ウソツキ彼女とニセモノ彼氏

武井戸 えあ

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番外編・ホンモノ彼氏

ホンモノ彼氏・その8 彼Side※

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「あ、すげーうまい!求めてた味!」

俺が褒めるとまんざらでもない表情になった。

「そ、そう?良かった」

「うまい。特にカツ」

「…ちょっと!カツは私が作ったやつじゃない!」

はは、と笑いながらもあっという間に食べ終わる。

ごちそうさま、と手を合わせて箸を置く。

「———それじゃ」
俺は希望の顔を覗き込んだ。
「食べ終わったし、落ち着いて話そっか?」

きちんと女の子と長期間付き合った経験がない俺でも、こういう事は長引けばめんどくさくなるのはさすがに分かる。

揉めた時にきちんと話し合ってわだかまりは無くしとくのが最善策。

「…」

見るとまだ頬を膨らませている。

「…まだ怒ってんの?」

「…だって…」

そんなに経験人数が気になるだろうか。

付き合う相手の事を知りたいと思うのは分かるけど、過去を知って過去に嫉妬して現在の恋愛に影響するなんて本末転倒だと思う。

そこまで考えて顎に手をやった。

あ、そっか。

「嫉妬?」

「バッ…」
俺の言葉に希望が反応した。
「…カじゃないの!思ってたより人数多くてドン引きしてるだけだから!ガツガツしてるし、コイツ病気持ってそうだなぁって、付き合う事になったの後悔してるだけだから!」

真っ赤になって否定しているその顔、ホントかわいい。
希望の良さに気づいてなくてビビってる村山にも見せてやりたい。

最近クールな仮面は俺の前だとたまにどっかに行っちゃっている。

「さっきも言ったけど、人数はそんなに多くない。でも人によって基準が違うから、これ以上追求するのは意味ないし、やめよ。ガツガツは好きな子にしかしません!病気は持ってません!これからもちゃんとゴムはつけます。清潔な手で触ります。大事にします!これでいい?」

「そっ、そういう問題じゃない!」

端的に質問に答えたつもりだったけど、受け付けてもらえなかった。

「じゃあ何」

「…エロいし」

「エロくない男なんていんの」

「女の子大好きだし」

「女の子大好きじゃない男なんていんの」

「誰とでもやるし」

「もう誰とでもやらない!希望としかしない!」

何なの?この押し問答。

ホント女子ってめんどくさい。

いくら弁明しても通じない気がする。

駄々こねて、好きって言ってもらわないと安心できないのかなぁ。

「…友海にフラれたのがショックで他の女の子と遊んじゃうくらい、友海のこと好きだったんでしょ…?」

俺はハァー、とため息ついて、
「遊んじゃうくらい好きってそんなわけ…」ないじゃん、と続けようとして止まる。

ん?何の話?

「だってフラれて自暴自棄に、って…」

希望が俯いた。

そういやそんな事言ったっけ。

言った気がする。

女の子と遊んだのを責められて、言い訳みたいな?

「それだけ好きだったって事だよね?友海を」

…気にするの、そこ!?

俺はあんぐりと口を開けた。

「前も終わってるとか奪うつもりはないとか言ってたけど、それだけ好きだったなら、諦めきれないとこ残ってるよね?同じクラスで近くにいて、しかも席替えして隣になってるし」

そう、夏休みの登校日に休んでいた俺の知らない間に席替えがあっていて、左隣の席は友海になっていた。

けど、別にそれだけ。

全然気にしてなかった。

「おー、よろしく」みたいな。

「付き合ってる時は意外と真面目だったって友海から聞いてたのに、フラれた後合コンの帝王になるくらい好きだったって…」

何、その滋養強壮ドリンクみたいな変な呼び名。

それよりも、これって。

「…ヤキモチ?」

「…だから違う!」

いや、どう考えてもやっぱりヤキモチでしょ。

俺は移動して、テーブルのコーナーを挟んで隣にいる希望に近づく。

「大体、クラスのみんなの前では自分がフッたみたいに強がっといて、実は友海の方からフラれてるっていう…待って、何でこっち来てんの?」

「え、キスしようかなって」その肩に手を置く。

「は!?アンタ馬鹿じゃないの!私の話聞いてた!?」

「うん、俺の事が好きで好きでヤキモチ妬いてるっていう話だろ」

「はぁ!?どこをどうしたらそうなんのよ!」

手を乗せた肩ごと押し返される。

昔の、誰かもよく分からない一回限りの経験相手にも、諦めてるって何回も言ってるのに同じクラスの俺の友達の彼女にも、ヤキモチ妬いてふてくされるなんてかわいすぎる。

そういう事だよね?

たまぁに現代文の解釈が大幅に間違えてたりして、配点が高い回答を落としたりする。

文の裏の意味を考えたりするの超苦手。

5教科の中でも国語が一番苦手な俺だけど、この解釈だけはさすがに間違えてないと思う。

「もう!アンタの節操の無さを言ってるのに何でそうなるの!?」

うん、もう建前はそれでいいよ。

もう、俺の事が好きで好きでしょうがないって事でいいじゃん。

「ちょっと何で乗っかってきてんの?!」

そのまま押し倒して、上にのしかかったら怒られた。

「え?俺の事好きだよね?」

「そんな事言ってない!」

「じゃあ嫌い?」

下にいる希望を潰さないように肘をついて見つめる。

「…き、嫌い…とは、言ってないけど…」

あー、ホントかわいい。

「好きだよ」

そのままぎゅっと抱きしめると大人しくなった。

「大事にするから」

目を見て誓ってみるけど、その顔は全然信じてない。

手強いなぁ。

そういうところも好きなんだけど。

「機嫌なおして」

その頬にチュッと軽くキスをする。

「もう…ちょっとどいてよ…」

そう言いながら押し返すその手にはもう力が全然入ってない。

「該当案件の保留を解除してくれたらどきます」

「何それ」そう言いながらその顔はもう怒ってない。

「…」
希望は黙ったあと、赤らめた顔でコク…と頷いた。

それを見てから、そのピンク色のかわいい唇にチュッと短く口づけを落とした。

見つめ合ったまま何回か繰り返すとそのうち希望の唇が少し開いたので、それを合図に舌を滑りこませた。

さっきまでの控えめな受け身のキスではなかった。

その蕩けた顔をもっと蕩けさせたい。

キスしながらスカートの中に手を滑り込ませるとビクッとして足を閉じた。

しかしその力の入っている足と足の隙間から触ると下着はすでに湿り気を帯びていた。

さっきの名残かな…それとも今のキスだけでもう?

「…すごい事なってるね?」

俺が言うと恥ずかしそうに肩のあたりに顔を押しつけた。

「もう…ホントそういうの口に出すのやめて」

でも言われると興奮すんだよね?

あれだけすごい事を今までやっといて、処女のように恥ずかしがるのがたまらない。

温かい彼女の中に指を滑り込ませて表情を見ながら探り当てていくこの瞬間が好きだ。

世間一般的な、セックスに関する情報は溢れかえっているけど、完全マニュアルがある訳じゃないし、それが希望に当てはまる訳じゃない。

自分の愛し方が正解かどうかをその声や態度を見ながら確かめていくのが本当に楽しくて愛おしくて好きだ。


「ん…っ…」
ギュッと半袖のシャツの肩あたりを掴まれ、一生懸命声を我慢しているその姿を見下ろした。

もっともっと気持ちよくなったらいい。

動きに合わせて狭かった中が広がったりまたキツくなったりするのが伝わる。
そろそろかな。

「…ちょっと待って…」

切なそうに見上げてくるそのトロンとした目に見惚れていたのも束の間。

「…一人じゃなくて一緒に気持ちよくなりたい」

息も絶え絶えに頼まれて指を動かすのを止めた。

…もう…ホント…実は狙ってるんじゃないかなぁ。

あざとかわいいならぬ、あざとエロい?

一体こんなのどこで覚えてくるんだろう。

結構初めから隠れエロかったから、あのおっさんの時からだったらムカつくな。

ため息と一緒に邪念を吐き出しつつ、さっきポケットから出してテーブルの上に置いていたゴムの包装を開けて、ズボンと下着を下ろしてあっという間に装着した。

できれば裸で抱き合って体温感じたいけどそんな時間ももったいない。

急かされるように制服のまま、足を絡めてくる。

痛くないようにゆっくりと押し入りながら、同時に唇も塞いだ。

初っ端から来る大きな快感と温かさに打ち震えながら、その波に飲み込まれないようにキスに集中する。

今までキスをしながら入った事はないから、その麻薬みたいな甘美な刺激に一層興奮した。

「すごい…あったかい…」

包み込まれ、思わず唇の隙間からつぶやいてぎゅう、と抱きしめる。

「んっ…」

必死にしがみついてくるそのかわいい姿を見る余裕がなかった。

両思いでする行為が、キスが、こんなに気持ちいいなんて知らなかった。
今まで何回もしてきたものをアッサリと超えた。

「好き」
希望が俺の首に腕を回して、まるで振り落とされないようにさらにしがみついてくる。

「ん…俺も好き」

…あぁ、やばい。持たない。
快感の波がすぐそこまで来ているのが分かる。

いつもより全然早い。

「んっ…あ…イキそ…」


「…っ」
きっと俺たちがした中では一番最速で最短だった。
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