街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
94 / 118
第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

93. カラス

しおりを挟む
 僕《しもべ》である黒猫のネロと馬のノアールを連れて、リヒトとサラと一緒に森を散歩する。
 二人には、ただの散歩と言ってあるが、私の本当の目的は三体目の僕の確保だ。

 目指すは空、空を飛べる鳥、具体的にはカラスだ。
 他の鳥でもいいが、闇魔法を使って僕にしようとすれば、結局黒くなってしまう。
 それなら、最初から黒いカラスの方はいいだろう。カラスは賢いとも聞くし。

 森を散歩していると都合が良いことにすぐに木の枝に止まったカラスを発見した。

 だが、相手は木の上だ、簡単には捕まえられそうにない。しかし、それは、想定内だ。

「ジャァーン! 撒き餌」
 私は、予め用意していたカラスの餌を懐から取り出し、それを撒き始めた。

「急にどうしたんだ? ああ、カラスの餌か」
「これでカラスを捕まえますわ」

「カラスなんて捕まえてどうするんだ?」
「勿論、僕にしますわ。僕三号ですわ」

「僕一号は私ですよ」
 サラがまた何か言っているが無視だ。

「でもどうやって捕まえる気だ。近付けば逃げるだろう」
 リヒトも慣れてきたのかサラのことは気にしないようだ。

「それはもちろん僕二号に任せますわ。ネロ、君に決めた! あのカラスを捕まえなさい」
「ニャー」

 黒猫のネロは、私の命令に従ってカラスに飛びかか……らなかった。
 ひと声鳴いてから少し離れて丸くなって昼寝を始めた。

「プッ! よく躾けられた僕だな」
「クッ! こんなはずでは。猫は気まぐれなだけよ!」

 ネロは僕にしてまだ日が浅いし仕方がない。

「私の僕はネロだけではないわ」
「はい、はい! 次は私ですね」

「ノアール、任せたぞ! あのカラスを捕まえなさい」
「ヒヒーン」

 馬のノアールは大きく嘶くと、カラスに向けて走り出した。
 流石僕一号。長年仕込んだだけはある。

 ノアールが駆け寄ると、カラスは飛び立ってしまった。そして、飛びながらノアールの背中を突き出した。
 くそう! ノアールの足蹴りも、噛みつき攻撃も届かない死角を狙うとは、カラスめ、なかなかやるな。

「苦戦しているようだが大丈夫か?」
「ヒッ、ヒヒン」
「クッ! ノアール戻れ」

 私はノアールを撤退させる。
 カラスは何事もなかったように地上に降りると、また餌を啄み始めた。

「クソー。人をおちょくりやがって!」
「おい、おい。令嬢らしからぬ言葉を使ってるぞ」

「オホホホホ。リヒト兄様、私何か言いましたか?」
「笑いながら、こっちを睨むな。それより、あっちが何か期待しているぞ」

 実は、ずっと無視しているが、サラが期待を込めた目でこちらを見ながら「次は私ですね。次は私ですね」と繰り返していた。

「はぁー。仕方ないですね。サラ。やってしまいなさい!」
「お任せください!」

 言うが早いか、サラがすかさず飛び出した。そして、カラスを抑え込んだ。

「お嬢様、捕まえました」
「おお、流石サラ、素早いわね」
「動きが見えなかったぞ。本当にメイドか?」

 だが、カラスは捕まえられながらも、サラの手を嘴で突いていた。血が盛大に出ているが、サラは大丈夫なのか?

 その後、カラスには闇魔法をかけて、おとなしく寝てもらった。

 僕三号ゲットだぜ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」

なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。 授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生 そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』 仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。 魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。 常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。 ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。 カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中 タイトルを 「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」 から変更しました。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

帰還した吞兵衛勇者〜異世界から帰ってきたら日本がダンジョンだらけになっていたんだが?〜

まぐな
ファンタジー
 異世界転移に巻き込まれた主人公、梶谷太一は無事に異世界の魔王討伐を成し遂げ、元の世界の日本に帰還した……はずだった。  だが、太一が戻った日本には異世界でよくみたモンスターが蔓延るダンジョンが発生。  日本には元々ダンジョンがあったかのように人々の生活に馴染んでおり、モンスターを討伐する専門組織、討伐隊ギルドなども設立されていた。 「とりあえず難しいことは置いておいて酒盛りだ!」  しかし、太一は何よりも酒のことで頭がいっぱいだった。  異世界で鍛え上げた能力を持つ太一を、人手不足に陥っている討伐隊ギルドは放っておくはずもなく……。 カクヨムにも掲載してます。

処理中です...