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第十一章
468 使い所ねえよ
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ユースールの冒険者達は、得意げだ。
「コウヤがそれ用の場所を用意してくれたのが大きいよな!」
「広いから、他のパーティとも合同でやれるし、その時に一緒に考えるのも楽しいんだよな」
「あ~、別のパーティと合同の演習な。ウチだけじゃないか? 王都の奴らも、最初は有り得ないって顔してたぜ?」
「他のパーティに手の内見せるってのが、そもそもあり得ないって思ってるもんな」
ユースールの冒険者達は、パーティに関係なく訓練でも付き合うのが普通だ。合同で請け負う依頼も多いからというのもある。
それだけではなく、戦い方の意見を出し合ったり、教えを乞うことも多かった。
「な、なあ……今の本当か?」
静かになったため、ユースールの冒険者達の言葉も聴こえていたようだ。
反省中、あるいは魔法師達の力にドン引きしていた者たちが、コウヤに声をかけてきた。
「演習のことですか?」
「それもあるが……パーティ関係なく、普段から付き合いがあるってやつ……」
「ええ。俺も王都に行った最初の頃、不思議でした。パーティで対抗戦でもするのかと。パーティ同士では戦い方を見せない方が多いみたいでしたねえ」
戦い方を見られるのを嫌がるのだ。それが、コウヤには不思議だった。
「個人的に実力を見せないように気を付けてるのかと心配しましたよ。誰かに狙われてるのかと」
このコウヤの言葉に、ユースールの冒険者達が声を上げて笑う。
「それっ、それマジ思うよなっ。何と戦ってんだってえのっ」
「戦い方見られて困るとか、攻略されたら困る国の英雄かよっ」
「『俺の手の内が知られたら大変なことに……』とか? ぶあっはっはっはっ。どんだけ自惚れてんの?」
大爆笑だ。自惚れの激しい、恥ずかしいことだと、ユースールの者たちは思っているのだ。
「「「「「……っ」」」」」
こう言われると、確かになぜかと疑問に思うようになる。少しの恥ずかしさもあった。
「いや。まあ、強さを誇りたい気持ちは分かるけどな。俺も、若い頃はそうだった」
「国を一人ででも守ってみせるって思ってる騎士とかなら、それも良いんだろうけど、俺らは冒険者だからな」
「そうそう。自由を求める冒険者だ。好きなことして生きられるのを目標にしてんだ。一人だけ強くなって、難攻不落なボス気取って、それ自由か? ってな」
夢として、最初は誰よりも強くなることに憧れるが、ユースールに居る人生のどん底も知っている冒険者達は、現実を見て想像する。
「あれだろ? 他の奴らより先にランク上げたいって思ってのことだよな?」
「なんでか、手の内見られたら、先にランク上げられるちゃうって思うのよね~」
他人より上にというのは、わからなくもない。だが、それほど重要かとユースールの者たちは思っている。
「ランク競うとかそんな意味ねえもんな。実力は実力だしよ。手の内隠して、その隠し玉のお陰でランクが上がるとか、先ずないし」
「隠してんなら、普段使えないじゃん?」
「そうそう。それなら、それ、実力の証明にならんし。いざと言う時にしか使えないんじゃなあ」
「ギルドの査定疑うわ」
「「「「「……」」」」」
冒険者とギルド職員に、不正の癒着があった場合が疑われるだろう。
「実力って、周りも認めてこそだもんな」
「ズルしてランク上げて、誇れるかってえの。だいたい、戦い方を隠し通せると思ってんのがおかしいぜ。戦いながら見られてないかコソコソすんのって、集中してない証拠じゃん」
隠し通せるものでもないのだ。絶対に誰にも見せないなんてこと、普通冒険者なら無理だ。
「そこまでランクに拘るのもな~」
「無理にランク上げたところで、『他の人には任せられないんで~』なんて、大変な依頼とか回されるようになるんだぜ? そりゃあ、金は手に入るかもしれんが、それなりに金が手に入ったら、俺なら結婚して引退するわ」
「貴族と違って、死ぬまで家の責任ってのがあるわけでもないからなあ」
「俺も、金があったら孤児院の子どもを養子にして育てるかな。まあ、今でも同じようなもんだが」
「栄誉? 名誉? とか、使い所ねえよ。有名になるとか、絶対に面倒な貴族とかが絡んでくるだろ」
お金はあって困らないが、名誉とかは要らないというのが、彼らの答えだ。
「皆んなで強くなって、『ユースールの冒険者って強っ』って言われる方が嬉しいし」
「辺境暮らし良いよな~」
「下手に手え出してくる奴いなくなるし」
そんな訳で、ユースールの者たちは、抜け駆けしようなんてことは考えないのだ。
「……そこまで言われると……」
「拘ってるのが恥ずかしくなるな……」
考え方が変わったらしい。
何はともあれ、この日は色々なことで認識の変化があったようだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また一度お休みで19日です!
よろしくお願いします◎
「コウヤがそれ用の場所を用意してくれたのが大きいよな!」
「広いから、他のパーティとも合同でやれるし、その時に一緒に考えるのも楽しいんだよな」
「あ~、別のパーティと合同の演習な。ウチだけじゃないか? 王都の奴らも、最初は有り得ないって顔してたぜ?」
「他のパーティに手の内見せるってのが、そもそもあり得ないって思ってるもんな」
ユースールの冒険者達は、パーティに関係なく訓練でも付き合うのが普通だ。合同で請け負う依頼も多いからというのもある。
それだけではなく、戦い方の意見を出し合ったり、教えを乞うことも多かった。
「な、なあ……今の本当か?」
静かになったため、ユースールの冒険者達の言葉も聴こえていたようだ。
反省中、あるいは魔法師達の力にドン引きしていた者たちが、コウヤに声をかけてきた。
「演習のことですか?」
「それもあるが……パーティ関係なく、普段から付き合いがあるってやつ……」
「ええ。俺も王都に行った最初の頃、不思議でした。パーティで対抗戦でもするのかと。パーティ同士では戦い方を見せない方が多いみたいでしたねえ」
戦い方を見られるのを嫌がるのだ。それが、コウヤには不思議だった。
「個人的に実力を見せないように気を付けてるのかと心配しましたよ。誰かに狙われてるのかと」
このコウヤの言葉に、ユースールの冒険者達が声を上げて笑う。
「それっ、それマジ思うよなっ。何と戦ってんだってえのっ」
「戦い方見られて困るとか、攻略されたら困る国の英雄かよっ」
「『俺の手の内が知られたら大変なことに……』とか? ぶあっはっはっはっ。どんだけ自惚れてんの?」
大爆笑だ。自惚れの激しい、恥ずかしいことだと、ユースールの者たちは思っているのだ。
「「「「「……っ」」」」」
こう言われると、確かになぜかと疑問に思うようになる。少しの恥ずかしさもあった。
「いや。まあ、強さを誇りたい気持ちは分かるけどな。俺も、若い頃はそうだった」
「国を一人ででも守ってみせるって思ってる騎士とかなら、それも良いんだろうけど、俺らは冒険者だからな」
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夢として、最初は誰よりも強くなることに憧れるが、ユースールに居る人生のどん底も知っている冒険者達は、現実を見て想像する。
「あれだろ? 他の奴らより先にランク上げたいって思ってのことだよな?」
「なんでか、手の内見られたら、先にランク上げられるちゃうって思うのよね~」
他人より上にというのは、わからなくもない。だが、それほど重要かとユースールの者たちは思っている。
「ランク競うとかそんな意味ねえもんな。実力は実力だしよ。手の内隠して、その隠し玉のお陰でランクが上がるとか、先ずないし」
「隠してんなら、普段使えないじゃん?」
「そうそう。それなら、それ、実力の証明にならんし。いざと言う時にしか使えないんじゃなあ」
「ギルドの査定疑うわ」
「「「「「……」」」」」
冒険者とギルド職員に、不正の癒着があった場合が疑われるだろう。
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「ズルしてランク上げて、誇れるかってえの。だいたい、戦い方を隠し通せると思ってんのがおかしいぜ。戦いながら見られてないかコソコソすんのって、集中してない証拠じゃん」
隠し通せるものでもないのだ。絶対に誰にも見せないなんてこと、普通冒険者なら無理だ。
「そこまでランクに拘るのもな~」
「無理にランク上げたところで、『他の人には任せられないんで~』なんて、大変な依頼とか回されるようになるんだぜ? そりゃあ、金は手に入るかもしれんが、それなりに金が手に入ったら、俺なら結婚して引退するわ」
「貴族と違って、死ぬまで家の責任ってのがあるわけでもないからなあ」
「俺も、金があったら孤児院の子どもを養子にして育てるかな。まあ、今でも同じようなもんだが」
「栄誉? 名誉? とか、使い所ねえよ。有名になるとか、絶対に面倒な貴族とかが絡んでくるだろ」
お金はあって困らないが、名誉とかは要らないというのが、彼らの答えだ。
「皆んなで強くなって、『ユースールの冒険者って強っ』って言われる方が嬉しいし」
「辺境暮らし良いよな~」
「下手に手え出してくる奴いなくなるし」
そんな訳で、ユースールの者たちは、抜け駆けしようなんてことは考えないのだ。
「……そこまで言われると……」
「拘ってるのが恥ずかしくなるな……」
考え方が変わったらしい。
何はともあれ、この日は色々なことで認識の変化があったようだった。
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