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第十一章
458 察した
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エルフの冒険者達は、里の者たちよりもレベルが高い。だが、それでも勝てない相手というのはいる。
頬を腫らしたエルフの冒険者達を見て、コウヤは首を傾げた。
「どうしたんです? それ」
「……母にちょっと……」
「姉ちゃんに……」
「妹にやられました!」
目を逸らす者、手を挙げて答える者と様々だ。
彼らに目を向けるこの里の住民達を見つけ、コウヤは頷いた。その住民達は、殴って痛めた手をベニ達によって治されているところだった。
火事場の馬鹿力というのは、こういう、いざという時にも発揮される。
「なるほど。愛ある一発をいただいたということですねっ。もう少しそのままでいましょうか」
「「「「「ええっ!」」」」」
「あ……」
「なんでもないです……」
そんなっとショックを受けたようだが、彼らは母親達の含みのある笑みから目を逸らす。
腫れているので、痛みはあるが、我慢できないほどではない。寧ろ、殴った側が重症だっただろう。それだけ、レベル差もある。
心配してくれる親や姉妹への後ろめたさもあり、その痛みは甘んじて受け入れると、渋々納得したようだ。
「心配しなくても、奥の里の人たちと違って、皆さんは治癒魔法もきちんと効きますし、治すとなったらすぐ治りますよ」
「はあ……ん?」
エルフの冒険者達だけでなく、エルフ達の顔の腫れ具合を笑いながら、コウヤの話を耳半分で聴いていた冒険者達も引っかかりを覚えたようだ。
グラムが代表で手を挙げる。
「コウヤ。それだと、奥の? 里? の奴らは治癒魔法が効かないってことか?」
「ええ。ちょっと効きにくいんです。でも、大丈夫ですよ。確認したら、瀕死の時はある程度薬も治癒魔法も効くみたいですから」
コウヤの言葉から、グラム達はほぼ正確に意味を読み取る。
「……う~ん……なんか、罰を食らってるんだってのは察した」
「あ、さすがですね」
笑顔で、良く分かりましたねと手を合わせて笑うコウヤに、グラムは頬を微妙に引き攣らせていた。
「まあな……」
「「「……」」」
ユースールの冒険者達も、一緒に無理やり笑って誤魔化していた。
「……何やったんだろうな……」
「しっ……詮索はナシだ」
「だな……」
コソコソと小さな声で、ユースール組は結論も出したようだ。
しかし、エルフの冒険者達はまだ気になっている。当然だろう。同じ種族であることに変わりはないのだ。罰と聞いて、連帯責任を恐れる。
「な、なあ、どういう……」
グラムに尋ねるが、首を横に振られる。
「知らない方が良いことはあるんだよ。お前らの方が人生経験も豊富だろう?」
「……まあ……そうですけど……」
見た目は若く見えても、実年齢はグラムより上の者ばかりだ。
「大丈夫だ。知るべき事なら、その内知れるさ」
「そうだな」
「そういうもんだ」
「「「……」」」
ユースール組が、うんうんと頷く。これに、エルフ達は言わずに居られなかったようだ。
「……年齢、誤魔化してません?」
「私達より、なんだか……」
「色々と経験されてるんですかね?」
不思議そうに顔を見合わせる。
グラム達、ユースール組の多くは、絶望も知り、希望を見つけ、実力で今の人生を掴み取った者たちだ。もしかしたら、人生経験は彼らの方が上かもしれない。
「まあ、気にすんな。ほれ、もう少し話をしてきたらどうだ? あっちも落ち着いたみたいだしよ」
ベニ達によって、痛めた所は治ったらしく、チラチラと冒険者達と彼らの家族や知り合いの目が合っていた。
「コウヤ。まだ時間良いんだよな?」
「はい。武器の最終調整などの時間として、午前中は自由です。もうそろそろ、職人さん達も到着しますので」
「職人?」
そこで唐突に上空からの太陽の光が遮られたのを感じ、自然に誰もが上を向く。
「あ、来ました」
「……コウヤ、まさか……職人って……っ」
見上げた先にあったのは、飛行船マンタだ。そこから、楽しそうな顔をして工具を手に飛び降りて来る者たちがあった。
「はい。ドワーフの方たちに来ていただきましたっ」
「どんだけ本気なんだよ……」
それは、迷宮化の対応に、冒険者ギルドが、世界が、本気で向き合っていることを証明したようなものだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一回お休みさせていただきます。
よろしくお願いします◎
頬を腫らしたエルフの冒険者達を見て、コウヤは首を傾げた。
「どうしたんです? それ」
「……母にちょっと……」
「姉ちゃんに……」
「妹にやられました!」
目を逸らす者、手を挙げて答える者と様々だ。
彼らに目を向けるこの里の住民達を見つけ、コウヤは頷いた。その住民達は、殴って痛めた手をベニ達によって治されているところだった。
火事場の馬鹿力というのは、こういう、いざという時にも発揮される。
「なるほど。愛ある一発をいただいたということですねっ。もう少しそのままでいましょうか」
「「「「「ええっ!」」」」」
「あ……」
「なんでもないです……」
そんなっとショックを受けたようだが、彼らは母親達の含みのある笑みから目を逸らす。
腫れているので、痛みはあるが、我慢できないほどではない。寧ろ、殴った側が重症だっただろう。それだけ、レベル差もある。
心配してくれる親や姉妹への後ろめたさもあり、その痛みは甘んじて受け入れると、渋々納得したようだ。
「心配しなくても、奥の里の人たちと違って、皆さんは治癒魔法もきちんと効きますし、治すとなったらすぐ治りますよ」
「はあ……ん?」
エルフの冒険者達だけでなく、エルフ達の顔の腫れ具合を笑いながら、コウヤの話を耳半分で聴いていた冒険者達も引っかかりを覚えたようだ。
グラムが代表で手を挙げる。
「コウヤ。それだと、奥の? 里? の奴らは治癒魔法が効かないってことか?」
「ええ。ちょっと効きにくいんです。でも、大丈夫ですよ。確認したら、瀕死の時はある程度薬も治癒魔法も効くみたいですから」
コウヤの言葉から、グラム達はほぼ正確に意味を読み取る。
「……う~ん……なんか、罰を食らってるんだってのは察した」
「あ、さすがですね」
笑顔で、良く分かりましたねと手を合わせて笑うコウヤに、グラムは頬を微妙に引き攣らせていた。
「まあな……」
「「「……」」」
ユースールの冒険者達も、一緒に無理やり笑って誤魔化していた。
「……何やったんだろうな……」
「しっ……詮索はナシだ」
「だな……」
コソコソと小さな声で、ユースール組は結論も出したようだ。
しかし、エルフの冒険者達はまだ気になっている。当然だろう。同じ種族であることに変わりはないのだ。罰と聞いて、連帯責任を恐れる。
「な、なあ、どういう……」
グラムに尋ねるが、首を横に振られる。
「知らない方が良いことはあるんだよ。お前らの方が人生経験も豊富だろう?」
「……まあ……そうですけど……」
見た目は若く見えても、実年齢はグラムより上の者ばかりだ。
「大丈夫だ。知るべき事なら、その内知れるさ」
「そうだな」
「そういうもんだ」
「「「……」」」
ユースール組が、うんうんと頷く。これに、エルフ達は言わずに居られなかったようだ。
「……年齢、誤魔化してません?」
「私達より、なんだか……」
「色々と経験されてるんですかね?」
不思議そうに顔を見合わせる。
グラム達、ユースール組の多くは、絶望も知り、希望を見つけ、実力で今の人生を掴み取った者たちだ。もしかしたら、人生経験は彼らの方が上かもしれない。
「まあ、気にすんな。ほれ、もう少し話をしてきたらどうだ? あっちも落ち着いたみたいだしよ」
ベニ達によって、痛めた所は治ったらしく、チラチラと冒険者達と彼らの家族や知り合いの目が合っていた。
「コウヤ。まだ時間良いんだよな?」
「はい。武器の最終調整などの時間として、午前中は自由です。もうそろそろ、職人さん達も到着しますので」
「職人?」
そこで唐突に上空からの太陽の光が遮られたのを感じ、自然に誰もが上を向く。
「あ、来ました」
「……コウヤ、まさか……職人って……っ」
見上げた先にあったのは、飛行船マンタだ。そこから、楽しそうな顔をして工具を手に飛び降りて来る者たちがあった。
「はい。ドワーフの方たちに来ていただきましたっ」
「どんだけ本気なんだよ……」
それは、迷宮化の対応に、冒険者ギルドが、世界が、本気で向き合っていることを証明したようなものだった。
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