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409話 ふたりの妹の再会

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静里菜せりなー!」

 優羽花ゆうかは突如自分の前に現れた静里菜せりなを見るや否や、
 全力で駆け寄って、その華奢な身体を抱き締めた。
 静里菜せりなは、そんな優羽花ゆうかを受け止めると
 右手を彼女の後頭部に添えて優しく撫でる。

静里菜せりな静里菜せりなあ…」

「…あら?
優羽花ゆうかったら泣いているのですか?
普段は強気なのに、
いざとなると気弱になるのは相変わらずですね」

「だ、だって…
久し振りの再会なんだよ静里菜せりな
だいたい、静里菜せりなだって目がウルウルしているんじゃないのよっ!」

「ふふっ…これはいけないですね。
優羽花ゆうかの泣き虫な所がわたしにもうつってしまいました」

「こらっ、静里菜せりなぁ!」

 優羽花ゆうか静里菜せりなを羽谷締めにする。

「…ふふふっ」

「…あははっ」

 ふたりは久方振りの再会を喜んで、
 お互い笑い合った。


「それにしても優羽花ゆうか
わたしが本物のわたしだと云う事がよくわかりましたね?」

「…本物?
何それ?」

「今わたしと優羽花ゆうかがいる此処は、
優羽花ゆうかの夢の世界をもとにして造り上げた精神世界。
あやかしとの戦いに常に身を投じて
現世とは外れたセカイにも慣れていた兄さんならいざ知らず、
その様なセカイとは無縁の優羽花ゆうかでは
此処は夢の中の続きと認識するのが普通でしょう。

ですから…優羽花ゆうかにはまず、
この精神世界について説明をするつもりだったのですが、
先に優羽花ゆうかのほうから
わたしが夢の世界の人物では無く
本物だと一目で見分けるなんて…」

「…???
わたしには静里菜せりなの言っている事は良くわからないけれど…
静里菜せりな静里菜せりなでしょ?
わたしが静里菜せりなを見間違えるなんて事、
ある訳無いじゃない!」

「…ふふっ、そういう頭で考えずに直感で解るところが
優羽花ゆうかの凄い所です。
わたしには決して真似出来ませんね」

「…んー?
それってわたしが何も考えていないって言ってない?
ちょっと静里菜せりな
あたしのこと少しバカにしてるでしょお!」

「く苦しいです…
そんなことは決してありませんから優羽花ゆうかあ!」

 優羽花ゆうかは怒りの言葉を述べて
 再び静里菜せりなを羽谷締めにする。
 そして静里菜せりなは苦し気な言葉を述べて抵抗した。
 だが、言葉とは裏腹に彼女たちの表情かおには笑顔が浮かんでいた。

 鳴鐘 慧河なるがね けいがの16年来のふたりの妹は、
 仲の良い猫の様にじゃれ合うのであった。
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