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第六章 新教会のお披露目
210 人生に彩りが増えます
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神降ろしの儀式を行うことになった経緯をベニがセイやキイ、同じタイミングで帰って来たルディエ達に説明している間に、コウヤは視察のことを棟梁に伝えに行くことにした。
後ろには護衛だと言って、ビジェがついてきており、コウヤはレナルカを背負っていた。
遮音布に手をかけて横を見ると、既に居住区は完全に出来ており、布も取り払われていた。そこからは、沢山の人の気配を感じる。中には保護された子ども達がいるのだ。ドラム組の本気具合がわかった。
「予定より随分早いな……」
まだ日が暮れるまでには数時間ある。七時には必ず終わることにしているのだが、おそらく、それまでには孤児院となる場所が半分は出来上がってしまうだろう。
一歩中へ入ってコウヤは隣で同じように立ち止まったビジェを見上げる。彼は前方の大工達の動きを見て呆然としていた。
「ふふ。ビジェ。すみません。この先は慣れていないと危険なので、ここで待っていてもらえますか?」
「っ、だが……っ……わかっタ」
ビジェは大工達を見て理解した。きちんと自身の力量を把握できている証拠だ。
「レナルカを任せて良いですか? せっかく寝た所みたいなので」
「はい……」
レナルカをそろそろと背中から下ろし、ビジェに抱かせた。グズる様子もなく、寝たままのようで安心する。意外にもビジェは子どもの抱き方が上手かった。
「では、少し行って来ます。ここに居るのは大丈夫ですから。動かないようにお願いします」
「了解シタ」
工事現場はとても危険だ。ただし、ここでの危険は、積まれた資材が崩れたり、組み立て中のものが倒れてきたりと言った話ではない。
「よっと。ほっ。ととっ」
軽い様子で避けているのは、物ではなく作業中の大工達だ。彼らは身体強化スキルがかなり高い。空間察知能力も高いため、狭い場所でも驚くほど速く動くのだ。
担いだ木材はどこにもぶつかることなく目的の場所へスッと通り、釘を打ち付ける必要がある場所ではその釘が飛び交っている。同時に木材も飛んでいたりするので注意が必要だった。
これは慣れていても簡単には避けられない。大工の邪魔にならないよう気配を消して進むのだ。それらの間を器用に縫うようにしてコウヤは棟梁の元へと向かった。
「あ、居た」
他の大工達は協力する場面以外、周りを気にししたりしないのだが、棟梁は全体を把握する能力が高いため、すぐにコウヤに気付いた。
「っ、コウヤ……か」
「はい。棟梁。明後日、視察が入ることになりました」
「……わかった……夜、時間は……」
「あります。作業スピードが速いみたいなので、計画を少し見直さないといけませんもんね」
「……頼む……」
「はい。夕食が終わった頃に伺います」
「ああ……」
とりあえず、これだけで問題はないだろう。背を向けようとした時。棟梁が珍しく話しかけてきた。
「……何か良いことがあったのか」
「ん? あ、はいっ。とっても良いことがありました!」
もうすぐ、ゼストラークやリクトルスとも地上で会える。それが思ったよりもずっとコウヤは楽しみなようだ。
「……気になる……」
「ふふ。ここが完成したら、数日は王都観光でもしてゆっくりしてください。その間に、紹介できると思いますから」
「……人か……?」
「ええ。会いに来てくれるんです」
「……楽しみにしておく……」
「はい!」
棟梁をはじめ、コウヤと関わりを持つユースールの人達は、コウヤの表情の変化に敏感だ。その笑顔を見て、棟梁は会いに来るのはコウヤの大切な人なんだなと理解し、興味を持った。まさか、神だとは思わないだろう。
コウヤにとっては家族だ。大切な人を紹介するという認識しかないため、引き合わせれば純粋に喜んでくれると思っている。混乱や驚愕といったものになるとは全く予想もしていない。
これには残念ながら誰も気付かないだろう。通常ならば注意するだろうベニ達やルディエも儀式の事にかかりきりになるのだから。
「では、今夜」
約束をし、コウヤはビジェとレナルカを回収して、工事現場を後にした。
◆ ◆ ◆
二日が経った。
この日の予定は午前中に視察。午後からはユースールに戻ることになる。
この二日間は大変だった。
儀式の準備については、ベニ達をはじめ、白夜部隊の面々が滞りなく進めていた。ベニ達は当然として、この儀式の記録を神子や巫女であった白夜部隊の者達は知識として知っていたらしく、ベニ達があれこれと指示を出さなくても問題なかったというのが大きいだろう。
主にルディエとサーナが白夜部隊に指示を出し、何一つ問題もなく儀式の準備を整えていった。
その間、新たに神教国の教会から参入した神官達の指導は、白夜部隊以外の神官達が行っていた。この指導だが、白夜部隊によって指導を受けた神官達であるということで、その指導は少々驚かれたというか、ドン引かれていた。
色々と常識を越えた白夜部隊直伝の指導。既にそれが当たり前だと思っている神官達は、立派に一人前だろう。
そして、魔改造されていく新規の神官達。だが、ドン引きながらも、リウム達は受け入れていた。その理由の一つが、コウヤだ。神であるコウヤが認めた教会の神官。彼らのやることが間違っているはずがない。そう思い込んだことにより、半日も指導を受ければ、キラキラとした目で指導に立ち向かうようになっていたのだ。
「次は何ですか!」
「やりきってみせますよ!」
「なんだろ……楽しくなってきた!」
神教会で使い潰されようとしていた時よりもボロボロに見えるが、心から楽しそうだ。それを見たゲン達は呆れるというか、少し恐れていた。
「なあ、コウヤ……あいつら、あんなボロボロになっても笑ってんだけど……マゾなのか? 精神面まで診てやれねえぞ?」
「大丈夫ですよ? ほら、生き生きしてます」
「いや、だからな? だからマゾなんじゃねえかって、心配してんだよ。危ない扉開けたんじゃねえの?」
「え? 扉は……色々開けちゃった方が、人生に彩りが増えますよねっ」
「開けちゃいかんの開いちまってんだよ!」
「大丈夫ですって♪」
「……」
コウヤには楽しそうだなとしか感じないので大丈夫だ。
そして、先ず視察が始まる。
*************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、二日空きます。
よろしくお願いします◎
後ろには護衛だと言って、ビジェがついてきており、コウヤはレナルカを背負っていた。
遮音布に手をかけて横を見ると、既に居住区は完全に出来ており、布も取り払われていた。そこからは、沢山の人の気配を感じる。中には保護された子ども達がいるのだ。ドラム組の本気具合がわかった。
「予定より随分早いな……」
まだ日が暮れるまでには数時間ある。七時には必ず終わることにしているのだが、おそらく、それまでには孤児院となる場所が半分は出来上がってしまうだろう。
一歩中へ入ってコウヤは隣で同じように立ち止まったビジェを見上げる。彼は前方の大工達の動きを見て呆然としていた。
「ふふ。ビジェ。すみません。この先は慣れていないと危険なので、ここで待っていてもらえますか?」
「っ、だが……っ……わかっタ」
ビジェは大工達を見て理解した。きちんと自身の力量を把握できている証拠だ。
「レナルカを任せて良いですか? せっかく寝た所みたいなので」
「はい……」
レナルカをそろそろと背中から下ろし、ビジェに抱かせた。グズる様子もなく、寝たままのようで安心する。意外にもビジェは子どもの抱き方が上手かった。
「では、少し行って来ます。ここに居るのは大丈夫ですから。動かないようにお願いします」
「了解シタ」
工事現場はとても危険だ。ただし、ここでの危険は、積まれた資材が崩れたり、組み立て中のものが倒れてきたりと言った話ではない。
「よっと。ほっ。ととっ」
軽い様子で避けているのは、物ではなく作業中の大工達だ。彼らは身体強化スキルがかなり高い。空間察知能力も高いため、狭い場所でも驚くほど速く動くのだ。
担いだ木材はどこにもぶつかることなく目的の場所へスッと通り、釘を打ち付ける必要がある場所ではその釘が飛び交っている。同時に木材も飛んでいたりするので注意が必要だった。
これは慣れていても簡単には避けられない。大工の邪魔にならないよう気配を消して進むのだ。それらの間を器用に縫うようにしてコウヤは棟梁の元へと向かった。
「あ、居た」
他の大工達は協力する場面以外、周りを気にししたりしないのだが、棟梁は全体を把握する能力が高いため、すぐにコウヤに気付いた。
「っ、コウヤ……か」
「はい。棟梁。明後日、視察が入ることになりました」
「……わかった……夜、時間は……」
「あります。作業スピードが速いみたいなので、計画を少し見直さないといけませんもんね」
「……頼む……」
「はい。夕食が終わった頃に伺います」
「ああ……」
とりあえず、これだけで問題はないだろう。背を向けようとした時。棟梁が珍しく話しかけてきた。
「……何か良いことがあったのか」
「ん? あ、はいっ。とっても良いことがありました!」
もうすぐ、ゼストラークやリクトルスとも地上で会える。それが思ったよりもずっとコウヤは楽しみなようだ。
「……気になる……」
「ふふ。ここが完成したら、数日は王都観光でもしてゆっくりしてください。その間に、紹介できると思いますから」
「……人か……?」
「ええ。会いに来てくれるんです」
「……楽しみにしておく……」
「はい!」
棟梁をはじめ、コウヤと関わりを持つユースールの人達は、コウヤの表情の変化に敏感だ。その笑顔を見て、棟梁は会いに来るのはコウヤの大切な人なんだなと理解し、興味を持った。まさか、神だとは思わないだろう。
コウヤにとっては家族だ。大切な人を紹介するという認識しかないため、引き合わせれば純粋に喜んでくれると思っている。混乱や驚愕といったものになるとは全く予想もしていない。
これには残念ながら誰も気付かないだろう。通常ならば注意するだろうベニ達やルディエも儀式の事にかかりきりになるのだから。
「では、今夜」
約束をし、コウヤはビジェとレナルカを回収して、工事現場を後にした。
◆ ◆ ◆
二日が経った。
この日の予定は午前中に視察。午後からはユースールに戻ることになる。
この二日間は大変だった。
儀式の準備については、ベニ達をはじめ、白夜部隊の面々が滞りなく進めていた。ベニ達は当然として、この儀式の記録を神子や巫女であった白夜部隊の者達は知識として知っていたらしく、ベニ達があれこれと指示を出さなくても問題なかったというのが大きいだろう。
主にルディエとサーナが白夜部隊に指示を出し、何一つ問題もなく儀式の準備を整えていった。
その間、新たに神教国の教会から参入した神官達の指導は、白夜部隊以外の神官達が行っていた。この指導だが、白夜部隊によって指導を受けた神官達であるということで、その指導は少々驚かれたというか、ドン引かれていた。
色々と常識を越えた白夜部隊直伝の指導。既にそれが当たり前だと思っている神官達は、立派に一人前だろう。
そして、魔改造されていく新規の神官達。だが、ドン引きながらも、リウム達は受け入れていた。その理由の一つが、コウヤだ。神であるコウヤが認めた教会の神官。彼らのやることが間違っているはずがない。そう思い込んだことにより、半日も指導を受ければ、キラキラとした目で指導に立ち向かうようになっていたのだ。
「次は何ですか!」
「やりきってみせますよ!」
「なんだろ……楽しくなってきた!」
神教会で使い潰されようとしていた時よりもボロボロに見えるが、心から楽しそうだ。それを見たゲン達は呆れるというか、少し恐れていた。
「なあ、コウヤ……あいつら、あんなボロボロになっても笑ってんだけど……マゾなのか? 精神面まで診てやれねえぞ?」
「大丈夫ですよ? ほら、生き生きしてます」
「いや、だからな? だからマゾなんじゃねえかって、心配してんだよ。危ない扉開けたんじゃねえの?」
「え? 扉は……色々開けちゃった方が、人生に彩りが増えますよねっ」
「開けちゃいかんの開いちまってんだよ!」
「大丈夫ですって♪」
「……」
コウヤには楽しそうだなとしか感じないので大丈夫だ。
そして、先ず視察が始まる。
*************
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よろしくお願いします◎
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