元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

604 やっと入れた!

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いくつもの扉と階段を進む。リクトルスの率いる一隊は上へとひたすら上っていった。そして、エリスリリアのいるテンキが率いる一隊は、下へと下っている。

「これ、なんかさあ、ボス戦だけできる迷宮みたいな?」
「そう考えると楽だよな~」
「戦いやすい部屋で戦えるしなあ」
「狭っまい、通路で集団戦なんてこともないのはいいよな~」

迷宮は、ボス部屋まで行く通路で、散々戦うことになる。その合間に、次の階に行くための階段を探し、ボス部屋を探すのだ。その階層を一日中歩き回って見つけることもある。それを考えたら、ボス戦だけで邪魔者がいないのはかなりの時間短縮になり、体力などの消耗が少なくなるのは、冒険者達にすれば充分楽だった。

「デカブツばっかだけどなっ」
「あら。的が大きくなるから、私は楽よ?」
「お前は大雑把過ぎんだよ」
「投擲しっかり訓練しといてよかったよな~」
「それある! デカいのだとどうしても距離感取りづらいしなあ」

リクトルスに勧められた投擲スキル。ここに居る冒険者達は、誰もがこれをしっかりとスキルとして会得しており、スキルの熟練度もかなりのものだ。【極】は超えていた。

お陰で、大きなボスのような、手の届かない場所に頭などがあるものへの攻撃も、これで解決していた。普通ならば、決定的な一撃を入れられず、諦めることにもなるので、これだけでもかなり楽になっていた。それを冒険者達は実感しているようだ。

そうして、少し楽しんでいる様子の冒険者達とは違い、リクトルスは考え込んでいた。

「おかしいですね……」

その声を、こちらに回復役としてついて来た、人化したダンゴとパックンが拾う。

「何がおかしいです?」
「あ、でも~、アレだよ。主が、最後は同じ場所に出るって言ってたのに、まだ上ってるのは気になるよ?」

パックンも気付いていたようだ。

「それです! コウヤ君が言ったなら間違いないですし」
「確かにそうですね? 主様が間違えるとは思えないですし?」

リクトルスも、コウヤが言ったならと思っていた。

そこで、パックンとダンゴが何かに反応するように顔を同じ方向に向けて口を揃えた。

「主!」
「主様っ」
「コウヤ君?」
「「「「「え?」」」」」

そうして、視線が集まった場所に、コウヤが転移してきた。

「ふうっ。やっと入れた!」
「コウヤ君っ。大丈夫なんですか!? こんな所に転移なんてっ!」

リクトルスが駆け寄り、その肩に手を置く。これに顔を上げてコウヤは答えた。

「うん。かなり解析が出来たから。ふふっ、これでゼストパパの兵器も、想定通りこの惑星ほしに被害を出すことなく使えるよ!」
「……あ、その調整をするって言っていたね……」
「そう! だから、この中のこともちゃんと把握できたよ」
「それなら良いですが……」

コウヤは、やるべきことは出来たとご機嫌だ。

「それでねっ! もうすぐ合流できそうだから、手伝おうと思って!」
「そう……なのですか?」
「うん。ここ、空間が捻じ曲がっていて、こっちは上っていたけど、実は、ほぼ横に移動してるだけなんだよ」
「……なるほど」
「「「「「え~」」」」」

聞いていた冒険者達が、不満げな声を上げる。

「階段上ったのに?」
「え~、なんか損してるみたい」
「え? じゃあ、下に行ってるのも?」
「あ~、下行くのもな~」
「疲れるのは一緒ね」
「だな~」
「ってことは……」
「「「「「どっちも損したな~」」」」」

どこまでも軽い冒険者達だ。こんな大変なことになったのに、彼らは楽しんでいるようで、それがコウヤ達には救いだった。

「さてと。じゃあ、俺も参加ね! よろしく!」
「「「「「よろしく~」」」」」

もうすぐにエリスリリア達とも合流だ。











**********
読んでくださりありがとうございます◎


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