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第十二章
483 クリーンな剣
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ニールは騎士ではなく、侍従としてコウヤの側に居ることになるが、剣の腕は間違いなく一流だ。
ブランナはそんなニールや神官達に鍛えられたことで、堂々と聖騎士を名乗れるほどの実力を付けていた。リクトルスにも稽古を付けてもらっていた彼は、神も認める聖騎士と言えるだろう。
そして、ビジェ。冒険者として主に活動していた彼は、コウヤが課した課題を堅実にこなしてきた。それは、コウヤが知るスキル習得法でもあった。コウヤはビジェでスキル取得の検証をしていたのだ。よって、ユースールでも実力ある冒険者として受け入れられていた。
もちろん、彼もリクトルスの手解きを受けているため、更に強化されていた。
その三人が、王宮、教会、冒険者ギルドという三つの場所でのコウヤの守りの要だ。だから、試験官として前に立つのは当然だろう。
とはいえ、疑問もある。それを口にしたのは、ニールが抜けたため、側に来たフレスタとディスタだ。
「侍従長は……普段も剣をお持ちになるつもりでしょうか……」
「お強いのは、知っていますし、私たちも稽古を付けてもらいましたので分かりますが……」
騎士ではなく侍従なのだ。剣を携帯しているわけにはいかないだろう。コウヤも気になっていた。
「そうだよね……いくら神剣でもね……」
「「「「「しんけん?」」」」」
「うん。あ、そういえば、話してないかな?」
「「はい……」」
フレスタとディスタは首を傾げ、ジルファス、アビリス王、ミラルファはうんうんと頷かれた。
「そっか……ニールも、きちんとみんなの前で受け取りたいって言ってたっけ……」
主から剣を受け取るというのは、とても特別なことだ。騎士達が憧れることでもある。忠誠を、対外的にもはっきりと示すことができるというのも大きな意味を持つ。
「神剣って、神の剣って意味なんだけど、人は斬れないんだ。代わりに気力とか精神力を吸い取って、結果的には動けなくするっていう、とってもクリーンな剣でね」
「クリーンな剣……ま、まあ、そうか?」
ジルファスが微妙な顔をして呟くが、確かに周りも血で汚れないしクリーンと言えるかと時間をかけてからゆっくりと一つ頷いた。
そこに、コウヤは続ける。
「数日、斬られた人達はダル過ぎて辛いと思う。確か……なんだっけ……あっ、斬られた所が、筋肉痛の酷いのが続く感じ? もう、どうにもならないって泣けてくるみたい」
「「「「「……」」」」」
聞いていた壁際に控える騎士達も宙に視線を投げてあれかと、その感覚を思い出す。
「尋問もやりやすいよ。痛み止めの湿布貼らないと、寝れなくなるし、どうにもならないって感じが、子どもみたいに癇癪起こすっていうか……誰かどうにかしてって泣くようになるから」
「「「「「……」」」」」
その中で、ルディエも腕を組み、片手で顎を撫でながら考える。
「それ、暗殺者とかにも有効かも……」
「やっぱり? アレは痛みに慣れた人でも辛いよね。痛いってだけじゃない感じ」
「うん……ちょっと今度斬られてみる」
「あ、うん。大丈夫。薬はあるし、気力とか精神力も、薬を飲んで一日ちゃんと寝れば治るから。寝れないから長く続くんだよね~」
「なら、体験してみる」
「分かった」
「「「「「っ……」」」」」
ルディエが辛いと言っていたそれを体験してみたいと笑うのを見て、騎士達はないわと首を震えるように横に細かく振る。
ジルファスやミラルファ達は、目を丸くしながら、冗談だよねとルディエの顔を見る。しかし、その顔は自信満々に輝くようにも見えるものだった。本気だと分かり、信じられないとゆっくりと目を逸らしていた。
ルディエは、彼らが考えるよりも好奇心旺盛で、無茶もする性格だった。
アビリス王は動揺しながらも、ニール達を改めて見た。今は、受験者達にアルキスがニール達が各場所での代表だということなどを話している。
そんな中で、ニール、ブランナ、ビジェの武器を改めて確認したようだ。そして、首を傾げる。
「コウヤ……その神剣? というのは、ニールにだけ与えたのか?」
「あ、いえ。ブランナとビジェにもサブとして渡してあります……あっ、今回はそっちでやるみたいですね」
「……アルキスはその剣のこと……」
「ん? あ~……教えたかもしれません」
「……なるほど……」
「「「「「……」」」」」
誰もが納得顔を見せる。
ルディエも確信した。
「なら、それも体験させる気なんだ」
「え? あ、そっか……薬用意しておいた方がいい?」
「要らないよ。それに今朝、パックンがゲンさんの所に行って、何か大量に受け取ったって報告があるから多分……」
「それだね。アルキス様、用意がいいなあ」
「「「「「……」」」」」
用意がどうのという問題ではないのだが、コウヤの評価は高い。例え今、笑いを堪えきれないような顔をアルキスがしていても変わらない。
そして、ルディエが思い至った。
「そうか……ただの対戦じゃなく、パックンのパックンや、テンキの電撃を体験させる……ダンゴは確か、幻惑魔法が得意だし……リクトルス様は、その調整役……か」
「うわ~、それは、完璧に拷問にも耐えられるようになりそうだね」
「それが狙いみたいだ」
「すごい事考えるなあ、アルキス様」
「「「「「……っ」」」」」
感心するコウヤとルディエに、周りは動揺を隠せないようだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
ブランナはそんなニールや神官達に鍛えられたことで、堂々と聖騎士を名乗れるほどの実力を付けていた。リクトルスにも稽古を付けてもらっていた彼は、神も認める聖騎士と言えるだろう。
そして、ビジェ。冒険者として主に活動していた彼は、コウヤが課した課題を堅実にこなしてきた。それは、コウヤが知るスキル習得法でもあった。コウヤはビジェでスキル取得の検証をしていたのだ。よって、ユースールでも実力ある冒険者として受け入れられていた。
もちろん、彼もリクトルスの手解きを受けているため、更に強化されていた。
その三人が、王宮、教会、冒険者ギルドという三つの場所でのコウヤの守りの要だ。だから、試験官として前に立つのは当然だろう。
とはいえ、疑問もある。それを口にしたのは、ニールが抜けたため、側に来たフレスタとディスタだ。
「侍従長は……普段も剣をお持ちになるつもりでしょうか……」
「お強いのは、知っていますし、私たちも稽古を付けてもらいましたので分かりますが……」
騎士ではなく侍従なのだ。剣を携帯しているわけにはいかないだろう。コウヤも気になっていた。
「そうだよね……いくら神剣でもね……」
「「「「「しんけん?」」」」」
「うん。あ、そういえば、話してないかな?」
「「はい……」」
フレスタとディスタは首を傾げ、ジルファス、アビリス王、ミラルファはうんうんと頷かれた。
「そっか……ニールも、きちんとみんなの前で受け取りたいって言ってたっけ……」
主から剣を受け取るというのは、とても特別なことだ。騎士達が憧れることでもある。忠誠を、対外的にもはっきりと示すことができるというのも大きな意味を持つ。
「神剣って、神の剣って意味なんだけど、人は斬れないんだ。代わりに気力とか精神力を吸い取って、結果的には動けなくするっていう、とってもクリーンな剣でね」
「クリーンな剣……ま、まあ、そうか?」
ジルファスが微妙な顔をして呟くが、確かに周りも血で汚れないしクリーンと言えるかと時間をかけてからゆっくりと一つ頷いた。
そこに、コウヤは続ける。
「数日、斬られた人達はダル過ぎて辛いと思う。確か……なんだっけ……あっ、斬られた所が、筋肉痛の酷いのが続く感じ? もう、どうにもならないって泣けてくるみたい」
「「「「「……」」」」」
聞いていた壁際に控える騎士達も宙に視線を投げてあれかと、その感覚を思い出す。
「尋問もやりやすいよ。痛み止めの湿布貼らないと、寝れなくなるし、どうにもならないって感じが、子どもみたいに癇癪起こすっていうか……誰かどうにかしてって泣くようになるから」
「「「「「……」」」」」
その中で、ルディエも腕を組み、片手で顎を撫でながら考える。
「それ、暗殺者とかにも有効かも……」
「やっぱり? アレは痛みに慣れた人でも辛いよね。痛いってだけじゃない感じ」
「うん……ちょっと今度斬られてみる」
「あ、うん。大丈夫。薬はあるし、気力とか精神力も、薬を飲んで一日ちゃんと寝れば治るから。寝れないから長く続くんだよね~」
「なら、体験してみる」
「分かった」
「「「「「っ……」」」」」
ルディエが辛いと言っていたそれを体験してみたいと笑うのを見て、騎士達はないわと首を震えるように横に細かく振る。
ジルファスやミラルファ達は、目を丸くしながら、冗談だよねとルディエの顔を見る。しかし、その顔は自信満々に輝くようにも見えるものだった。本気だと分かり、信じられないとゆっくりと目を逸らしていた。
ルディエは、彼らが考えるよりも好奇心旺盛で、無茶もする性格だった。
アビリス王は動揺しながらも、ニール達を改めて見た。今は、受験者達にアルキスがニール達が各場所での代表だということなどを話している。
そんな中で、ニール、ブランナ、ビジェの武器を改めて確認したようだ。そして、首を傾げる。
「コウヤ……その神剣? というのは、ニールにだけ与えたのか?」
「あ、いえ。ブランナとビジェにもサブとして渡してあります……あっ、今回はそっちでやるみたいですね」
「……アルキスはその剣のこと……」
「ん? あ~……教えたかもしれません」
「……なるほど……」
「「「「「……」」」」」
誰もが納得顔を見せる。
ルディエも確信した。
「なら、それも体験させる気なんだ」
「え? あ、そっか……薬用意しておいた方がいい?」
「要らないよ。それに今朝、パックンがゲンさんの所に行って、何か大量に受け取ったって報告があるから多分……」
「それだね。アルキス様、用意がいいなあ」
「「「「「……」」」」」
用意がどうのという問題ではないのだが、コウヤの評価は高い。例え今、笑いを堪えきれないような顔をアルキスがしていても変わらない。
そして、ルディエが思い至った。
「そうか……ただの対戦じゃなく、パックンのパックンや、テンキの電撃を体験させる……ダンゴは確か、幻惑魔法が得意だし……リクトルス様は、その調整役……か」
「うわ~、それは、完璧に拷問にも耐えられるようになりそうだね」
「それが狙いみたいだ」
「すごい事考えるなあ、アルキス様」
「「「「「……っ」」」」」
感心するコウヤとルディエに、周りは動揺を隠せないようだった。
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