奈落に落ちたら案の定裏ダンジョン直行ルートでした

猫蜜柑

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第一世界 2章 魔国編

21,太陽神の初恋

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 光と音の暴力から復帰した2人を連れて朝食を食べに食堂へ向かう。さすが魔王と太陽神、復活も早いな。



 そしてネロとアマテラスが朝食が出てくるまで話している。

「んー、そっかー。ネロちゃん良かったねー。これからよろしくね?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 なんて普通の挨拶から始まったはずが本人がいるって言うのに僕のここが好きだのこういうことがあっただのって話になってる。いくらほぼ不死みたいな吸血鬼でもそういうのはさすがに恥ずか死ぬぞ?

 すぐ後に朝食を持ってきてくれたからこの恥ずかしい会話をそれ以上聞かなくて済んだ。メイドさんに感謝しないと。


 と思ったらご飯が来ても変わらず恋バナみたいなことしてる。




「アマテラス様、どうしてマオさんを好きになったのか教えてください」

 あ、それは僕も気になる。アマテラスと会ったことがあるのは思い出したけど当時アマテラスと何してたのかは全然思い出せないし。

「んー、そうだねー。少し長くなるけどそれでいいなら話すよ?」

「はい構いません、お願いします」

「ん、それじゃ真緒くんと初めて会った時から話そうかな」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 私が真緒くんと初めて会ったのは真緒くんがまだ9歳くらいの時、私は神界でのお仕事が一段落ついて下界の夏休みって期間には遅れたけどお休みを貰えたから久しぶりに下界に降りてきた時だった。
 その時私は今より幼い姿で降りてきたんだよね。そして私を祀ってくれている神社の中で真緒くんが住んでいた国の規模で見た時に知名度がそこまで高くないところに降りた。そして境内から出て階段を下りた先にある公園に向かって歩いていった。

 そしてそこにいる今の私と外見年齢が同じくらいの子達の中に入って話しかけたりした。そこにいた子達とは初対面だったけどなんとか仲良くなることが出来、私は名前を聞かれたから夕陽って偽名を教えてその子たちと一緒に遊んだりした。

 そんな日が続く中一緒に遊んでた子からこの近くに引っ越してきた人がいるらしいことを聞いてその数日後引っ越してきた人の子どもが私たちが遊んでいた公園にやってきた。それとき私が真緒くんと初めて会った。


 それから真緒くんも私と同じで元からこの公園で遊んでいた子どもたちの輪に入って一緒に遊んだりするようになった。その頃は真緒くんと私はお互い他の所から来た同士でよく話をしたりするような関係にもなってた。

 でもその時はまだ真緒くんに他の男の子より多少好意はあっても恋愛対象としてなんて全然見ていなかったんだよね。




 私は学校に行ってないしそもそも戸籍も無いから真緒くん達には皆とは別の学校に行ってるって言っていた。真緒くんとはたまに学校で仲良くなった別の友達と遊ぶからってことで遊べないこともあったけど真緒くんと遊んだり話したりするのは今まで降りてきた時に話をしたりした人と比べても楽しいし会えないのは寂しい。この時私は真緒くんがいないと寂しいって思うくらい惹かれてるんだなって言うのがわかった。

 そしてある時街をぶらついてたら学校から帰る真緒くんと同じ学校の人たちに会って、いきなりその中の男の子に沢山話しかけられてどう逃げようかと思ってたら真緒くんの帰り道だったみたいで家に帰る真緒くんが歩いてるのが見えた。

 そして私がその男の子に遊びに誘われたけど私は遊ぶなら真緒くんと遊びたいから何度も断ったけどそれでもしつこく言ってくる。しかも逃げようと思っても手を掴まれている上に今の私は太陽神としての身体能力じゃなくて今の見た目と同じ、9歳くらいの人間の女の子並の身体能力しか持たないからその手を振りほどくことも出来ずどうしようかと思っていた。
 その時遠くに見えた真緒くんが私の方に歩いてきて、


「あれ、なんでゆうひがこんな所にいるの?」

「あっ真緒くん……っ!」

 真緒くんが私の腕を掴んでる男の子と何か話してる。相手の男の子が真緒くんになにか言ってるみたいだけど私にはよく聞こえない。2人とも小声で言い争ってるから内容が上手く聞き取れない。



「あ……危ないっ!?」

 真緒くんと言い争ってた男の子が終わらない話に痺れを切らしたのか真緒くんに手を出した。同い年の子ども同士とはいえ男の子の方が体が大きいし真緒くんは突然殴りかかられたせいもあって受身もとれていなかったせいで倒れてしまった。

そして真緒くんを殴った男の子は予想外の結果に狼狽えて逃げるように走ってどこかへ行ってしまった。

 あんな男の子のことなんて今はどうでもいい、それよりも真緒くんの怪我の方が心配だ。

「真緒くんっ!大丈夫?!」

 見たところ外傷は無いように見えるけど今の私には他に見えない傷がないかなんてわからない。家まで送って行こうにも真緒くんの家の場所がわからない。この間遊んだ時に真緒くんに家がどこか聞いていれば……

「あぁ……いてて……」

 
「ッ!?真緒くん!大丈夫?怪我は無い?私が誰かわかる?」

「ん……あぁ。わかるよ」

 良かった……倒れはしたものの背中のランドセルがクッションになったおかげで頭を打たないで済んだみたい。

「それにしてもゆうひが怪我とかしてないみたいでよかったよ」

 え?殴られたのは真緒くんなのになんで私のこと心配してくれるの?私がこっちに来てなければ真緒くんが殴られることもなかったのに。

私はそれがわからなかった。





 そして真緒くんを殴ったあの男の子はあの時周りにいた真緒くんのことを知る子が真緒くんがあの男の子に殴られたことを学校で先生に言ったことでその子は学校での立場が悪くなり最終的に他の学校へと転校したらしい。

 あのあと真緒くんが殴られたことを聞いた真緒くんの親によって病院に連れていかれたけど特に大きな怪我はなかったみたい。
 そしてあの時からずっと私は最初に降り立った神社で1人過ごしていた。

 その時は真緒くんに会えないのは寂しいけどこの間みたいに私が原因で真緒くんが怪我するよりはずっといいと思っていた。

 そして10月に入り神在月の集会と休暇の終わりが近づいてきたからそろそろ下界での色々な事の後処理をして神界に戻らないといけないと思っていた時、階段の方から誰かの声が聞こえた気がした。
 そして声の主が気になって聞こえた方へ向かうとそこに居たのは

「真緒……くん……?え、なんで真緒くんがここにいるの?私誰にもここの事言ってないよね??」

 せっかく誰にも何も言わずに帰ろうと思ってたのに真緒くんが来たらそんな気持ちも揺らいじゃう。

「はあぁぁぁ……ようやく見つけた」


「みんなゆうひがどこに行ったのかわからないって言うから探すのに時間かかったけど見つかってよかった……」

 ん……ッ!今私も人の子と恋して下界に降りた他の神の下界に降りようと思った時の気持ちがわかったかも……

「真緒くん……ごめんなさい。私もうあなたとは会えないの」

「えっ……そうなんだ……もしかして引越し?」

 引越しとは違うけど……でも説明するのに引越しは分かりやすいね。

「うん、引越しだよ。だから真緒くんや皆とはもう会えないんだ」

「そんなに遠いの?本当にもう二度と会えない?」

「うん、少なくとも真緒くんがこの国にいる間は会えないよ」

 この日本は私含めたこの国で八百万の神って言われてる神々が担当だからね……基本的に自分達が担当しているところの人間には干渉しては行けないってルールもあるし。
 外国は私たちと違う神々が担当しているから一応ルールにある「自分達が担当しているところの人間には干渉しては行けない」ってルールには該当しない。

「そうなんだ……わかった。・・・・・・それじゃあ僕が大きくなったらゆうひを探しに行くよ!」

 え……っ!?

 知らないうちに気になってた男の子にそんなこと言われて嬉しくないわけがないよ。だけど私がいるのは神界でお仕事もあるから今みたいに降りてこれるのはどれだけ先になるか分からないし……

 でも私だって会えるならまた会いたいよ。

「それじゃあ私もまたここに戻ってきたら真緒くんのこと探すよ。

だからこれ、私がもう片方持ってるから次にあった時にこれを見せてくれれば真緒くんってすぐわかるから」

 天界に行った時に買ったイヤリング、それの片方を真緒くんに。

「うん、わかった。大事に持っとくよ」


 それにしても今夜かぁ……でも最後に真緒くんに会えてよかった。真緒くんにはあぁ言ったけど下界に降りた神が神界に戻ると神と関係がある人の記憶はだんだんぼやけていくから望み薄かな。
 だから私はあの子人生を終えて展開に来るまでその人生を神界から見守っていよう。

 だけどもう会えないんだから最後に少しだけわがままにさせてもらうよ。

「ねぇ、真緒くんはいつまでに家に帰らないといけないの?」

「んー、5時半がギリギリかな。それを超えたら確実に怒られる」

 5時半かぁ……今は3時をすぎあたりだから真緒くんの門限までだいたい2時間ちょっと時間はあるけどここから家までどれくらいの距離があるか分からないし実質2時間くらいかな?

「それじゃあ最後に色々話そうよ。私明日にはもう居なくなるからさ」

「うん、わかった。それじゃあ僕はゆうひがいつも遊んでた来なくなってから今日まであったことを話そうかな」

 そう言って真緒くんが色々な話をしてくれた。幼馴染の男の子のこと、最近仲良くなった少し変わった子のこととか色々。

 そうして真緒くんから話を聞いたり他愛のない雑談のようなことをしていたりしたらいつの間にかもう5時前になっていた。

「真緒くん、またね」

 真緒くんが生きてる間に会える可能性は限りなく低いけどそれでも「またね」って言えば会えるような気がするから。

「うん、ゆうひもまたね」

 そう言って階段の方に歩いていった。






「秋の田の、穂の上らふ朝がすみ、何方いづへの方にわが恋ひやまむ」

 私のこの気持ちは真緒くんと再会する時まで絶対に変わらない。だから再開した時に伝えるんだ。




 私がふと思い出したこの詩を呟いた時真緒くんがこっちを振り向いたように見えたけど私はその時既に境内から姿を神界に移していたからそれが最後になった。



 あなたの人生にどうか幸多からんことを。



 神界に帰ったら妹たちにも話をしよう。私が神として役割を果たす仲初めて恋した人の子のことを。






 それから私が神界に帰ったことで真緒くん含めたかつて下界で関わった人達の記憶から私のことは朧気になっていってほとんどの人からは私がその人達の輪の中にいたことも忘れている。
 微かに覚えている人ま誰か名も知らない女の子が一時期輪の中にいた程度の記憶しかない。


 真緒くんは無事小学校を卒業して中学に入り中学でも仲のいい友達が沢山できたみたい。そして高校は真緒くんといる所をかつてみた幼なじみの男の子と同じところに通うみたい。小学校の時仲良くなった少し変わった子って真緒くんから聞いた子とは違う高校に通ってるみたいだった。


 しかし高校に入学して何日か経った頃突如として真緒くんのいる教室に現れた魔法陣によって別世界に飛ばされた。私はそれを下界の異変として察知した瞬間いてもいられなくなって真緒くんを追って異界への穴に飛び込んだ。


 そして異界で色々と濃い時間を過ごしてダンジョンで命の危機に瀕している真緒くんを見つけたことでようやく約束通り真緒くんに会うことができた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「これが私と真緒くんの元いた世界での話。私自身まさか自分が好きになる相手が人の子とは思ってなかったよ」


 アマテラスの話が終わったあたりで当時のことを完全に思い出した。関わりがあった神が神界に戻ると記憶が朧気になるって言ってたけど本神からその時のことを聞いたらそれを思い出せるのかな?

 それと話を聞いて聞きたいことがあるんだ、

「アマテラス、話に出てきた頃のことは思い出したんだけど今後ゆうひって呼んだ方がいい? 」

「ん?私はどっちでもいいよ。真緒くんが呼びたい方で呼んで」

 んー、でも地球に帰るならアマテラスよりゆうひ呼びの方がいいよな……

「ん、じゃあゆうひって呼ぶことにする。アマテラス呼びだったら地球に帰ってゆうひって呼ぶことに違和感があるかもしれないし」



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