元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十一章

467 あははははっ

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その真っ暗で腐臭の漂うフィールドでは今日、爆音と叫び声と笑い声が響いていた。

『ふふふっ、あははははっ!』
『いいっ……いいっ! さ、最高火力!!』
『それっ、それっ、消えろ消えろぉぉぉ!』
『ぶあっはっはっはっ! 逃げ惑えぇぇぇ』
『俺が最強だぁぁぁ!!』

空に映るそれを、のんびりと見ていた冒険者達は、面白がる一部を除き、遠い目をしたり、青ざめながら目を逸らす者が続出していた。

「これさあ……大丈夫なのか……?」
「……あいつら……性格が……」
「ぶっ壊れた……」

心配する意見が多いようだ。

「これ、元に戻るのか……?」
「やべえな。あの状態のままだったら……」
「あんな火力出せたのか……攻撃力あるじゃん……」

不安げな顔で青ざめる者たちは、今までの仲間の魔法師達への認識を改めるべきだと思い知った。

「俺、いつも頼りにならないとか言ってたんだけど……」
「お、俺も……やべえよな……」
「「「「「……」」」」」

完全に『ヒャッハー』状態の魔法師達。だが、普段は大人しく、前衛の仲間の冒険者達について行くだけ。よって、報酬を分ける時には、少し不満に思われることが多かった。

それも要因だろう。

『はっはっはっ。日頃の恨みぃぃぃっ』
『あはっ。あはっ。ぐっちゃぐちゃにしちゃうもんね~♪』
『あははははっ、楽し過ぎ~っ』
「「「「「……」」」」」

最初は楽しみに見ものに回ろうとしていた冒険者達は、今やお通夜かと思えるほど静かだ。

普段の扱いから、仕返しされるのではないかと、戦々恐々としているようだ。

そんな所に、魔法師達に指示するため同行していたコウヤが戻って来た。

異様なこの雰囲気に何があったのかと不思議に思い、知り合いに声をかける。

「何かありました?」

落ち込んだ様子の者たちとは違い、一部の、ユースールやトルヴァラン王都で知り合った冒険者達は、ニヤニヤと愉快げに笑っている。そんな彼らにコウヤは確認した。

「いやさあ、あの魔法師共のぶっ飛び具合にビビっちまってんだよ」
「知らなかったんだろ。まあ、あれだけの火力を使える場所って限られるもんなあ」
「それこそ、辺境の森とかなっ」

辺境の森は、火を使っても燃え難い木が多いため、延焼の心配がほとんどない。消火する余裕もあるためだ。木が倒れてきたとしても、避けられるだけの実力や対策があるのも大きいだろう。

「迷宮内でアレは無理だわ」
「昔、巻き込まれて火傷負ったな~。まあ、アレがなきゃ、死んでたけどっ」

静かに、恐れを抱きながら見ている冒険者達とは違い、彼らは仲間の魔法師達の最大火力を知っている。それだけ、窮地に陥ったことがあったり、演習として確認していたりするからだ。

「王都でも、少し前までは、冒険者の魔法師なんて、冒険者の中でも下に見られてたからなあ」
「応用が利かねえって?」
「言うよな~。ってか、技の多さなら絶対負けてんじゃん? 十分、応用利いてるってえの」

剣など、武器を使う者より、魔法師として登録している冒険者の方が、技が多い。

「悪いのは俺らだよな~。あいつらを活かした戦い方考えないから」
「だよな……コウヤに言われて、演習が大事だって分かったぜ。魔法師居るなら、必要だわ」
「アレは、連携とは別だもんな」

剣、弓など、様々な武器で戦う冒険者達。その武器の特性を活かして連携を取るのは当たり前。彼らは決まったポジションで、ある程度決まったパターンしかないため、連携も取りやすかった。

だが、魔法師が入ってくるとこれが違ってくる。それも、冒険者で魔法師を名乗る者たちは、それなりに動けるのだ。彼らの活かし方次第で、パターンは何通りにもなってくる。

そんなパターンの確認のためにも、魔法を放っても問題のない演習場を用意するよう、ギルドに提案したのがコウヤだった。






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