元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

549 まだ一つ目だよね?

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今回、迷宮に行った冒険者やエルフ、獣人族、それと急遽タリスも呼び、商業ギルドの統括、その補佐達も、城の会議室へ招集された。

「結果的には、市場は潤うのだろうが……確かに問題だな」

アビリス王は、そう言ってため息を吐いた。ジルファスも手を組んで難しい顔をしている。

タリスも苦笑いを浮かべていた。

「これ、一つの迷宮での戦利品だよね? まだ一つ目だよね? もうボク怖いんだけど……」

そして、商業ギルドの統括のウィルズは頭を抱えていた。

「ううっ……次から次へとっ……」

まだ居てくれて良かったとコウヤは思っているが、ウィルズとしては、さっさと逃げ帰るべきだったとこの時後悔していた。とはいえ、結局は本部に届けられ、頭を抱えることになっただろう。結局は同じだというのは分かるが納得できるかといえば感情的には無理だった。

そして、机の中央に置かれた紫色の、毒々しいキノコを見る。

「……本当に美味しいの? そもそも食べられるの? 見た目ヤバいから誰も手に取らないわよ……」
「「「確かに……」」」

アビリス王もジルファスも、タリスも頷いた。これに、すかさず獣人とエルフが反論する。

「間違いなく美味いんですよ!」
「俺の名前、このキノコが忘れられなかった親父が付けたくらいですからね!?」
「あ、お前そうだったの」
「いい加減な名前の付け方してんじゃねえって、何度喧嘩したか……っ」
「あ~」
「あー」
「けど、幻のキノコの名前だし」
「いやいや! あの群生地見たろっ。もはや幻じゃねえっ」
「あ~」
「あー、だな」

その様子を、アビリス王達も気を悪くする事なく、気の毒そうに見ていた。

そんな賑やかな会話が飛び交う中、コウヤが口を開いた。丁度、料理長がやって来たのだ。

「まあ、味は気になりますよね。そう言うと思いまして、料理長に焼いてもらいました」

これに、アビリス王が料理長の持っている皿に目を向ける。

「おおっ。そんなに美味いならば楽しみ……赤い?」

そこには、紫のキノコではなく、真っ赤なキノコがあった。

「火がきちんと通ると、赤色になって教えてくれるんですよ。生焼けが防げるんで、料理下手でも子どもでも安心です!」
「「「「確かに……」」」」

おれは良いねと頷き合う一同。見た目が更にヤバくなった事には目を瞑った。

大きな椎茸のような見た目。一つを縦に六等分してひと欠けずつ小さなお皿にデザート用のフォークと共に用意された。

「先ずは、何も付けず食べてみてください」

切った中も薄い赤色だった。それに目を奪われているアビリス王達。仕方がないので、コウヤが先に食べる。

「いただきますっ……ん~っ……っ、やっぱり美味し~っ」
「「「「っ……」」」」

幸せそうなコウヤの顔を見て、覚悟が決まったらしい。この時には、獣人やエルフ達、冒険者達にも配られており、こちらの方がアビリス王達よりも先に食べていた。

「美味っ!」
「ヤベエっ、もっと食べたい!」
「おいしすぎる……っ」
「これは……っ、これは戦争だわ……」
「戦いになるな……」
「じいちゃん達に食べたって言ったら……殺される……っ」

ブルブルと震え出した。そんな彼らを視線から外し、アビリス王達もついにそれを口にした。

「っ……お、美味しい……っ」
「すごい旨味が……っ、これは、本当に焼いただけ?」
「え~、ヤバいよ。コレ……これだけじゃ足りないよっ」
「これは……っ、売れるわ……っ、一度じゃ納得できないっ、次を求めたくなる中毒性っ……この味さえ知れば、いくらでも出すわね……」

ウィルズがブツブツと呟いているが、誰も気にしない。気にできないほど、キノコの味に夢中だった。

「じゃあ、次は、調味料を付けて……」
「「「「「食べる!!」」」」」

完全に虜になったようだ。








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次回、一度お休みさせていただきます。
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