Prisoner

たける

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第13章

3.

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その夜、看護婦の許可を得て、ハリスはゲイナーの病室に泊まる事になった。
ローレンにはどこまで話すべきか。それを話し合う為だ。

「全部話さないと、分からないんじゃない?」

地下の売店で買ってきたおにぎりを食べながら、ハリスはそう言った。

「私と彼女の関係もか?」

これはまだ、明るみにされたくない。

「だって、ただひと口にカルロスを逮捕してくれって言ってもさ、難しいじゃん。カルロスの罪を洗ってたら、クレイズへの執着だって、ゲイナーへの暴力だって話さないと」

最後のかけらを口に放り込み、ハリスはそう指摘した。確かにハリスの言う通りだ。クレイズを守る為には、まだ明るみにしたくない、などと言ってもいられないだろう。

「無理にこっちから話す必要はないだろうけど、聞かれたら正直に答えないと」

そうハリスが言った時、携帯の着信音が鳴った。慌ててハリスが携帯に出ると、チラリとゲイナーを見てきた。

「リック。どうしたの?」

相手はローレンか。ゲイナーは思わず身構えた。

「うん。うん。あ、朝9時ね。分かった、迎えに行こうか?そう。じゃあ、明日ね」

そう言って携帯を切ると、ハリスはゲイナーの視線に気付いたらしく、軽く肩をすくめる仕草した。

「リック、明日の朝9時にこっちにつくみたい」
「そうか。そりゃ、早いな」
「調度、向こうで手掛けてた事件も解決したらしくて、すぐに電車に飛び乗ってくれたらしいんだ」

そう言うと、ハリスはペットボトルの水を飲んだ。

「で、彼への説明はゲイナーがする?それとも、俺がしようか?」

そう言ってくるハリスに、ゲイナーは少し考えた。だが、何も迷う事はない。

「いや、私からしよう。当事者だからな」

ゲイナーが言ったすぐ後に、扉がノックされた。腕時計を見ると時刻は10時すぎ。とうに消灯時間はすぎている。

「誰だ?」

ゲイナーが声をかけると、ドーズです、と返事が返ってきた。

「夜分にすみません」

そう言って入って来たドーズは、疲れてはいるものの、俄かに明るい表情をしていた。

「意識が、戻ったのか?」
「はい。ついさっき。その後、少しだけ話しをして、今は眠ってます」

ベッドへ近寄り、ハリスの肩に手を軽く触れさせると、ドーズはベッドの縁に腰を下ろした。

「それは良かった……!で、容態はどうだ?」
「今は安定してます。ただ」

そこでドーズは言葉を切り、言い難そうに俯いた。

「どうかしたのか?」

ゲイナーが尋ねると、ドーズは悲しみに顔を歪ませた。

「子供が……」

そう呟き、ドーズは目頭を押さえた。

「なんて……事だ!」

ハリスも険しい顔をしている。

「彼女に詳しい話しは聞いてないんです。明日にしようって。だから詳細は分からないんですが、刺される前に、子供はいなくなってたみたいなんです」

ゲイナーは言葉がなかった。刺される前に?一体いつ?そんな疑問が頭を回る。

「クレイズを刺したのは、カルロスの妻、ダリアです。腹部を30回以上も刺していたそうです」

ドーズの悲しみは到底計り知れない。ゲイナーも辛くて、倒れてしまいそうになった。

「ダリアを傷害罪で訴えるつもりです。カルロスが根回しをしようが、関係ない!彼女を傷つけた罪を、償ってもらわないと……!」

そう言って顔を上げたドーズの目は、怒りに燃えていた。

「その事なんだけどさ」

ハリスが言った。ドーズがそちらに視線を向ける。

「ゲイナーとも話して決めたんだけど、第三者を介入させる事にしたよ」
「なん……で?」

ドーズは戸惑っているようだった。

「第三者って言っても、俺の友人の刑事だ。とても優秀で、きっと何とかしてくれるさ」

そう言って笑うと、ハリスはドーズを見遣った。難しい顔をしていたドーズだったが、そんなハリスにつられるように笑うと、承諾した。と、言うよりも、救いを求めた。

「じゃあ、クレイズが目を覚ましたらこの事を話しておくよ」

ドーズは立ち上がると、ゲイナー達に軽く手を上げて挨拶し、病室を出て行った。

「大分参ってるね」

そう言うと、ハリスは再び水を飲んだ。




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