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第十一章
453 これは楽しいねっ
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風が酷くなってきた。厄介なのは、風の方向が度々変わる所だ。
暗黒竜は、いつの間にか風の中心、暗雲が渦巻く中で、発生する雷を吸収するように浴びて丸くなっている。
そろそろ準備が終わるのだろう。
どうしようかなと考えていれば、リクトルスが真面目な顔で、空にある暗黒竜を見つめて口を開いた。
「コウヤくん。空中に足場って作れますか?」
「空中に? 空中に……できなくはないかもしれないけど……本当にほとんど俺が補助しかできなくなるよ? 避雷針も作り続けないといけないし……」
全員に保護膜も張っているのだ。宮廷魔法師であったなら、数分保てるかどうか。体全てを覆うというのは、中々難しいのだ。それも、目の所だけ更に保護をしている。視界を遮らずというのは特に常に調整しているようなものになる。
「因みに、何を足場にできます?」
魔法でコウヤの右に出る者はいない。もちろん、神の中でも一番だ。リクトルスも提案してはいても、どうするのかはコウヤに任せている。
「氷かなとも思ったけど、雷が怖いんだよね……だから……木とか草を使う」
「木……ですか?」
目を丸くするリクトルス。意外だったのだろう。氷の方が予想していたのかもしれない。雨も降ってくるので、水には困らない。靴裏にゴムの加工もしてあるのだ。滑り止めも問題ない。しかし、間違いなく割れやすくなる。そして、怖いのが雷だ。
そこで、電気も余り通さないというのを見込んで植物を選んだ。
「こうして……」
木が枝葉を伸ばし、草が茎と根を伸ばす。
「編み込んで……」
それらが様々な場所で組まれていく。柱のようにも見えるが、形としてピッタリなのは、太鼓。それもボンゴが近いだろう。それを見て、誰もが呆然とした。
「おいおい……なんだこれ……」
「足下も絨毯のようになったねえ」
「まるで、地形を変えたみたいですね……」
地面は、土ではなくその上に植物で細かい網を張ったようになった。そして、柱のようになったものは、場所によって高さも変えてある。完全に景観が変わった。ぬかるみに足を取られることもない。
「トランポリンみたいにしたら、こうやってっ」
「っ、コウヤ様!?」
ニールが慌てる。コウヤが唐突に、ボンゴのような形になった上に飛び乗ったのだ。すると、踏まれた枝葉や草が柔らかく受け止め、しなり、コウヤを軽く一メートルほど上に飛ばせた。
「っ、ジャンプできるでしょっ! あの辺までこれで飛び乗って飛んで行くとっ、ドラゴンにも届くと思うからっ」
まるで、ゲームのフィールドだ。高く作られた所まで、階段のようにトランポリンとなった植物が続く。
リクトルスは目を輝かせた。
「これっ……遊園地に作ったトランポリンルームみたいですね!」
そう。天空の城に創ってある遊園地。そこに、トランポリンで遊べるアトラクションルームを作った。それを思い出して参考にしたのだ。
「うん。でも、ここでは落ちた時の安全対策はないからね。俺がその辺頑張るよ」
雷が直撃しないようにフォローも必要だろう。だが、コウヤなら問題なく全てに手を回せる。その代わり、前線には行けない。それは残念だが、これが最善の体制だろう。
うんうんとベニ達が頷いて、近くのトランポリンに飛び乗る。
「ほおっ。これは楽しいねっ」
「どこまでも飛べそうだよ」
「風向きを確認して飛ばないとね」
ジャンプしている間に風に飛ばされることも当然ある。それを読んで、風も利用して飛ぶ必要があると、ベニ達は察した。
「うおっ! マジかっ。なるほどっ。これなら飛ぶってのも無理じゃねえな!」
「なんだこれ! 楽し過ぎる!」
「飛ばされるっ、飛ばされるっ。空がっ……飛べる!!」
アルキスや騎士、冒険者達も完全に遊んでいた。すぐにコツを掴んで高く飛べるのは、さすがだ。
「ふふっ。ほら、始まりますよ!」
「「「「「おう!!」」」」」
「「「「「やったるぜ!!」」」」」
楽しいというのは本音だろう。やる気も満々だった。
そして、ついに暗黒竜が目を開けた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一回お休みいただきます!
次回、来週14日です!
よろしくお願いします◎
暗黒竜は、いつの間にか風の中心、暗雲が渦巻く中で、発生する雷を吸収するように浴びて丸くなっている。
そろそろ準備が終わるのだろう。
どうしようかなと考えていれば、リクトルスが真面目な顔で、空にある暗黒竜を見つめて口を開いた。
「コウヤくん。空中に足場って作れますか?」
「空中に? 空中に……できなくはないかもしれないけど……本当にほとんど俺が補助しかできなくなるよ? 避雷針も作り続けないといけないし……」
全員に保護膜も張っているのだ。宮廷魔法師であったなら、数分保てるかどうか。体全てを覆うというのは、中々難しいのだ。それも、目の所だけ更に保護をしている。視界を遮らずというのは特に常に調整しているようなものになる。
「因みに、何を足場にできます?」
魔法でコウヤの右に出る者はいない。もちろん、神の中でも一番だ。リクトルスも提案してはいても、どうするのかはコウヤに任せている。
「氷かなとも思ったけど、雷が怖いんだよね……だから……木とか草を使う」
「木……ですか?」
目を丸くするリクトルス。意外だったのだろう。氷の方が予想していたのかもしれない。雨も降ってくるので、水には困らない。靴裏にゴムの加工もしてあるのだ。滑り止めも問題ない。しかし、間違いなく割れやすくなる。そして、怖いのが雷だ。
そこで、電気も余り通さないというのを見込んで植物を選んだ。
「こうして……」
木が枝葉を伸ばし、草が茎と根を伸ばす。
「編み込んで……」
それらが様々な場所で組まれていく。柱のようにも見えるが、形としてピッタリなのは、太鼓。それもボンゴが近いだろう。それを見て、誰もが呆然とした。
「おいおい……なんだこれ……」
「足下も絨毯のようになったねえ」
「まるで、地形を変えたみたいですね……」
地面は、土ではなくその上に植物で細かい網を張ったようになった。そして、柱のようになったものは、場所によって高さも変えてある。完全に景観が変わった。ぬかるみに足を取られることもない。
「トランポリンみたいにしたら、こうやってっ」
「っ、コウヤ様!?」
ニールが慌てる。コウヤが唐突に、ボンゴのような形になった上に飛び乗ったのだ。すると、踏まれた枝葉や草が柔らかく受け止め、しなり、コウヤを軽く一メートルほど上に飛ばせた。
「っ、ジャンプできるでしょっ! あの辺までこれで飛び乗って飛んで行くとっ、ドラゴンにも届くと思うからっ」
まるで、ゲームのフィールドだ。高く作られた所まで、階段のようにトランポリンとなった植物が続く。
リクトルスは目を輝かせた。
「これっ……遊園地に作ったトランポリンルームみたいですね!」
そう。天空の城に創ってある遊園地。そこに、トランポリンで遊べるアトラクションルームを作った。それを思い出して参考にしたのだ。
「うん。でも、ここでは落ちた時の安全対策はないからね。俺がその辺頑張るよ」
雷が直撃しないようにフォローも必要だろう。だが、コウヤなら問題なく全てに手を回せる。その代わり、前線には行けない。それは残念だが、これが最善の体制だろう。
うんうんとベニ達が頷いて、近くのトランポリンに飛び乗る。
「ほおっ。これは楽しいねっ」
「どこまでも飛べそうだよ」
「風向きを確認して飛ばないとね」
ジャンプしている間に風に飛ばされることも当然ある。それを読んで、風も利用して飛ぶ必要があると、ベニ達は察した。
「うおっ! マジかっ。なるほどっ。これなら飛ぶってのも無理じゃねえな!」
「なんだこれ! 楽し過ぎる!」
「飛ばされるっ、飛ばされるっ。空がっ……飛べる!!」
アルキスや騎士、冒険者達も完全に遊んでいた。すぐにコツを掴んで高く飛べるのは、さすがだ。
「ふふっ。ほら、始まりますよ!」
「「「「「おう!!」」」」」
「「「「「やったるぜ!!」」」」」
楽しいというのは本音だろう。やる気も満々だった。
そして、ついに暗黒竜が目を開けた。
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