もう一人のオレがみんな美少女で家に住みついてますが何か

第一話 拙分の春に舞い込む天使 4

「へーっ、小説書いてるんだー。」

　ノートパソコンを起動したままで、原稿の文書ファイルまで開き放したままだったので、読まれて仕舞ってはバツが悪い。

「えっ、コレ読まれてないの……？」

　まだ注目タイトルにさえなっていない現状を、問題なかろうと話してみたところ、眼前の美少女は少し思考状態に入る。

　そして、なにか閃いたかと思うと方に手を廻して、耳許にフワリと甘い息を吹きかけるように、進撃の美少女がささやいた。

「ネタになってあげよっか……」

　「あげよっか……」ではないと謂ってもしかたなく、何を評価して何を見据えたのか、売れない作家に期待でもしているのか。

　甘えても仕方ない上に給料も払えない事は、もうすでに話した通りの事実で、ステータスにもならない事すら語るまでもない。

「チュ……、これが報酬……。ふ……っ、んっ、ちゅっ……。」

　少し絡まって一言晒すと腰を入れて、びるびるっと軽くスッキリすると、これでもかとやはり舌を絡めては軽くスッキリする。

「ユメみたいなミライ……、いこっ……！」

　「ねっ」ってやってもっともっとと、フニフニしたやつをかすらせたり圧しつけて、艶の利いた眼力と舌で絡みついてくる。

　それがオレにはなにか必至な容子にも見えて、手も足も出せないままにそのまま、どうすることも出来なかった。

　ちらりと横目に外を見ると日が暮れ始めて、小寒くなるような時間かと思っても、緑の天使はまだまた絡まって喰らいつく。

「ふ……、んっ……、キモチイ……、んっ、ちゅっ！んっ、んんっ……！」

　作家として少しでも予算を獲得して、大成したいと願ってもインプレッションがゼロ、引き寄せるタイトルも中々思いつかない。

　系統的にもまだ方向性にまとまりもない、それでいてサイトのアルゴリズムにも、全くと謂えるほど評価されていないだろう。

　しかし、タイトルやキーワード選定がうまく行っても、テンプレでフォーメーションを組んでも、内容だって拘りたいのか。

　だったらもうすこしくらいはネジを緩めて、絡みつく舌に多少甘えてみてもいいのか、ただ「NO!」といえないだけか。

　ボンクラに大学を卒業してから『無色のなにか』で、オレを相手にしても無駄に終わりそうだが、なぜか美少女に世話になる。

　この矛盾がますます意味不明ながらどうしょうもない、状況と現状も併せ並べて、何かの策とするのはどんな酔狂だろうか。

　それに今どきの女子が資金も贅沢もなしになしに、毎日を済ませることに抵抗は、忖度を覚えたりもしないのだろうか。

　第一にして、紛いなりにも小説やイラストレーターとしての、なんちゃって作業もある上に、利益も出さなければならない。

　日が暮れるどころか途方に暮れては、オケラの和尚や何処かの下人の如く、逡巡しては公園の妖精にでもなるのだろうか。

　そうしているとインターホンがなるので、オレはほぼ毎日来客が来ることを忘れて、仙人に達観しかけるとはなんとお恥ずかしい。

　それはお隣のお姉さんで仕事終わりなのに、少し多めに夕飯を作っては、結構な家庭料理を分けて戴ける貴重な大先生でもある。

　そんな御方は俺達の様を見ても動じないどころか、面白がりながらいつものように、鍋ごと台所に運んでは目許が煌めいていた。