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第11話
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時臣が病院のバイク置き場に向かってる途中、ちょうどエントランスを出るあたりでスマホが鳴った。
飛田だった。
『東雲は納得してくれたよ。あいつもこの業界(せかい)の人間だ。敵対組織に金渡してたなんてのは、実の弟でも庇い切れるもんじゃないとわかってくれたよ。だからお前らは安心しろ。釘も刺しといたから大丈夫だ』
「悪かったな、ありがとう。俺はいずれにしろ家族はちょっとしんどかったんでな。よかったよ」
『夜ちょっと飲むか?』
「そうだな…」
うざいやつだったが、この世から消えることがわかると、それはそれで気持ちも穏やかではなくなるもんだなと思う。
腹の奥にどっしりと石を置かれたような感じだ。
『じゃあ後で迎えに行くわ』
「9時頃なら事務所にいるから」
『わかった』
そんな会話をして電話は切れた。
「はぁ…なんだか急な展開で疲れたな…」
フルフェイスを抱えて、バイクの横に立つ。
まあ…この病院でも悲喜交交はあるわけで…後で線香の一本でもどこかであげてやろうと思ってバイクに跨った。
連れてこられたのは品川埠頭
「おいおい、飲み屋じゃねえぞここは」
時臣は助手席でそう言いながらも目の前の海を見つめ、その先に光る船の作業灯を見つめた。
「まあ、たまには2人でしっぽり行こうや」
後ろのシートからちょっと可愛げなバッグを取って、冷たいビールを飛田は渡してくれた。
「おふくろさんにでも用意してもらったんか?」
あまりに準備のいい(しかも花柄で可愛い)保冷バッグに笑いを禁じ得ない。
「言ってろよ。うちの組はアットホームなんだよ」
「アットホームなヤクザってすげえ」
ーじゃあ遠慮なくーと缶ビールを開けて、一口飲む。
「専門の…」
「ん?」
「そういう専門の業者に頼んだから…どこでどうなったかは、俺らにはわからん」
春樹のことだと理解した。
「そうか…」
そう言って目の前の灯を見つめしばらく黙り込む。
「お前こんな仕事の時って、いつもこんなか?」
そう言われて飛田は、
「意外とな…俺は向いてないのかもしれん…この仕事は」
咥えていたタバコを灰皿に捨て、缶を開けて時臣の手の中の缶に当ててからグイッと飲む
そんなことねえだろ、も そうかな…も何とも言えず、ただ黙って聞いていたが
「でもまあ…そんなヤクザが1人くらいいたって…悪くねえんじゃねえの?」
そんなことを言いながらタバコに火をつけて、つけたタバコを飛田の口に含ませる。
そして時臣はビールを持って外に出て、コンクリートのヘリまで行くとビールを海に流した。
「手向けか?」
飛田も降りてきて隣でそれに倣った。
「海の中にいるとも限らねえけどな」
はっと笑って缶ごと海に投げ入れる飛田に
「あ~らら、ヤクザはやだねえ、モラルにかけるわ」
笑いながらタバコを口に咥え、時臣は飛田を引き寄せた。
「なっ!」
瞬間抵抗しようとした飛田だったが、その思惑を悟りゆっくりとタバコを吸い上げる。
そのタバコの火で自分のタバコにも点火した時臣は、飛田の眼前で目を見ながら一度大きく吸って大きく吐き出した。
「さあて、帰るかね」
タバコを咥えながら車に乗り込もうと飛田から離れた瞬間に、飛田が時臣のタバコを外し、唇を重ねてきた。
一瞬後、飛田の唇が開きかける直前に、時臣は頭を引いて唇を離す。
「欲張りだな、2本も持って」
離れた直後の言葉はそれ。
「俺は、ダメだぞ?なんせおっぱいが大好きだからな」
ニヤッと笑ってタバコを取り返すと、
「さっさと送れ。早く寝て今日を終わらせてえや」
時臣は、車に向かい助手席に座ると、後ろの可愛い保冷バッグからビールをもう一本取り出した。
飛田は声を殺して笑っている。
おっぱいには敵わなそうだった。
「置いてくぞ」
「へいへい」
笑いを残したまま飛田も車に乗り込み、白いレクサスはテールランプを灯して埠頭の暗闇へときえていった。
飛田だった。
『東雲は納得してくれたよ。あいつもこの業界(せかい)の人間だ。敵対組織に金渡してたなんてのは、実の弟でも庇い切れるもんじゃないとわかってくれたよ。だからお前らは安心しろ。釘も刺しといたから大丈夫だ』
「悪かったな、ありがとう。俺はいずれにしろ家族はちょっとしんどかったんでな。よかったよ」
『夜ちょっと飲むか?』
「そうだな…」
うざいやつだったが、この世から消えることがわかると、それはそれで気持ちも穏やかではなくなるもんだなと思う。
腹の奥にどっしりと石を置かれたような感じだ。
『じゃあ後で迎えに行くわ』
「9時頃なら事務所にいるから」
『わかった』
そんな会話をして電話は切れた。
「はぁ…なんだか急な展開で疲れたな…」
フルフェイスを抱えて、バイクの横に立つ。
まあ…この病院でも悲喜交交はあるわけで…後で線香の一本でもどこかであげてやろうと思ってバイクに跨った。
連れてこられたのは品川埠頭
「おいおい、飲み屋じゃねえぞここは」
時臣は助手席でそう言いながらも目の前の海を見つめ、その先に光る船の作業灯を見つめた。
「まあ、たまには2人でしっぽり行こうや」
後ろのシートからちょっと可愛げなバッグを取って、冷たいビールを飛田は渡してくれた。
「おふくろさんにでも用意してもらったんか?」
あまりに準備のいい(しかも花柄で可愛い)保冷バッグに笑いを禁じ得ない。
「言ってろよ。うちの組はアットホームなんだよ」
「アットホームなヤクザってすげえ」
ーじゃあ遠慮なくーと缶ビールを開けて、一口飲む。
「専門の…」
「ん?」
「そういう専門の業者に頼んだから…どこでどうなったかは、俺らにはわからん」
春樹のことだと理解した。
「そうか…」
そう言って目の前の灯を見つめしばらく黙り込む。
「お前こんな仕事の時って、いつもこんなか?」
そう言われて飛田は、
「意外とな…俺は向いてないのかもしれん…この仕事は」
咥えていたタバコを灰皿に捨て、缶を開けて時臣の手の中の缶に当ててからグイッと飲む
そんなことねえだろ、も そうかな…も何とも言えず、ただ黙って聞いていたが
「でもまあ…そんなヤクザが1人くらいいたって…悪くねえんじゃねえの?」
そんなことを言いながらタバコに火をつけて、つけたタバコを飛田の口に含ませる。
そして時臣はビールを持って外に出て、コンクリートのヘリまで行くとビールを海に流した。
「手向けか?」
飛田も降りてきて隣でそれに倣った。
「海の中にいるとも限らねえけどな」
はっと笑って缶ごと海に投げ入れる飛田に
「あ~らら、ヤクザはやだねえ、モラルにかけるわ」
笑いながらタバコを口に咥え、時臣は飛田を引き寄せた。
「なっ!」
瞬間抵抗しようとした飛田だったが、その思惑を悟りゆっくりとタバコを吸い上げる。
そのタバコの火で自分のタバコにも点火した時臣は、飛田の眼前で目を見ながら一度大きく吸って大きく吐き出した。
「さあて、帰るかね」
タバコを咥えながら車に乗り込もうと飛田から離れた瞬間に、飛田が時臣のタバコを外し、唇を重ねてきた。
一瞬後、飛田の唇が開きかける直前に、時臣は頭を引いて唇を離す。
「欲張りだな、2本も持って」
離れた直後の言葉はそれ。
「俺は、ダメだぞ?なんせおっぱいが大好きだからな」
ニヤッと笑ってタバコを取り返すと、
「さっさと送れ。早く寝て今日を終わらせてえや」
時臣は、車に向かい助手席に座ると、後ろの可愛い保冷バッグからビールをもう一本取り出した。
飛田は声を殺して笑っている。
おっぱいには敵わなそうだった。
「置いてくぞ」
「へいへい」
笑いを残したまま飛田も車に乗り込み、白いレクサスはテールランプを灯して埠頭の暗闇へときえていった。
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