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高校生活

零の親

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零はその音に即座に反応した。

「ん?親?」
そう聞く俺を無視して、ドアを開け外に出た。

俺と健でどうしたんだろうと不思議がっていると、外鍵の閉まる音がした。
「は?」
「え?」

「頼む 外に出てくるな」
零はそう言って1階にかけ降りた。

「どういう事」
「親に俺らを見られたくねえか それか俺らに親を見られたくねえか」

「零 何してたんだ」
低い男の声が聞こえた。

俺と健は顔を見合わせてドアに耳を近づけた。

「勉強してたで」
「じゃああの玄関にある2つの靴は?」

「勉強会 クラス上がれんかったから上のクラスの子達に教えてもらおうと思って」
「そうか 次の学年ではトップクラス入れよ」

「父親か?」
「かも」

零の上がってくる音が聞こえた。
「すまん 父親出て行ったら帰ってくれ」

「何かあった?」
零は黙って首を振った。
「不定期に帰ってくるけどまさか今日帰ってくるとは思わんかった」

「西塔お前の親って毒親か?」
零はその言葉を聞こえていないかのように無視をし、もう1度下に降りた。

「お父さん今日もう仕事終わりなん?」
頷いただけなのか父親の声は聞こえなかった。

「そうなんや 友達もう帰るかもしれん」
そう言ってもう1度上に来た。

「お前ら頼む もし父親に話しかけられたら勉強してたって言ってくれ」

「大丈夫?」
「分かった」
健は俺にそうするぞと言って荷物をまとめた。

俺たちは下に降りた。
「零に勉強教えてくれてるんだって?要領悪くて馬鹿で大変なのに悪いな」

そう言われた。
「そうなんよな 付き合ってくれてるんよ」

俺はイラッとした。
要領が悪い、馬鹿などと息子に言う父親にも、父親にそのような事を言われて普通にしている零にも。


「自分の子供にそんなこと言うの凄いですね」


イラッとしたと思ったら言ってしまっていた。
零も健も え?という顔で俺を見ていた。

やってしまった、と思った。

俺は昔からそういうところがあった。
それが正しいと思っているのか、間違っていると思ったことにはすぐに口出しをしてしまう。
悪い癖だ。

以前電車の中でも、子供に理不尽に怒る親に対して言ってしまい口論になってしまったこともある。

気はそこまで強くないはずなのに、つい言ってしまう。
今もそうだ。怖いと思いながらも言ってしまった。

「どういう意味かな」
零の父親はこちらを振り返った。

「すみません!なんでもないです!」
健がそう言って俺の手を掴んだ。

「失礼しました!」
そのまま玄関へと行き、走って外に出た。

「お前何してんだよ」
「ごめん」

健は呆れたように俺を見る。
「言うつもりもなかったのに気付いたら言ってた」
「どう考えてもあの父親怒らせるのやばいだろ 零が怒られてたらどうすんだよ」

後先考えずに言ってしまった俺には、そこまで考えがなかった。
「どうしよ 謝った方がいいかな」
「今更だろ それに謝って黙る親じゃねえだろ」

確かにそうだ。
あの父親はなんとなくだがそんなタイプではないように見える。

少し怖かったが、明日の学校で零に聞くしかないと思った。
帰ってから夜にも連絡をしたが、返信はなかった。
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