手でご自身の口を覆って赤面。

 え
 え
 えええ~!?


「あわ、わわ、そのっ!すいません勘違いして!」

「ああ、いや、うん。そうか」


 いや何がそうかなんですか!?とか問い正したくなったけれど、と言うか恥ずかしい!俺どれだけ自分に自信があるんだよ!と言うか自信なんて今までの人生…いや、中学生の『あの時』から一度だって無かったのに!
 瞬間湯沸かし器か!と言うぐらい、自分の顔面に熱が集まっている自覚がある。恐らく赤面しているだろう。だけど嵯峨さんが動揺して顔を片手で覆っている姿がその、珍しくて視線が外せない。
 貴重なご尊顔を拝んでしまったよと、ついつい思ってしまう。

 
「小林さんって」


 うぐ、この言い方だとおっちょこちょいとかって言われるのかな。
 学生時代からよく言われていたんだよね。慌てん坊とか、早合点や早とちりとか…


「可愛い、ですね」


 …は?
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