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第十三章
532 今日はすげえなっ!
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あれほど歩くのにも文句ばかり言っていたというのに、聖女達は遠くに見える城へ向かうと言って歩き出す。
それを見て、これ以上誰かに迷惑をかけさせるわけにはいかないと思った聖騎士達は慌てた。
「っ、ダメだっ……」
そんな騎士達を、住民達は肩を叩いて労わるように笑って引き留める。
「ああ、大丈夫だよ。もうきっと神官様が伝えているだろう」
「はははっ。今日はコウヤ様が城に居るから、あんなのは城に絶対に入れねえよ」
「心配しなくていいからね。ほら、もう少し落ち着いたら、見に行くかい? きっと面白い事になるよ」
「え? え?」
この数分で、全てを悟り、どうなるか予想できているらしい住民達に、騎士達は逆に動揺する。
それが顔に出ていたことで、住民達は更に笑った。
「あははっ。なんだい、その顔っ。大丈夫だって。たま~に、ファムリア様の……コウヤ様の祖母や祖父だって人が孫に会わせろって来たり、以前世話になって、そのお礼を息子さんにとか言ってやって来る奴が居たりねえ」
「……」
「……それ、どうなるんですか……」
騎士達が不安げに、けれど少し期待するように話の先を促す。
これに、住民達は自慢げに答えた。
「あれは……公開尋問と言うのかねえ」
「それが合ってるだろうさ。ここで聞いてやるよって門前でな」
「淡々と追い詰めていくんだよ。それで? だから? って」
「相手が、護衛とかで武力に訴えだしたら、魔法師がすかさず結界を張って、騎士達と戦える場を作ってしまうしね」
「……」
最近は本当に慣れたもので、それらしい者がやって来たと見れば、すぐに伝令が走り、魔法師や騎士達が門前に並ぶという。
「騎士さん達的には、あれは突発的に開催される模擬戦みたいな?」
「だなあ。きっちり闘争心を折る所までやるようだが」
「なんか、この前は時間計って、すごい盛り上がってたけど」
「あ~……アレは、賭けしてたんだよ。何分で降参させられるかって。分単位で」
「えっ、それ参加したいっ」
そんな楽しい催しがあるのかと、住民達は盛り上がり始める。
「……」
聖騎士達は呆然とした。お陰で気持ちも落ち着いている。
「あっ。落ち着いた? なら行こうか」
「良いところ見逃しちまうからな」
「あんたら、不満も溜まってたんだろう? あの女達がぐぬぐぬ言う所見てやろうぜ~」
「ふはっ。ぐぬぐぬってっ、あははっ。言いそうっ」
「見るからに言い訳とかつらつら言いそうだもんなあ」
聖騎士達を立ち上がらせながら、住民達も移動を始めた。
どうやら、既に多くの住民達にまで話が回っているらしい。
少し進めば、城への人の流れができていた。
「……この人達は……」
「みんな、城へ?」
聖騎士達も唖然とする。だが、歩みは止まらない。
「いやあ、ひと月振りか?」
「この前は、どっかの国の貴族さんだったよなあ。あ~、世話になったからって、孫を結婚相手にとかススメに来たやつ」
「世話になったなら、世話される奴連れて来てはいかんだろうになあ」
「あははっ。そうそう。その辺の女でもコウヤ様に気後れするのに、な~んもできん貴族の女はダメだろ」
「それそれっ」
「「「あははははっ」」」
「「「「「……」」」」」
こういうことが度々あったというのは良く分かった。それも、住民達にとっては見せ物のような感覚らしい。
そして、王城前には、見事な人垣ができていた。
「おおっ!! 今日はすげえなっ!」
「え? あれ、あれは! 宮廷料理人じゃないか!?」
「王妃様達が居る!」
「侍女さん達まで!?」
「「「「「……」」」」」
そこだけ聞けば、聖女達が総出でお迎えされているように思えるが、当然、そうではない。しかし、聖女達にはそれがお出迎えと映ったらしい。
「あら。分かってるじゃない」
「これが私たちへの正しい対応よね」
「出迎えありがとう」
シンと静まり返った。
数秒の後、誰もがそれを口にする。
「「「「「バカじゃん」」」」」
「「「え?」」」
まさか、自分たちに向けられた言葉とは思えなかったらしい。聖女達が呆然とする中、次期国王であるジルファスが前に進み出たのを合図に、周りは再び口を閉じる。
「要件を聞こう」
堂々とした声が響いた。問答無用で追い返しても良いが、一応はという配慮だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、11日です!
それを見て、これ以上誰かに迷惑をかけさせるわけにはいかないと思った聖騎士達は慌てた。
「っ、ダメだっ……」
そんな騎士達を、住民達は肩を叩いて労わるように笑って引き留める。
「ああ、大丈夫だよ。もうきっと神官様が伝えているだろう」
「はははっ。今日はコウヤ様が城に居るから、あんなのは城に絶対に入れねえよ」
「心配しなくていいからね。ほら、もう少し落ち着いたら、見に行くかい? きっと面白い事になるよ」
「え? え?」
この数分で、全てを悟り、どうなるか予想できているらしい住民達に、騎士達は逆に動揺する。
それが顔に出ていたことで、住民達は更に笑った。
「あははっ。なんだい、その顔っ。大丈夫だって。たま~に、ファムリア様の……コウヤ様の祖母や祖父だって人が孫に会わせろって来たり、以前世話になって、そのお礼を息子さんにとか言ってやって来る奴が居たりねえ」
「……」
「……それ、どうなるんですか……」
騎士達が不安げに、けれど少し期待するように話の先を促す。
これに、住民達は自慢げに答えた。
「あれは……公開尋問と言うのかねえ」
「それが合ってるだろうさ。ここで聞いてやるよって門前でな」
「淡々と追い詰めていくんだよ。それで? だから? って」
「相手が、護衛とかで武力に訴えだしたら、魔法師がすかさず結界を張って、騎士達と戦える場を作ってしまうしね」
「……」
最近は本当に慣れたもので、それらしい者がやって来たと見れば、すぐに伝令が走り、魔法師や騎士達が門前に並ぶという。
「騎士さん達的には、あれは突発的に開催される模擬戦みたいな?」
「だなあ。きっちり闘争心を折る所までやるようだが」
「なんか、この前は時間計って、すごい盛り上がってたけど」
「あ~……アレは、賭けしてたんだよ。何分で降参させられるかって。分単位で」
「えっ、それ参加したいっ」
そんな楽しい催しがあるのかと、住民達は盛り上がり始める。
「……」
聖騎士達は呆然とした。お陰で気持ちも落ち着いている。
「あっ。落ち着いた? なら行こうか」
「良いところ見逃しちまうからな」
「あんたら、不満も溜まってたんだろう? あの女達がぐぬぐぬ言う所見てやろうぜ~」
「ふはっ。ぐぬぐぬってっ、あははっ。言いそうっ」
「見るからに言い訳とかつらつら言いそうだもんなあ」
聖騎士達を立ち上がらせながら、住民達も移動を始めた。
どうやら、既に多くの住民達にまで話が回っているらしい。
少し進めば、城への人の流れができていた。
「……この人達は……」
「みんな、城へ?」
聖騎士達も唖然とする。だが、歩みは止まらない。
「いやあ、ひと月振りか?」
「この前は、どっかの国の貴族さんだったよなあ。あ~、世話になったからって、孫を結婚相手にとかススメに来たやつ」
「世話になったなら、世話される奴連れて来てはいかんだろうになあ」
「あははっ。そうそう。その辺の女でもコウヤ様に気後れするのに、な~んもできん貴族の女はダメだろ」
「それそれっ」
「「「あははははっ」」」
「「「「「……」」」」」
こういうことが度々あったというのは良く分かった。それも、住民達にとっては見せ物のような感覚らしい。
そして、王城前には、見事な人垣ができていた。
「おおっ!! 今日はすげえなっ!」
「え? あれ、あれは! 宮廷料理人じゃないか!?」
「王妃様達が居る!」
「侍女さん達まで!?」
「「「「「……」」」」」
そこだけ聞けば、聖女達が総出でお迎えされているように思えるが、当然、そうではない。しかし、聖女達にはそれがお出迎えと映ったらしい。
「あら。分かってるじゃない」
「これが私たちへの正しい対応よね」
「出迎えありがとう」
シンと静まり返った。
数秒の後、誰もがそれを口にする。
「「「「「バカじゃん」」」」」
「「「え?」」」
まさか、自分たちに向けられた言葉とは思えなかったらしい。聖女達が呆然とする中、次期国王であるジルファスが前に進み出たのを合図に、周りは再び口を閉じる。
「要件を聞こう」
堂々とした声が響いた。問答無用で追い返しても良いが、一応はという配慮だった。
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