街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

33. クロカゲ

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 まだ、イングラスがフラスコット王国に併合されるより前、イングラス内で幾人もの領主がイングラスでの覇権を争っていたころ。戦争の主力は騎馬隊だった。

 各領主はそれぞれ独自に騎馬を育成し、強力な騎馬隊を組織していた。
 その中でも、最強と謳われたのがロートブルク家の騎馬隊『クロカゲ』だった。

 クロカゲは名前が示すとおり、黒鹿毛の馬によって構成された騎馬隊で、その統率された動きから、「ロートブルク当主は馬と会話ができる」とか、「いや、あれは以心伝心だ」などと言われていた。

 クロカゲの強さは統率された動きだけではなかった。兎に角、疲れ知らずだったのだ。
 普通の馬なら十日かかるところを、半分の五日で移動した記録も残されていた。

 記録といえば、少し不思議な記録も残されていた。
 クロカゲは黒鹿毛の馬によって構成されていたが、その馬たちは、元々黒鹿毛ではなく、生まれた時は鹿毛や栗毛、それどころか芦毛だった場合もあったという。

 成長するにつれ、元々の生まれた時の毛色から変わっていたのだが、その原因が何なのかは秘密にされていて記録にも残っていなかった。
 きっとそれがクロカゲの強さの秘密だったのであろう。

 クロカゲの力によって、ロートブルク家はイングラスを統一し王となった。だが、戦争の主力が騎馬隊から鉄砲と大砲へと変わり、戦艦により海外とも戦争をするようになると、ロートブルク王朝は長くは続かなかった。
 海外との激しい戦争の結果、イングラスはフラスコット王国に併合されることになった。

 だが、ロートブルク家はイングラスの王としての地位は失ったものの、フラスコット王国での公爵の地位を得て、引き続きイングラスを統治することになった。

 クロカゲの子孫とされる馬たちも、今でも公爵家の厩舎で飼われている。

 そして、今年、生まれた時は栗毛だった仔馬が、黒鹿毛に変わった。
 伝説の騎馬隊クロカゲが復活する兆しかも知れない。

 仔馬のノアールの様子を見に来た私に、厩務員のトーマスがそんな話をしてくれた。

 これは、昔、私の祖先だったか祖先の部下だったかはわからないが、闇魔法使いがいたことで間違いないだろう。
 何か他に闇魔法についての記録は残っていないものだろうか。
 その記録があれば、家庭教師のクロードを説得する助けになるのだが……。軍事機密だったようだし難しいか。

 今更、騎馬隊クロカゲを復活させても戦争の役には立ちそうもないし、というか、戦争が起こってもらっては困るのだが、それでも、馬を世話するトーマスとしては、クロカゲは憧れなのだろう。ノアールに対しては他の馬以上に手間をかけている。

「大きくなったら、お嬢様がお乗りになるでしょうから、入念に世話をいたしますだ」
「私は騎馬隊を率いる気はないですわ!」

「まあ、騎馬隊は無理でしょうが、お嬢様の愛馬にしていただければノアールも喜ぶでしょう」
 実験体にもなってもらったし「愛馬はともかくとして、僕《しもべ》くらいにはしてあげなくもないですわ」

「お嬢様は、ツンデレですな」
「な! そんなんじゃ……」
 そうではなく、悪役令嬢としての演技だってば!

 トーマスはもちろん、ノアールも嬉しそうにしていたのだった。

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