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第六章 新教会のお披露目
208 波瀾万丈な人生
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ベニは話が終わっていないのか、まだ城にいてくれているようだ。それを確認して、コウヤはエリスリリアを案内する。並んで歩くコウヤとエリスリリアの後ろには、迅速に動くために、リルファムを抱き抱えたニールと、シンリームがついてきている。
「あの子達、やっぱり期待できそうねえ」
「今頃はもう、ゲンさんに指示をもらって走り回ってるかも」
コウヤ達が上へ移動するという時。リウム達、神官は、早くエリスリリアに認められるようになりたいから手伝いをというので、ユースールのゲンの所にテンキに送ってもらったのだ。
ゲンは今も運び込まれた患者達を診ている。その手伝いをしてもらうことにしたのだ。
「ゲンさんって、薬師だったかしら? コウヤちゃんが認めた子だものねえ。きっと頑張ってくれるわ」
「うん。とっても頼りになるんだ」
コウヤが聖魔神となってから、初めて加護を与えた人。間違いなく現代で最高の薬師だ。その上、面倒見が良くて、教え方も上手い。指示の出し方も的確にできる。これほど頼りになる人はいないだろう。
「ユースールに繋がったら、絶対に会わせてちょうだい?」
「もちろんだよ」
そんな約束を口にしながらも、コウヤ達は飛んでいた。シンリームにはコウヤが魔法で保護をかけ、一気に二階分を飛ぶコースを辿っているのだ。
「楽しいわね♪ ここを改造する所、ゼストお父様が面白そうに見てたの思い出すわ~♪」
「へえ。うん。ゼストパパが好きそう。これやったの、王様だったんだよね?」
「そうよ~。教育係から逃げて~、婚約者達からも逃げてたわね~。まあ、頭はそれなりだったから、勉強も問題なかったけど。結婚相手は自分で探すって、こういう道を使って城からも抜け出してたわ。よっぽど婚約者達が嫌だったらしくてね」
エリスリリア達が興味を持つくらいの問題児だったようだ。
「選んだのが、酒場で働いて国の内情を調べてた神教国の諜報員だったのよ」
「諜報員居るんだ~」
「居るわね。ただ、コウヤちゃん達の周りには近付けてないけど」
「あ、ルー君達?」
「そう。コウヤちゃんが空飛ぶ暴走族さんにしちゃったから、最近はこの国内にも入り込めないようにしちゃてるわ~」
バイクを与えたことで、国外にも軽く出ていけるようになった。それだけの機動力があるのだ。与えられたおもちゃにはしゃいでいるということもあり、移動に時間が取られないことで、外敵の排除は驚くほど迅速にできるようになった。
もうすぐ部屋に着くという所で、一つ衝撃的な事実を教えられた。
「それで、その酒場にいた諜報員ってのが、巫女ってことが知られる前のサーナって子だったのよね~」
「……ん? サーナ……さん? 今、ルー君達と一緒に居るサーナさん!?」
「お呼びでしょうか」
「わっ、サーナさん!」
突然現れたサーナに、コウヤが思わず声を上げる。城の中ということで、油断していたとはいえ、直前まで気配に気付かなかった。
「まあっ。相変わらず、いい腕ね♪ さすがは、元諜報員だわ。影の王妃って呼ばれてただけあるわね」
「恐れいります。女神様に関心を持っていただいていたとは知らず……知っていれば、楽しんでいただけるよう努力したのですが……申し訳ありません」
真面目だ。
サーナは当然のようにエリスリリアの正体に気付いており、更には、見られていたと知っていたなら、もっと波瀾万丈な人生を送ったのにと言う。さすがはサーナ。意識が高い。
「ん? 王妃?」
気になるのはそれだ。これにエリスリリアがズバリ答えた。
「そうよん♪ 何代前かは忘れたけど、正真正銘の王妃よ。逃げまくった婚約者達の手前、国民には顔も見せずに『影の王妃』って呼ばせてたけど。ちゃんと直系を産んでる正妃さんよ♪」
「……お恥ずかしい」
サーナが照れてみせる。だが、どこからどう見ても二十代にしか見えない。そんなサーナが子持ち。それも、コウヤやシンリーム達にも通じる血縁者。驚かないはずがない。
「……っ」
あまりのことに絶句した。
「十分、波瀾万丈な人生だったわよ? 子どもが生まれてすぐに神教国に戻ってるの。その後、アレになったみたいだけど」
「アレ……あ、無魂薬の?」
「はい。一応、仮にも王妃ですので、あの国に情報は渡せません。ただ、私が王妃と知れれば、あの国は手を伸ばしてきます。それを避けるためにも、裏切り者として戻るしかなかったのです。後は……ルディエ様に助けられ、コウヤ様の知るところとなりました。本当にお恥ずかしい限りです」
「……そんなことないと思うけど……」
侯爵家の関係で自害をすすめたという話は王妃になる前らしい。それが、結婚することになる王の三代前。だが、そうなるとおかしなことに気付く。
「そういえば……サーナさんの年齢……っ、ごめんなさい。なんでもないっ」
「はい」
にっこり微笑まれた。無魂兵として保護した時に、コウヤは年齢など確認している。その時、確かに、サーナを含めた数人は年齢がおかしかった。
「ふふ。ベニちゃん達を見れば分かるでしょう? 巫女って、稀に成長がすごく遅くなるのよ。大神官とか大巫女になると更にね♪」
「あ、そっか……」
ベニ達はもう数百年生きている。それでも、タリスがいつか言ったように、少し前でも、特に容姿が変わっていなかったのだ。そう考えると理解できた。
「ふふ。私事はお気になさらず。どうぞ中へ。皆さまお待ちでございます」
そして、ドアを開けると同時にエリスリリアが駆け出した。
「ベニちゃん! 会いたかったわ~!」
「私もだよ、エリィちゃん!」
「……え?」
感動の再会らしかった。
************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、二日空きます。
よろしくお願いします◎
「あの子達、やっぱり期待できそうねえ」
「今頃はもう、ゲンさんに指示をもらって走り回ってるかも」
コウヤ達が上へ移動するという時。リウム達、神官は、早くエリスリリアに認められるようになりたいから手伝いをというので、ユースールのゲンの所にテンキに送ってもらったのだ。
ゲンは今も運び込まれた患者達を診ている。その手伝いをしてもらうことにしたのだ。
「ゲンさんって、薬師だったかしら? コウヤちゃんが認めた子だものねえ。きっと頑張ってくれるわ」
「うん。とっても頼りになるんだ」
コウヤが聖魔神となってから、初めて加護を与えた人。間違いなく現代で最高の薬師だ。その上、面倒見が良くて、教え方も上手い。指示の出し方も的確にできる。これほど頼りになる人はいないだろう。
「ユースールに繋がったら、絶対に会わせてちょうだい?」
「もちろんだよ」
そんな約束を口にしながらも、コウヤ達は飛んでいた。シンリームにはコウヤが魔法で保護をかけ、一気に二階分を飛ぶコースを辿っているのだ。
「楽しいわね♪ ここを改造する所、ゼストお父様が面白そうに見てたの思い出すわ~♪」
「へえ。うん。ゼストパパが好きそう。これやったの、王様だったんだよね?」
「そうよ~。教育係から逃げて~、婚約者達からも逃げてたわね~。まあ、頭はそれなりだったから、勉強も問題なかったけど。結婚相手は自分で探すって、こういう道を使って城からも抜け出してたわ。よっぽど婚約者達が嫌だったらしくてね」
エリスリリア達が興味を持つくらいの問題児だったようだ。
「選んだのが、酒場で働いて国の内情を調べてた神教国の諜報員だったのよ」
「諜報員居るんだ~」
「居るわね。ただ、コウヤちゃん達の周りには近付けてないけど」
「あ、ルー君達?」
「そう。コウヤちゃんが空飛ぶ暴走族さんにしちゃったから、最近はこの国内にも入り込めないようにしちゃてるわ~」
バイクを与えたことで、国外にも軽く出ていけるようになった。それだけの機動力があるのだ。与えられたおもちゃにはしゃいでいるということもあり、移動に時間が取られないことで、外敵の排除は驚くほど迅速にできるようになった。
もうすぐ部屋に着くという所で、一つ衝撃的な事実を教えられた。
「それで、その酒場にいた諜報員ってのが、巫女ってことが知られる前のサーナって子だったのよね~」
「……ん? サーナ……さん? 今、ルー君達と一緒に居るサーナさん!?」
「お呼びでしょうか」
「わっ、サーナさん!」
突然現れたサーナに、コウヤが思わず声を上げる。城の中ということで、油断していたとはいえ、直前まで気配に気付かなかった。
「まあっ。相変わらず、いい腕ね♪ さすがは、元諜報員だわ。影の王妃って呼ばれてただけあるわね」
「恐れいります。女神様に関心を持っていただいていたとは知らず……知っていれば、楽しんでいただけるよう努力したのですが……申し訳ありません」
真面目だ。
サーナは当然のようにエリスリリアの正体に気付いており、更には、見られていたと知っていたなら、もっと波瀾万丈な人生を送ったのにと言う。さすがはサーナ。意識が高い。
「ん? 王妃?」
気になるのはそれだ。これにエリスリリアがズバリ答えた。
「そうよん♪ 何代前かは忘れたけど、正真正銘の王妃よ。逃げまくった婚約者達の手前、国民には顔も見せずに『影の王妃』って呼ばせてたけど。ちゃんと直系を産んでる正妃さんよ♪」
「……お恥ずかしい」
サーナが照れてみせる。だが、どこからどう見ても二十代にしか見えない。そんなサーナが子持ち。それも、コウヤやシンリーム達にも通じる血縁者。驚かないはずがない。
「……っ」
あまりのことに絶句した。
「十分、波瀾万丈な人生だったわよ? 子どもが生まれてすぐに神教国に戻ってるの。その後、アレになったみたいだけど」
「アレ……あ、無魂薬の?」
「はい。一応、仮にも王妃ですので、あの国に情報は渡せません。ただ、私が王妃と知れれば、あの国は手を伸ばしてきます。それを避けるためにも、裏切り者として戻るしかなかったのです。後は……ルディエ様に助けられ、コウヤ様の知るところとなりました。本当にお恥ずかしい限りです」
「……そんなことないと思うけど……」
侯爵家の関係で自害をすすめたという話は王妃になる前らしい。それが、結婚することになる王の三代前。だが、そうなるとおかしなことに気付く。
「そういえば……サーナさんの年齢……っ、ごめんなさい。なんでもないっ」
「はい」
にっこり微笑まれた。無魂兵として保護した時に、コウヤは年齢など確認している。その時、確かに、サーナを含めた数人は年齢がおかしかった。
「ふふ。ベニちゃん達を見れば分かるでしょう? 巫女って、稀に成長がすごく遅くなるのよ。大神官とか大巫女になると更にね♪」
「あ、そっか……」
ベニ達はもう数百年生きている。それでも、タリスがいつか言ったように、少し前でも、特に容姿が変わっていなかったのだ。そう考えると理解できた。
「ふふ。私事はお気になさらず。どうぞ中へ。皆さまお待ちでございます」
そして、ドアを開けると同時にエリスリリアが駆け出した。
「ベニちゃん! 会いたかったわ~!」
「私もだよ、エリィちゃん!」
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