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第十一章
459 張り合ってる?
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山奥に暮らすドワーフ族。その里から人里に出るには、険しい山岳を越え、凶暴な魔獣達を蹴散らしながら進むしか道はなかった。
よって、里から出られるドワーフは強いと証明するようなもの。実際にその里から出て人族の町に出れば、Aランク冒険者として認めても問題はない。
その子孫達は冒険者となり、強敵と戦うのを楽しむ。どちらかといえば、出てきた者は変わり者だ。
冒険者達は、夜の宴会の折にタリスへ、ドワーフ族とエルフ族や獣人族との違いを確認していた。
「出てきたドワーフ族って、里に戻らないですよね?」
「その子孫も戻らないじゃないですか。それって、エルフ族達とどう違うんです?」
エルフ族の冒険者達は、ドワーフ族も同じ事情を抱えているのだと思っていたらしい。人族の冒険者達も、今回の事で、ドワーフ族だけが平気な顔をしているのが気になったのだろう。
彼らからしても、ドワーフ族の者たちも同じだと思っていた。
イメージ的には、ドワーフ族で冒険者をしている者は少ないのだろう。ドワーフに物を作らせたら一級品が出来るというのが強いイメージとしてあったからだ。
だが、実際には人族との混血となった者はほとんどが冒険者になっている。鍛治師や物作りをしているドワーフは、里から出て来た者か、冒険者を引退した者だった。
「里から追い出されたわけでもないし、エルフ族みたいに戦士を送り込んでくるなんてことはないよ? ただ……もう一度里に戻るのにあの険しい道を行くのが嫌だっただけだと思うな~」
出てくるのに、本当に苦労するらしい。よって、里を出ようとするなら、戻ることは考えないというのがドワーフ族の中での常識だった。
「そんなに大変なんで?」
「ん~、って言うか。同じ冒険って飽きるでしょ?」
「はあ。まあ、確かに。同じ獲物ばっかとかも飽きる……まさか……」
「ちまちまやるのは好きなのよ? けど、大物ヤるのはね……そこまでの道程もあるじゃない? 二度目って燃えないよね~」
「「「……なるほど……」」」
突き詰めて極めることは、種族特性として強く出る。しかし、壮大な時間のかかる大冒険は、同じ事を繰り返したくはないだろう。
「一発デカいの決めるのが楽しいし? ここまで苦労したなあって、感慨に耽るのも一回で十分だし、感動が薄れるでしょ」
「納得っす」
この理由から、里を出てきたドワーフ達は、戻る気が失せるというわけだ。
「二世代目以降はね? やっぱ育つ環境が違うから弱いのよ。何より、子どもは可愛いから、『あんな苦労させてたまるかっ』って里の場所さえ教えないんだ」
「……ですけど、マスターなら独自で調べて行こうって思わなかったんすか?」
強さを求めるなら、冒険を求めるならば、憧れるだろう。しかし、タリスは首を横に振った。
「いつかはとは思ってたけど、『大変な道だよ』って耳が腐るほど聞いたからね。なんだろ……考える気も失せた? のかも」
「興味よりって……どんだけ聞かされたんです?」
「子どもの頃から、一日一回は聞く感じ」
「飽きるっすね」
「だよね~。行こうってしたら、また聞かされる~ってなるし、なら、他のとこ行くじゃん?」
「っすね!」
そこに拘る理由はない。いつか、たまたま辿り着くくらいの偶然しか有り得ないくらいになっていたようだ。
「けど、それだと本当に強い人しか出てこられないんですね~」
「ん~、いや、別にね? 里に残ったのが弱いとかじゃないんだよ? あの里の周囲って、結構強い魔獣や魔物が多いらしいし、それに、あそこでは道具や武器を作るのもそれを使うのも結局は自分達みたいだから」
「えっ……」
「だから、その強い魔獣とかを、いかに効率良く倒せる武器を作れるかってのに命かけてるみたい。ボクから見たら、里に残ってる人たちの方が変わり者だよ」
だから自然に技術は上がるし、良い物を作ることが出来るというわけだ。
「うわ~……聞いただけで、狂気すら感じるわ……」
「ねっ。ボクもそれ思った。今回の事で里から出てきた人たちも、里から出る気のなかった人たちだから、ちょっとね……怖かったよ」
「ちょっ、マスターが怖いって……俺ら出会わなくて良かった……」
「そんなのに取り囲まれて、よくあの国は残ったよ……」
神教国の大神殿を壊すという目的だけを思って、そんな人たちが出てきたのだ。相当な覚悟と決意があったはずだ。
「いや、まだ諦めてないからね」
「……え?」
「いやね。だから、まだ壊す機会伺ってるのよ」
「「「……どこで?」」」
そこでコウヤが割り込んだ。
「近くに独自の野営地作ってますよ? あっ、それでなんですけどマスター。何か、廃村がすごい勢いで新しくなっていくんですけど、どうします?」
「……ん? どういうこと?」
「ええ。ですから、ほら、ここから一時間くらいの所に、野営地候補になってた廃村があったじゃないですか」
「う、うん……え? まさか……っ」
「はい。そこにドワーフ族の方達が集まってまして、どうしたのかな~って思ってたら……」
タリスは解散を告げ、何とか神教国の周辺からは移動したが、近くの町などを見て回った後、こちらに参加しようか迷ったらしい。
しかし、なぜか集まり出したドワーフ族の者たちが一致団結して、廃村を作り替えだした。
まったく謎の行動だ。
「なんで突然? と思ってたらですねえ……なぜかその近くの廃村でゼストパパとドラム組が同じようにいつの間にか村を新しく作ってまして……その……それを見てなんか張り合ってる? っていうか……刺激された感じですね」
「ドラム組も問題だけど、ゼスト様っ、何してんの!?」
「多分、あの勢いで、迷宮化に取り込まれてた村の修復もしちゃいそうです。今のは多分、練習なのかも?」
恐らく練習だ。なんだか色々と計算もしていたのだから。
「村の修復をやる気でゼストパパは出てきた感じかな? 大工仕事気に入ったみたい。ソワソワしてる気がしてたんだよね~」
「……」
「「「……」」」
タリスだけでなくゼストラークとドラム組の事情を知るユースールの冒険者達も絶句した。
「それで、さっきゼストパパから提案が来たんです。武器の調整とか、エルフの里の野営地化とか、ドワーフ族の方達とやろうかって」
「っ、何その贅沢な使い方っ、お願いします!」
「は~い。じゃあ、そういうことで~!」
「「「……え!?」」」
そうして、村作りに燃えていたドワーフ族の人たちとドラム組プラス、ゼストラークをマンタで回収し、エルフの里の上空に運んだのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
よって、里から出られるドワーフは強いと証明するようなもの。実際にその里から出て人族の町に出れば、Aランク冒険者として認めても問題はない。
その子孫達は冒険者となり、強敵と戦うのを楽しむ。どちらかといえば、出てきた者は変わり者だ。
冒険者達は、夜の宴会の折にタリスへ、ドワーフ族とエルフ族や獣人族との違いを確認していた。
「出てきたドワーフ族って、里に戻らないですよね?」
「その子孫も戻らないじゃないですか。それって、エルフ族達とどう違うんです?」
エルフ族の冒険者達は、ドワーフ族も同じ事情を抱えているのだと思っていたらしい。人族の冒険者達も、今回の事で、ドワーフ族だけが平気な顔をしているのが気になったのだろう。
彼らからしても、ドワーフ族の者たちも同じだと思っていた。
イメージ的には、ドワーフ族で冒険者をしている者は少ないのだろう。ドワーフに物を作らせたら一級品が出来るというのが強いイメージとしてあったからだ。
だが、実際には人族との混血となった者はほとんどが冒険者になっている。鍛治師や物作りをしているドワーフは、里から出て来た者か、冒険者を引退した者だった。
「里から追い出されたわけでもないし、エルフ族みたいに戦士を送り込んでくるなんてことはないよ? ただ……もう一度里に戻るのにあの険しい道を行くのが嫌だっただけだと思うな~」
出てくるのに、本当に苦労するらしい。よって、里を出ようとするなら、戻ることは考えないというのがドワーフ族の中での常識だった。
「そんなに大変なんで?」
「ん~、って言うか。同じ冒険って飽きるでしょ?」
「はあ。まあ、確かに。同じ獲物ばっかとかも飽きる……まさか……」
「ちまちまやるのは好きなのよ? けど、大物ヤるのはね……そこまでの道程もあるじゃない? 二度目って燃えないよね~」
「「「……なるほど……」」」
突き詰めて極めることは、種族特性として強く出る。しかし、壮大な時間のかかる大冒険は、同じ事を繰り返したくはないだろう。
「一発デカいの決めるのが楽しいし? ここまで苦労したなあって、感慨に耽るのも一回で十分だし、感動が薄れるでしょ」
「納得っす」
この理由から、里を出てきたドワーフ達は、戻る気が失せるというわけだ。
「二世代目以降はね? やっぱ育つ環境が違うから弱いのよ。何より、子どもは可愛いから、『あんな苦労させてたまるかっ』って里の場所さえ教えないんだ」
「……ですけど、マスターなら独自で調べて行こうって思わなかったんすか?」
強さを求めるなら、冒険を求めるならば、憧れるだろう。しかし、タリスは首を横に振った。
「いつかはとは思ってたけど、『大変な道だよ』って耳が腐るほど聞いたからね。なんだろ……考える気も失せた? のかも」
「興味よりって……どんだけ聞かされたんです?」
「子どもの頃から、一日一回は聞く感じ」
「飽きるっすね」
「だよね~。行こうってしたら、また聞かされる~ってなるし、なら、他のとこ行くじゃん?」
「っすね!」
そこに拘る理由はない。いつか、たまたま辿り着くくらいの偶然しか有り得ないくらいになっていたようだ。
「けど、それだと本当に強い人しか出てこられないんですね~」
「ん~、いや、別にね? 里に残ったのが弱いとかじゃないんだよ? あの里の周囲って、結構強い魔獣や魔物が多いらしいし、それに、あそこでは道具や武器を作るのもそれを使うのも結局は自分達みたいだから」
「えっ……」
「だから、その強い魔獣とかを、いかに効率良く倒せる武器を作れるかってのに命かけてるみたい。ボクから見たら、里に残ってる人たちの方が変わり者だよ」
だから自然に技術は上がるし、良い物を作ることが出来るというわけだ。
「うわ~……聞いただけで、狂気すら感じるわ……」
「ねっ。ボクもそれ思った。今回の事で里から出てきた人たちも、里から出る気のなかった人たちだから、ちょっとね……怖かったよ」
「ちょっ、マスターが怖いって……俺ら出会わなくて良かった……」
「そんなのに取り囲まれて、よくあの国は残ったよ……」
神教国の大神殿を壊すという目的だけを思って、そんな人たちが出てきたのだ。相当な覚悟と決意があったはずだ。
「いや、まだ諦めてないからね」
「……え?」
「いやね。だから、まだ壊す機会伺ってるのよ」
「「「……どこで?」」」
そこでコウヤが割り込んだ。
「近くに独自の野営地作ってますよ? あっ、それでなんですけどマスター。何か、廃村がすごい勢いで新しくなっていくんですけど、どうします?」
「……ん? どういうこと?」
「ええ。ですから、ほら、ここから一時間くらいの所に、野営地候補になってた廃村があったじゃないですか」
「う、うん……え? まさか……っ」
「はい。そこにドワーフ族の方達が集まってまして、どうしたのかな~って思ってたら……」
タリスは解散を告げ、何とか神教国の周辺からは移動したが、近くの町などを見て回った後、こちらに参加しようか迷ったらしい。
しかし、なぜか集まり出したドワーフ族の者たちが一致団結して、廃村を作り替えだした。
まったく謎の行動だ。
「なんで突然? と思ってたらですねえ……なぜかその近くの廃村でゼストパパとドラム組が同じようにいつの間にか村を新しく作ってまして……その……それを見てなんか張り合ってる? っていうか……刺激された感じですね」
「ドラム組も問題だけど、ゼスト様っ、何してんの!?」
「多分、あの勢いで、迷宮化に取り込まれてた村の修復もしちゃいそうです。今のは多分、練習なのかも?」
恐らく練習だ。なんだか色々と計算もしていたのだから。
「村の修復をやる気でゼストパパは出てきた感じかな? 大工仕事気に入ったみたい。ソワソワしてる気がしてたんだよね~」
「……」
「「「……」」」
タリスだけでなくゼストラークとドラム組の事情を知るユースールの冒険者達も絶句した。
「それで、さっきゼストパパから提案が来たんです。武器の調整とか、エルフの里の野営地化とか、ドワーフ族の方達とやろうかって」
「っ、何その贅沢な使い方っ、お願いします!」
「は~い。じゃあ、そういうことで~!」
「「「……え!?」」」
そうして、村作りに燃えていたドワーフ族の人たちとドラム組プラス、ゼストラークをマンタで回収し、エルフの里の上空に運んだのだ。
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