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第二章:すれちがい
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同窓会の会場は一流ホテルの広間で、萌は入り口の段階ですでに気後れしてしまって立ち止まる。
「萌?」
履き慣れないヒールのあるミュールにふら付く彼女の背中を支えていた一美が、怪訝そうに見下ろしてくる。スーツをきっちり着こなした彼はとても素敵で、煌びやかなホテルを背景にしても、少しも遜色ない。
「あの……わたし、やっぱり……」
「担いで運び込んでもいいんだぞ?」
「……はい……」
か細い声で返事をした萌に、一美が苦笑する。
「そんなに緊張しなくても、君は何か美味いものを食ってたらいい。ああ、酒は絶対に口にするなよ? 特に、俺が隣にいない時には」
かつて醜態を晒してしまった身としては、彼の最後の言葉には頷くしかない。
「立食だから、気楽にいけよ」
再び背を押されて、萌は一歩を踏み出した。
中では給仕がトレイに様々な飲み物を載せて歩き回っている。一美はそこからワインとオレンジジュースを取ると、当然のことながら、オレンジジュースを萌に差し出した。
それに口をつけようとした萌に、明るい――というより軽い、声がかかる。
「やあ、萌ちゃん、可愛いね。そういうの、新鮮だなぁ。一美の見立て? 趣味いいね」
つらつらとそう言いながら手を振ってきたのは、朗だ。
「有田先生、こんばんは」
知った顔に思わずホッと笑顔になった萌に、彼も笑い返してくる。
「こんばんは。でも、こういう席で、男にそんな顔向けたら良くないよ? こいつがやきもち妬くから」
「お前が相手で、誰が妬くか」
「そうだよねぇ、他のヤツだったら、メラメラだけどね」
ニヤニヤしながら言う朗に、一美は呆れたように肩をすくめた。
きっと、何をバカなことを、と思っているのだろうと萌は納得する。
一美がそんなことでやきもちを妬くなんて、想像もできなかった。
そんな彼らの会話の中に、また、別の声が飛び込んでくる。今度は複数だ。
「岩崎君、朗、久し振り!」
「二人とも変わってないねぇ」
「元気ぃ?」
新たな参入者は三人の女性で、誰も皆、成熟した美人ばかりだ。
その中の一人が、萌に目を留める。そして、至極当然の台詞を口にした。
「こちらは、どちらかの妹さん? 可愛いわね」
「そうでしょ? オレの――」
「俺の付き合っている相手だ」
朗が余計なことを口にする前に、一美がその台詞をひったくるようにして宣言する。
刹那、女性陣は、揃って絶句した。
「ええっと……カノジョ?」
しばしの無言の後、中の一人が確認するように問いかける。一美は、それに泰然と答えた。
萌の肩を抱き寄せながら。
「そうだ」
「へえ……」
一美の腕の中にいても、萌は注がれる視線にいたたまれなくなる。彼女達はしばらく萌と一美を交互に見やっていたが、やがて誰からともなく離れていった。
「あの……」
萌はおずおずと彼を見上げながら声をかける。
「何だ?」
「あの、肩を……」
「ああ、すまない。食事を取りに行ってくるといい」
一美は手を放すと萌を料理が並ぶカウンターへと向き直らせた。
「その間に、俺は教授に挨拶してくる。すぐに戻るから、料理を取ったらここで待っていろよ?」
「あ、オレもウチの教授のとこに行ってこないと。じゃあ、またね」
それぞれの用を足しに行く二人の背中を見送って、萌はどうしようかと迷う。
緊張している所為か、お腹はあまり空いていない。でも、何も食べていなければ、一美が心配するだろう。
何か軽いものだけでも、と彼女は料理に向かった。
野菜や魚介のあっさりしたものを選んで皿に取ると、先ほど一美といたテーブルに戻る。
彼はまだ帰ってきておらず、グルリと見渡すと、離れた場所で年配の男性と話している後姿が目に入った。
大勢の中でも一際目立つその背中を見つめながら、萌は皿をつつく。
そんな彼女に、声がかけられた。
「ねえ、あの、あなた……?」
振り返った先には、先ほどの三人の女性が立っている。
「あ、小宮山萌です」
一美も朗もいないのに、いったい何の用かと首を傾げつつも萌は応えた。
「萌ちゃん――萌ちゃんでいいかしら? あなた、岩崎君の彼女って、本当?」
「え、あ、はい、一応……お付き合いを……」
――している筈。
その筈だけれども、断言する勇気が持てないまま、声は尻すぼみになってしまう。しかし、三人はあやふやな萌の返事に深く突っ込むことはせず、あっけらかんと笑顔になった。
「そうなんだぁ……随分、好みが変わったというか……。あ! まさか、未成年じゃないわよね?」
「いえ、もうすぐ二十二になります」
「ってことは、まだ二十一なんだ……一回り違うのね」
そう言って、彼女たちは顔を見合わせる。
「じゃあ、別にジュースじゃなくてもいいんじゃない?」
「そうそう、ほら、こっちを飲みなさいよ」
言いながら、淡い琥珀色の液体が入ったグラスを差し出してくる。
流れから言って、間違いなくアルコールだ。
萌は初対面の相手からの勧めと一美との約束との間で惑う。けれど、相手は初対面とは言え、一美の古い知り合いだ。
彼の知人の誘いを断って彼に恥をかかせるのと、彼との約束を破って後で彼に怒られるのと。
どちらがいいかと考えて、萌は結局後者を選ぶ。
グラスを受け取り、口を付けると、液体が喉を転がり落ちていくと同時に、カッと熱くなった。
彼女たちも思い思いに飲み物を口に運び、切り出してくる。
「あの、さ、薄々勘付いてると思うけど、私達、学生の頃に彼と付き合ってたのよね」
それは、多分そうだろうな、と萌は言われる前から察しがついていた。
自然、俯きがちになる。
萌の落ち込みを悟ったのか、彼女たちは慌てたように続けた。
「ああ、でも、誤解しないでね。結構、こっぴどい別れ方したから、未練とかはないのよ、全然」
「そうそう、熱が冷めたら、もう、二度と付き合うもんかって感じよね」
「ああ……言えてる。のぼせてる間は、もう、まさに『恋は盲目』だったんだけどねぇ……」
美女三人はしみじみとした口調で頷き合った。そして、また萌に目を向ける。
「でも、今日の岩崎君、何か違ってたわ。年取って丸くなったのかしらねぇ……? こう、『護ってる』って感じだったわよね。あんな彼、見たことなかったわ」
彼女たちは、いかにも面白いものを見た、とばかりにクスクスと笑う。
萌はボウッとし始めた頭で、その台詞を反芻するが、うまく考えがまとまらない。
と、一人が「あ」、と声を上げた。
「鬼が帰ってくる。退散しようか。じゃあね、ええと、萌ちゃん」
三人は萌に手を振ると、いそいそと足早に立ち去っていく。それと入れ替わりで、背後から声がかけられた。
「萌? あの三人は、何を?」
萌は振り返って、三人の姿を目で追っている一美を見上げる。
「その……前に、お付き合いしてたとか……」
「余計なことを……」
小さく舌打ちした一美だが、ふと、萌が手にしているグラスに気が付いて眉をしかめた。
「君、ワインを飲んだのか?」
言われて、萌は手元に目を落とした。ちびちびと口にして、気付けば、グラスの中身は半分以上がなくなっている。
何だか、頭がふわふわした。
「のみますよ、だって、わたしはオトナですから」
「……舌が回ってないぞ」
「そんなこと、ないですよ」
言った傍から、ふら付いた。すかさず一美の腕が伸びて、彼女の腰に回される。
「なんですか?」
「転びそうだ」
「だいじょうぶです。ひとりでたてます」
言いながら彼の腕をグイグイと押しやろうとするけれど、びくともしない。そうなると、尚更ムキになってくる。
「いいから、肝心の用は終わったし、帰るぞ」
「は、な、し、て、く、だ、さ、い!」
「まったく……だから飲むなと言ったのに」
やれやれ、といった調子で呟くと、一美は肩に担ぐようにして、ヒョイと萌を片腕に抱き上げた。そうして、スタスタ歩き出す。
「せんせい! おろしてください! あるけますってば!」
「こっちの方が早い」
「また、こんな、こどもあつかいして!」
カッとなった萌は腕を突っ張って一美を睨み付けた。
そして。
「わたしは、こどもじゃ、ないんですから!」
両手で彼の頬を挟むと、彼の唇に自分のそれを押し付けた――ただ、押し付けただけだ。
二人の姿が見える範囲にいる者は、皆、シンと静まり返ってその様を凝視している。
一分は経った頃、萌はパッと身を離した。
「ね、こどもじゃないんです」
そう残して、くたりと彼にしなだれかかる。意識はそこでフツリと途切れた。
「まったく……どうしろと言うんだ?」
一人現実に置き去りにされ、衆人環視の的になった一美がそう呟いたことも、萌は知らない。
その後の彼女は、穏やかな眠りに浸るだけだった。
「萌?」
履き慣れないヒールのあるミュールにふら付く彼女の背中を支えていた一美が、怪訝そうに見下ろしてくる。スーツをきっちり着こなした彼はとても素敵で、煌びやかなホテルを背景にしても、少しも遜色ない。
「あの……わたし、やっぱり……」
「担いで運び込んでもいいんだぞ?」
「……はい……」
か細い声で返事をした萌に、一美が苦笑する。
「そんなに緊張しなくても、君は何か美味いものを食ってたらいい。ああ、酒は絶対に口にするなよ? 特に、俺が隣にいない時には」
かつて醜態を晒してしまった身としては、彼の最後の言葉には頷くしかない。
「立食だから、気楽にいけよ」
再び背を押されて、萌は一歩を踏み出した。
中では給仕がトレイに様々な飲み物を載せて歩き回っている。一美はそこからワインとオレンジジュースを取ると、当然のことながら、オレンジジュースを萌に差し出した。
それに口をつけようとした萌に、明るい――というより軽い、声がかかる。
「やあ、萌ちゃん、可愛いね。そういうの、新鮮だなぁ。一美の見立て? 趣味いいね」
つらつらとそう言いながら手を振ってきたのは、朗だ。
「有田先生、こんばんは」
知った顔に思わずホッと笑顔になった萌に、彼も笑い返してくる。
「こんばんは。でも、こういう席で、男にそんな顔向けたら良くないよ? こいつがやきもち妬くから」
「お前が相手で、誰が妬くか」
「そうだよねぇ、他のヤツだったら、メラメラだけどね」
ニヤニヤしながら言う朗に、一美は呆れたように肩をすくめた。
きっと、何をバカなことを、と思っているのだろうと萌は納得する。
一美がそんなことでやきもちを妬くなんて、想像もできなかった。
そんな彼らの会話の中に、また、別の声が飛び込んでくる。今度は複数だ。
「岩崎君、朗、久し振り!」
「二人とも変わってないねぇ」
「元気ぃ?」
新たな参入者は三人の女性で、誰も皆、成熟した美人ばかりだ。
その中の一人が、萌に目を留める。そして、至極当然の台詞を口にした。
「こちらは、どちらかの妹さん? 可愛いわね」
「そうでしょ? オレの――」
「俺の付き合っている相手だ」
朗が余計なことを口にする前に、一美がその台詞をひったくるようにして宣言する。
刹那、女性陣は、揃って絶句した。
「ええっと……カノジョ?」
しばしの無言の後、中の一人が確認するように問いかける。一美は、それに泰然と答えた。
萌の肩を抱き寄せながら。
「そうだ」
「へえ……」
一美の腕の中にいても、萌は注がれる視線にいたたまれなくなる。彼女達はしばらく萌と一美を交互に見やっていたが、やがて誰からともなく離れていった。
「あの……」
萌はおずおずと彼を見上げながら声をかける。
「何だ?」
「あの、肩を……」
「ああ、すまない。食事を取りに行ってくるといい」
一美は手を放すと萌を料理が並ぶカウンターへと向き直らせた。
「その間に、俺は教授に挨拶してくる。すぐに戻るから、料理を取ったらここで待っていろよ?」
「あ、オレもウチの教授のとこに行ってこないと。じゃあ、またね」
それぞれの用を足しに行く二人の背中を見送って、萌はどうしようかと迷う。
緊張している所為か、お腹はあまり空いていない。でも、何も食べていなければ、一美が心配するだろう。
何か軽いものだけでも、と彼女は料理に向かった。
野菜や魚介のあっさりしたものを選んで皿に取ると、先ほど一美といたテーブルに戻る。
彼はまだ帰ってきておらず、グルリと見渡すと、離れた場所で年配の男性と話している後姿が目に入った。
大勢の中でも一際目立つその背中を見つめながら、萌は皿をつつく。
そんな彼女に、声がかけられた。
「ねえ、あの、あなた……?」
振り返った先には、先ほどの三人の女性が立っている。
「あ、小宮山萌です」
一美も朗もいないのに、いったい何の用かと首を傾げつつも萌は応えた。
「萌ちゃん――萌ちゃんでいいかしら? あなた、岩崎君の彼女って、本当?」
「え、あ、はい、一応……お付き合いを……」
――している筈。
その筈だけれども、断言する勇気が持てないまま、声は尻すぼみになってしまう。しかし、三人はあやふやな萌の返事に深く突っ込むことはせず、あっけらかんと笑顔になった。
「そうなんだぁ……随分、好みが変わったというか……。あ! まさか、未成年じゃないわよね?」
「いえ、もうすぐ二十二になります」
「ってことは、まだ二十一なんだ……一回り違うのね」
そう言って、彼女たちは顔を見合わせる。
「じゃあ、別にジュースじゃなくてもいいんじゃない?」
「そうそう、ほら、こっちを飲みなさいよ」
言いながら、淡い琥珀色の液体が入ったグラスを差し出してくる。
流れから言って、間違いなくアルコールだ。
萌は初対面の相手からの勧めと一美との約束との間で惑う。けれど、相手は初対面とは言え、一美の古い知り合いだ。
彼の知人の誘いを断って彼に恥をかかせるのと、彼との約束を破って後で彼に怒られるのと。
どちらがいいかと考えて、萌は結局後者を選ぶ。
グラスを受け取り、口を付けると、液体が喉を転がり落ちていくと同時に、カッと熱くなった。
彼女たちも思い思いに飲み物を口に運び、切り出してくる。
「あの、さ、薄々勘付いてると思うけど、私達、学生の頃に彼と付き合ってたのよね」
それは、多分そうだろうな、と萌は言われる前から察しがついていた。
自然、俯きがちになる。
萌の落ち込みを悟ったのか、彼女たちは慌てたように続けた。
「ああ、でも、誤解しないでね。結構、こっぴどい別れ方したから、未練とかはないのよ、全然」
「そうそう、熱が冷めたら、もう、二度と付き合うもんかって感じよね」
「ああ……言えてる。のぼせてる間は、もう、まさに『恋は盲目』だったんだけどねぇ……」
美女三人はしみじみとした口調で頷き合った。そして、また萌に目を向ける。
「でも、今日の岩崎君、何か違ってたわ。年取って丸くなったのかしらねぇ……? こう、『護ってる』って感じだったわよね。あんな彼、見たことなかったわ」
彼女たちは、いかにも面白いものを見た、とばかりにクスクスと笑う。
萌はボウッとし始めた頭で、その台詞を反芻するが、うまく考えがまとまらない。
と、一人が「あ」、と声を上げた。
「鬼が帰ってくる。退散しようか。じゃあね、ええと、萌ちゃん」
三人は萌に手を振ると、いそいそと足早に立ち去っていく。それと入れ替わりで、背後から声がかけられた。
「萌? あの三人は、何を?」
萌は振り返って、三人の姿を目で追っている一美を見上げる。
「その……前に、お付き合いしてたとか……」
「余計なことを……」
小さく舌打ちした一美だが、ふと、萌が手にしているグラスに気が付いて眉をしかめた。
「君、ワインを飲んだのか?」
言われて、萌は手元に目を落とした。ちびちびと口にして、気付けば、グラスの中身は半分以上がなくなっている。
何だか、頭がふわふわした。
「のみますよ、だって、わたしはオトナですから」
「……舌が回ってないぞ」
「そんなこと、ないですよ」
言った傍から、ふら付いた。すかさず一美の腕が伸びて、彼女の腰に回される。
「なんですか?」
「転びそうだ」
「だいじょうぶです。ひとりでたてます」
言いながら彼の腕をグイグイと押しやろうとするけれど、びくともしない。そうなると、尚更ムキになってくる。
「いいから、肝心の用は終わったし、帰るぞ」
「は、な、し、て、く、だ、さ、い!」
「まったく……だから飲むなと言ったのに」
やれやれ、といった調子で呟くと、一美は肩に担ぐようにして、ヒョイと萌を片腕に抱き上げた。そうして、スタスタ歩き出す。
「せんせい! おろしてください! あるけますってば!」
「こっちの方が早い」
「また、こんな、こどもあつかいして!」
カッとなった萌は腕を突っ張って一美を睨み付けた。
そして。
「わたしは、こどもじゃ、ないんですから!」
両手で彼の頬を挟むと、彼の唇に自分のそれを押し付けた――ただ、押し付けただけだ。
二人の姿が見える範囲にいる者は、皆、シンと静まり返ってその様を凝視している。
一分は経った頃、萌はパッと身を離した。
「ね、こどもじゃないんです」
そう残して、くたりと彼にしなだれかかる。意識はそこでフツリと途切れた。
「まったく……どうしろと言うんだ?」
一人現実に置き去りにされ、衆人環視の的になった一美がそう呟いたことも、萌は知らない。
その後の彼女は、穏やかな眠りに浸るだけだった。
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