もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第二話 袖なしニットとスーツと双峰のなんか 3

　白ニットのトップスに黒のアクティブロングと、仕事帰りに多少の来客を意識した、ゆとりのあるファッション装備。

　そんな奈津美さんの自宅は大人女子らしくも、二十代中盤なりにどこかカワイイ感じがして、萌香も目許がキラキラしている。

　料理も上手に幅も広く家庭的でありながら上品で、これまで口にしたどの料理も、食材の旨味を引き出した逸品でしかない。

　大いに有り難く栄養素の補給もできるから、利益が出始めるまで粘ることができたのだから、やはり感謝しか無い事も補足する。

　食事が済むと食器をキッチンに運んで、自宅で済ませたなら当然にして洗うが、奈津美さんは既に洗い始めていた。

　この場は任せるとして萌香と揃って、オレの自宅に戻る事にしたが、何と云っても料理の旨味と奈津美宅の感覚が未だ遺っている。

　部屋でゆっくりし始めると動くのも面倒でも、今は萌香もいて生活循環がバグりかけながら、これからどうするかも気になる。

　今は保護でいいかもしれないが、不法侵入に当たるかもしれないし家出中かも分からんが、何時までもおいておくわけにはいかん。

　それにしても、『もうひとりのオレ』とはどういう事か、事実なのか荒手のジョークか、どちらにしても対処に困る。

　あとは『もうひとりのオレ』ということも、本日丸一日かけて不明瞭だが、ただオレ自身が納得出来ないだけなのか。

　このオレ『城江秀一』が他にもいて、それが美少女とあっては非現実極まるアンリアルにして、益々丸呑みにしていいことなのか。

　それに萌香はともかくとしても、あの高校在籍当時や最近と世話になっている奈津美さんまでもが、『もうひとりのオレ』らしい。

　それから、萌香の保護をどうするべきか、未だまとまらないのは俺が優柔不断というだけではなく、かなり繊細なテーマでもある。

　『美少女をオレの自宅に住まわせる』事に、通常なら全くの他人と共同生活になるのは、よほどの事情があるか一時的なモノ。

　家出も好き勝手やる親やキョウダイに、『権力や狂気を振りかざせば支配できる』と、勘違いして精神を破壊される場合。

　企業団体からすればパワーハラスメントにあたる、極めて乱暴な教育環境は撤廃、若しくは基準法等で裁かれる等のリスクがある。

　社会環境でマジィ事を家庭環境なら赦されるのか、または明治政府の法的整備以来の、四民平等制は忘れ去られているのか。

　また、社会環境や労働環境でも、先天的若しくは高次に能力的な事情があっても、社会的弱者を更に弱体化を受けるべきなのか。

　運良く俺は親ガチャ的にも幸運で、それなりの高物件な奈津美さんと同じマンションで、主にライターとして生活出来ている。

　萌香に如何な事情が有ろうと無かろうと、俺の自宅に現れたなら『実家でも生活が困難』か、奈津美さんに相談してみるか。