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第28話 妹
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俺は今、めちゃくちゃ緊張している……。
真宮さんに無理やり連れてこられてしまったけれど、実はウォータースライダーというこの巨大滑り台てきなものは初めてだったりする。
自分で言うのも情けないが、友達も少ないし彼女なんていなかった俺が、こんな場所に来ること自体がレアケースすぎるからな……家族で来た覚えもない。
ここまで、初めてじゃないですよ! てきな空気で振る舞ってきてはいるが、内心ドキドキの連続だし……。
それにしても、思っていたより高さあるんだな……滑るところも角度が急すぎだし、これ本当に滑れるの? カーブのところなんて途中でコースアウトとかしないだろうな……不安すぎる。
――春時。
「春時?」
「うぉっ!」
「ちょっと! いきなり大声を出さないでよ! びっくりするじゃない」
「す、すまん。いきなり話しかけられたものだから」
「いきなりじゃないし。それより前と後ろ、どっちがいい?」
「前と後ろ?」
「うん。春時があたしを抱くか、あたしに抱かれたいか?」
な、ん、だ、と……。
それってつまり、真宮さんの生肌に直接密着して……。
「い、いや……それはちょっとまずいんじゃないかな」
「なにがよ。ほら、早く決めないと順番がきちゃう」
「そう言われても」
そんなこと決められるわけがない。仮に後ろからを選んだ場合どうなるんだ? え? どこを掴めばいいの? お腹? いやでもそれ、めちゃくちゃ密着してないか? 俺まだ童貞なんだけど。
「じゃあ、あたしが決めるね。春時が前であたしが後ろ! 異論は認めない!」
「は、はい……」
「あ! 次、あたしたちの番だよ!」
「お、おう」
なんか緊張してきたぁあああ!
係員の人の指示に従い準備されている二人乗りの浮き輪に乗る――ん? なんだ、掴むところがあるんじゃないか。
それなら別に前と後ろで悩むことでもなかったな、アホらし……などと考えていると、突然スベスベした感触が脇の下から脇腹に伝わった。
その感触の正体に目をやると――脚⁉︎ これ、真宮さんの脚じゃないか!
「春時、あたしのセクシーな脚につかまってもいいんだよ?」
「バッ! つ、つかまないから!」
これは完全にやられた気がする。真宮さん、わざと後ろを選んだな?
「うぉ!」
心の準備が整う前に、スタートの合図が出され、俺の身体はコースに沿って滑り落ちていく。
瞬間、ビックリした俺は浮き輪についた持ち手を離してしまい、咄嗟に真宮さんの脚にしがみついてしまった。
スベスベとした感触が全身に伝わる。
「わわ! 春時! 大胆!」
「ち、ちがっ! うぉ!」
コースがカーブへ入り振り落とされそうになった俺は、真宮さんの脚に必死にしがみついたまま離せないでいる。
彼女の脚の感触で頭がいっぱいで、もうなにが起こっているのか、わからなくなってきた。
「春時! 痛い! 捻らないで! 脚とれちゃうよぉおおお!」
「うぉおおおっ!」
「いたぁあああいっ!」
――バシャン!
「終わった、のか……」
気がつくと浮き輪はプカプカと水面に浮いていた。
「もうっ! 痛かったなぁ……でも、面白かったね! それにしても春時、ビビリすぎでしょ! ウケるんだけど」
真宮さんは、笑いながら背中をなんども叩いてきた。
「痛っ! う、うるさいな!」
そ、それにしても怖かったのか、気持ち良かったのかよくわからない体験だったな……。
◇
真宮さんとのウォータースライダーも無事に? 終わり、下でまっていた仲里さんのもとへ戻ると、彼女の口から食事をしようという提案が出された。
まぁ、そろそろお昼も近いからその意見には俺も賛成して、ドーム内にあるレストランへ入ることになった。
かき揚げうどんにカツ丼、カツカレーに焼きそばやポテト……あとはかき氷とか、なんだかレストランというよりは、どこかの屋台みたいだな。
「うーん、どれを食べようかな……二人はどうするの?」
「あたしはカツカレーに焼きそばとポテトのせちゃう! 春時もそれにしなよ」
「いや、カツカレーはともかくポテトと焼きそばいらないから」
「私は……かき揚げうどんにしようかな……」
「じゃあ買いにいこう!」
言うと真宮さんは仲里さんの手を引き食券の列に走った。
「ちょっ! 俺まだ決めてないんだけど!」
慌てて二人のあとを追うようにして走り出した瞬間――なにかに勢いよくぶつかった。
「きゃっ!」
「うあっ! すみません!」
足元にはピンクの髪をしたビキニ姿の女の子が尻餅をついて、痛そうにしている。
「だ、大丈夫ですか!」
「痛ったぁい……ちょっと、気をつけてよ」
「ご、ごめんなさい」
俺は手を差し出すが、つかもうとしない。
「ありがとう、でも大丈夫です。自分で立てますから」
言うと、女の子はゆっくり立ち上がる――が、俺の視線は下を向いたまま変わらない。
この子……小学生? だ、大丈夫かな……親はどこにいるんだろう。怪我とかしていたら大変だ。
「どこか痛いところはない? お父さんやお母さんはどこにいるの?」
「あなた……もしかしてだけど、わたしのことを小学生かなにかだと思ってない?」
「え……違うの?」
「失礼ね! こう見えても高校生なんですけど!」
まじ? 身長だけじゃなくて顔まで童顔だから……って、この顔どこかで……誰かに似ているような……。
「なら俺と同じだね」
「そんなことより、あなた名前はなんて言うの? あと連絡先も教えて」
「え? 早見春時だけど……どうして?」
「あとから怪我が見つかったりしたら請求しないといけないじゃない」
あ……そういうことね。
「ならそっちも名前を教えといてくれないと困るんだけど」
「なんで見ず知らずの男に名前を教えないといけないのよ」
「いや、だって知らない相手から連絡きても困るだろ?」
「それもそうかぁ……じゃあ特別に教えてあげる。わたしの名前は園崎杏奈」
その名前を聞いた瞬間、俺は彼女が誰なのかすぐに理解した。
どうりで似ているわけだ……彼女は当時、俺をフッた園崎舞香の妹にちがいなかった……。
真宮さんに無理やり連れてこられてしまったけれど、実はウォータースライダーというこの巨大滑り台てきなものは初めてだったりする。
自分で言うのも情けないが、友達も少ないし彼女なんていなかった俺が、こんな場所に来ること自体がレアケースすぎるからな……家族で来た覚えもない。
ここまで、初めてじゃないですよ! てきな空気で振る舞ってきてはいるが、内心ドキドキの連続だし……。
それにしても、思っていたより高さあるんだな……滑るところも角度が急すぎだし、これ本当に滑れるの? カーブのところなんて途中でコースアウトとかしないだろうな……不安すぎる。
――春時。
「春時?」
「うぉっ!」
「ちょっと! いきなり大声を出さないでよ! びっくりするじゃない」
「す、すまん。いきなり話しかけられたものだから」
「いきなりじゃないし。それより前と後ろ、どっちがいい?」
「前と後ろ?」
「うん。春時があたしを抱くか、あたしに抱かれたいか?」
な、ん、だ、と……。
それってつまり、真宮さんの生肌に直接密着して……。
「い、いや……それはちょっとまずいんじゃないかな」
「なにがよ。ほら、早く決めないと順番がきちゃう」
「そう言われても」
そんなこと決められるわけがない。仮に後ろからを選んだ場合どうなるんだ? え? どこを掴めばいいの? お腹? いやでもそれ、めちゃくちゃ密着してないか? 俺まだ童貞なんだけど。
「じゃあ、あたしが決めるね。春時が前であたしが後ろ! 異論は認めない!」
「は、はい……」
「あ! 次、あたしたちの番だよ!」
「お、おう」
なんか緊張してきたぁあああ!
係員の人の指示に従い準備されている二人乗りの浮き輪に乗る――ん? なんだ、掴むところがあるんじゃないか。
それなら別に前と後ろで悩むことでもなかったな、アホらし……などと考えていると、突然スベスベした感触が脇の下から脇腹に伝わった。
その感触の正体に目をやると――脚⁉︎ これ、真宮さんの脚じゃないか!
「春時、あたしのセクシーな脚につかまってもいいんだよ?」
「バッ! つ、つかまないから!」
これは完全にやられた気がする。真宮さん、わざと後ろを選んだな?
「うぉ!」
心の準備が整う前に、スタートの合図が出され、俺の身体はコースに沿って滑り落ちていく。
瞬間、ビックリした俺は浮き輪についた持ち手を離してしまい、咄嗟に真宮さんの脚にしがみついてしまった。
スベスベとした感触が全身に伝わる。
「わわ! 春時! 大胆!」
「ち、ちがっ! うぉ!」
コースがカーブへ入り振り落とされそうになった俺は、真宮さんの脚に必死にしがみついたまま離せないでいる。
彼女の脚の感触で頭がいっぱいで、もうなにが起こっているのか、わからなくなってきた。
「春時! 痛い! 捻らないで! 脚とれちゃうよぉおおお!」
「うぉおおおっ!」
「いたぁあああいっ!」
――バシャン!
「終わった、のか……」
気がつくと浮き輪はプカプカと水面に浮いていた。
「もうっ! 痛かったなぁ……でも、面白かったね! それにしても春時、ビビリすぎでしょ! ウケるんだけど」
真宮さんは、笑いながら背中をなんども叩いてきた。
「痛っ! う、うるさいな!」
そ、それにしても怖かったのか、気持ち良かったのかよくわからない体験だったな……。
◇
真宮さんとのウォータースライダーも無事に? 終わり、下でまっていた仲里さんのもとへ戻ると、彼女の口から食事をしようという提案が出された。
まぁ、そろそろお昼も近いからその意見には俺も賛成して、ドーム内にあるレストランへ入ることになった。
かき揚げうどんにカツ丼、カツカレーに焼きそばやポテト……あとはかき氷とか、なんだかレストランというよりは、どこかの屋台みたいだな。
「うーん、どれを食べようかな……二人はどうするの?」
「あたしはカツカレーに焼きそばとポテトのせちゃう! 春時もそれにしなよ」
「いや、カツカレーはともかくポテトと焼きそばいらないから」
「私は……かき揚げうどんにしようかな……」
「じゃあ買いにいこう!」
言うと真宮さんは仲里さんの手を引き食券の列に走った。
「ちょっ! 俺まだ決めてないんだけど!」
慌てて二人のあとを追うようにして走り出した瞬間――なにかに勢いよくぶつかった。
「きゃっ!」
「うあっ! すみません!」
足元にはピンクの髪をしたビキニ姿の女の子が尻餅をついて、痛そうにしている。
「だ、大丈夫ですか!」
「痛ったぁい……ちょっと、気をつけてよ」
「ご、ごめんなさい」
俺は手を差し出すが、つかもうとしない。
「ありがとう、でも大丈夫です。自分で立てますから」
言うと、女の子はゆっくり立ち上がる――が、俺の視線は下を向いたまま変わらない。
この子……小学生? だ、大丈夫かな……親はどこにいるんだろう。怪我とかしていたら大変だ。
「どこか痛いところはない? お父さんやお母さんはどこにいるの?」
「あなた……もしかしてだけど、わたしのことを小学生かなにかだと思ってない?」
「え……違うの?」
「失礼ね! こう見えても高校生なんですけど!」
まじ? 身長だけじゃなくて顔まで童顔だから……って、この顔どこかで……誰かに似ているような……。
「なら俺と同じだね」
「そんなことより、あなた名前はなんて言うの? あと連絡先も教えて」
「え? 早見春時だけど……どうして?」
「あとから怪我が見つかったりしたら請求しないといけないじゃない」
あ……そういうことね。
「ならそっちも名前を教えといてくれないと困るんだけど」
「なんで見ず知らずの男に名前を教えないといけないのよ」
「いや、だって知らない相手から連絡きても困るだろ?」
「それもそうかぁ……じゃあ特別に教えてあげる。わたしの名前は園崎杏奈」
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