街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

94. クロウ

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(リヒト視点)

 マリーと一緒に散歩に出たら、マリーがカラスを捕まえた。最初からそれが目的だったようで、僕《しもべ》にするのだということだ。
 クロウという名前を付けて可愛がっている。

 しかし、闇魔法というのは動物を操る魔法もあるのだろうか? もしかして、人間も操れる?
 少し気になったので、マリーに直接聞いてみることにした。

「マリー、そのカラスを大人しくしているのは、闇魔法だよな。人間にも効くのか?」
「えっ! や、や、闇魔法? なんのことですの?」
 いくら何でも動揺し過ぎだろう。俺が、マリーが闇魔法を使えるのを知らないと思っているようだ。

「これは、秘孔を突いて眠らせているだけですわ」
 闇魔法のこと俺には隠すつもりだな。それならと、俺は少しマリーをからかってやることにした。

「秘孔ね……。どこで習ったんだ、そんなこと?」
「それは……。秘伝ですから秘密ですわ」

「そんなこと言わずに、俺にも教えてくれよ」
「無理なものは無理ですわ」
 まあ、魔法は俺には使えないからな。教わっても無理だな。

「そんなことより、どうです。だいぶ慣れたでしょ」
 そう言って、マリーはクロウを右肩に乗せた。
 すると、さっきまで床に寝ていた黒猫のネロが起き上がり、マリーの左肩に乗った。
「え、ちょっと。ネロ、両肩は重い」

「ノアールがいなくて良かったな。いれば押し潰されていたところだぞ」
「うー」

「こら、二匹とも退きなさい。そこは私の場所です」
 ネロとクロウを払い除け、メイドのサラがマリーの首にしがみ付いた。

「ぐぇっ! く、首が……」
「あー。第一の僕がいたか。ははは」
 サラに首を絞められているマリーをみて俺は笑い声をあげる。なんとも和やかなものである。今までの生活からは考えられないな。

「笑い事じゃないわよ。サラ、首が苦しい」
「あっ。すみません、お嬢様」

「楽しそうでいいわねぇ」
 いつもゴロゴロしている侍女のララエルが、珍しくそばにやって来た。

「ララエルも抱き付いたらどうだ?」
「私は遠慮しておくわ。それより、本当はリヒト様がマリー様に抱き付きたいんじゃないの?」

「そ、そんなことない!」
「あぁー。赤くなった。あやしぃー」
 ララエルをからかうつもりが、逆にからかわれてしまった。

「あら、二人は随分仲良くなったのね」
「「そんなことないから!」」

「息もぴったりね」
 二人同時に怒鳴り返したので、マリーはビックリして、俺とララエルの顔を見比べていた。

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