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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第38章 アリーシャ、元新魔王とのバトルに突入する
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その宣戦布告の直後、ブランの身を包む白金の光が、ブワッと勢いを増す。
それはミクトラースと同様、身体に沿って上昇し、頭上に天使の輪を生んだ。
ブランはすっと右手を上げ、その輪に人差し指をくぐらせる。
「エンゼルリング・アクション!」
叫ぶと同時に、ブランは人差し指で弧を描き、天使の輪を投げつけて来た。
「ヒょエェッ!? それって、外して飛ばせるの!?」
天使の輪は、まるでブーメランのように私たちを襲う。
「ぐぁっ!」「ぃきゃッ!?」「……っ!」「きゃあっ!」「ぃや~ん!」
恐ろしいことに、全体攻撃だ。
……って言うか、今、一人増えてなかった?
「ぃや~ね。タイミング最悪な時に合流しちゃったみたい」
ポリポリ頭を掻きながら、尻もちから起き上がったのは……
「ヴィヴィアンヌさん!」
「ヴィヴィちゃん!無事だったのね!」
「私があんなウマ男にヤられるわけないじゃない。このマスク使って、自分の催眠ガスで眠らせてやったわよ!」
そう言ってヴィヴィアンヌは、例の鳥の嘴型マスクを被ってみせる。
「……にしても、厄介な状況ね~。アレ、人格からして変わっちゃってるわよ。シトリーンちゃんやアリーシャちゃんに容赦なく攻撃して来たのも、その証拠」
ヴィヴィアンヌはじっとブランを見つめ、そう分析する。
「ここは、まず俺が前衛で攻撃する。君たちは後方から防御と回復に努めてくれ!」
レッドはそう言い、勇ましくブランに向かって行くが……そのスピードは相変わらず、呪いで極端にトロくなったままだ。
「ちょっ……レッド!大丈夫!?」
ハラハラしながら見守っていると、レッドの攻撃は浅手しか負わせられず、逆にブランに思いきり胴を打撃されていた。
「全然、大丈夫そうじゃないわね~。さすがに、呪いの防具で大天使に挑むのは、ムチャが過ぎるわ~」
「鎧も、もうだいぶボロボロで、壊れちゃいそう……。あれで、ダメージを防げるのかな……?」
私がハラハラしたままそう言うと、シトリーンがキラリと目を輝かせた。
「それよ!」
「えっ?」
疑問の声を上げるが、答えはもらえず、シトリーンはレッドに向かって走り出した。
「勇者君!ちょっと衝撃に備えてくれる?」
「はっ?」
レッドはわけが分からないながらも、反射のように身構える。
そこへシトリーンが爪を振りかざして飛びかかった。
「ちょ……っ、シトリーンさん!? 何やって……」
凄まじい衝撃音が響いた直後、レッドの鎧はパーツごとに分解され、派手な音を立てて床に散らばった。
「え……?鎧、壊れちゃったじゃないですか!」
私はシトリーンの突飛な行動に、思わず文句を言う。
だが、レッドはなぜか目を輝かせた。
「すごい……。身体が軽い!やっと、呪いの鎧から解放されたんだ!」
レッドは見違えるように軽々した動きで、剣を構え直す。
「もう、これまでのようには行かないぞ!覚悟しろ!」
……だが、その格好は半袖シャツと短パンだけ。
初めて会った時よりも、さらにラフな……明らかに下着姿だ。
はっきり言って、あまり様にはなっていない。
「ちょっと待ちなさい。さすがに防御力ゼロで戦わせられないわよ。……ヴィヴィちゃん」
シトリーンがヴィヴィアンヌに目配せすると、ヴィヴィアンヌは「心得た」とばかりに杖を取り出した。
「魔法で防御力を一時的に上げるわよ~。強固な石の戦術!」
ヴィヴィアンヌが杖を振ると、レッドの身体を淡い光の膜が包み込んだ。
「ありがとうございます!これなら……行ける!」
半袖短パンの勇者は、ブラン目がけて走り出すと、勢いそのままにジャンプした。
「高……っ!レッドの身体能力って、あんなにスゴかったんだ……」
レッドはそのままブランの頭上から剣を振り下ろす。
ブランはとっさに腕で庇ったが、その腕にはザックリと大きな傷が刻まれた。
「……なるほど。さすがは "勇者" と言うことか」
ブランは眉ひとつ動かさずにそう呟くと、もう片方の手で傷をスッと撫でた。
ほんのそれだけの動作で、あれほど酷かった傷が跡形も無く消えていく。
「アラララ……。さすがに天使様だけあって、回復魔法はお得意みたいねー……」
「……って言うか、なりゆきでバトル突入してるけど、いいの?ブランさん倒しちゃっても……」
「どの道、あの子は戦うつもりみたいよ。多少痛い目を見せなきゃ、正気に戻らないんじゃないかしら?」
周りの皆は、もうすっかり戦う気満々だ。
その様子を見て、私は悟る。
……これは、アレだ。
イベント的に、強制バトル突入なヤツだ。もう戦闘は避けられないヤツだ。
だったら、もう思いきり行くしかないか……。
覚悟を決め、私は叫ぶ。
「力を貸して! "アフロちゅうい" !」
それはミクトラースと同様、身体に沿って上昇し、頭上に天使の輪を生んだ。
ブランはすっと右手を上げ、その輪に人差し指をくぐらせる。
「エンゼルリング・アクション!」
叫ぶと同時に、ブランは人差し指で弧を描き、天使の輪を投げつけて来た。
「ヒょエェッ!? それって、外して飛ばせるの!?」
天使の輪は、まるでブーメランのように私たちを襲う。
「ぐぁっ!」「ぃきゃッ!?」「……っ!」「きゃあっ!」「ぃや~ん!」
恐ろしいことに、全体攻撃だ。
……って言うか、今、一人増えてなかった?
「ぃや~ね。タイミング最悪な時に合流しちゃったみたい」
ポリポリ頭を掻きながら、尻もちから起き上がったのは……
「ヴィヴィアンヌさん!」
「ヴィヴィちゃん!無事だったのね!」
「私があんなウマ男にヤられるわけないじゃない。このマスク使って、自分の催眠ガスで眠らせてやったわよ!」
そう言ってヴィヴィアンヌは、例の鳥の嘴型マスクを被ってみせる。
「……にしても、厄介な状況ね~。アレ、人格からして変わっちゃってるわよ。シトリーンちゃんやアリーシャちゃんに容赦なく攻撃して来たのも、その証拠」
ヴィヴィアンヌはじっとブランを見つめ、そう分析する。
「ここは、まず俺が前衛で攻撃する。君たちは後方から防御と回復に努めてくれ!」
レッドはそう言い、勇ましくブランに向かって行くが……そのスピードは相変わらず、呪いで極端にトロくなったままだ。
「ちょっ……レッド!大丈夫!?」
ハラハラしながら見守っていると、レッドの攻撃は浅手しか負わせられず、逆にブランに思いきり胴を打撃されていた。
「全然、大丈夫そうじゃないわね~。さすがに、呪いの防具で大天使に挑むのは、ムチャが過ぎるわ~」
「鎧も、もうだいぶボロボロで、壊れちゃいそう……。あれで、ダメージを防げるのかな……?」
私がハラハラしたままそう言うと、シトリーンがキラリと目を輝かせた。
「それよ!」
「えっ?」
疑問の声を上げるが、答えはもらえず、シトリーンはレッドに向かって走り出した。
「勇者君!ちょっと衝撃に備えてくれる?」
「はっ?」
レッドはわけが分からないながらも、反射のように身構える。
そこへシトリーンが爪を振りかざして飛びかかった。
「ちょ……っ、シトリーンさん!? 何やって……」
凄まじい衝撃音が響いた直後、レッドの鎧はパーツごとに分解され、派手な音を立てて床に散らばった。
「え……?鎧、壊れちゃったじゃないですか!」
私はシトリーンの突飛な行動に、思わず文句を言う。
だが、レッドはなぜか目を輝かせた。
「すごい……。身体が軽い!やっと、呪いの鎧から解放されたんだ!」
レッドは見違えるように軽々した動きで、剣を構え直す。
「もう、これまでのようには行かないぞ!覚悟しろ!」
……だが、その格好は半袖シャツと短パンだけ。
初めて会った時よりも、さらにラフな……明らかに下着姿だ。
はっきり言って、あまり様にはなっていない。
「ちょっと待ちなさい。さすがに防御力ゼロで戦わせられないわよ。……ヴィヴィちゃん」
シトリーンがヴィヴィアンヌに目配せすると、ヴィヴィアンヌは「心得た」とばかりに杖を取り出した。
「魔法で防御力を一時的に上げるわよ~。強固な石の戦術!」
ヴィヴィアンヌが杖を振ると、レッドの身体を淡い光の膜が包み込んだ。
「ありがとうございます!これなら……行ける!」
半袖短パンの勇者は、ブラン目がけて走り出すと、勢いそのままにジャンプした。
「高……っ!レッドの身体能力って、あんなにスゴかったんだ……」
レッドはそのままブランの頭上から剣を振り下ろす。
ブランはとっさに腕で庇ったが、その腕にはザックリと大きな傷が刻まれた。
「……なるほど。さすがは "勇者" と言うことか」
ブランは眉ひとつ動かさずにそう呟くと、もう片方の手で傷をスッと撫でた。
ほんのそれだけの動作で、あれほど酷かった傷が跡形も無く消えていく。
「アラララ……。さすがに天使様だけあって、回復魔法はお得意みたいねー……」
「……って言うか、なりゆきでバトル突入してるけど、いいの?ブランさん倒しちゃっても……」
「どの道、あの子は戦うつもりみたいよ。多少痛い目を見せなきゃ、正気に戻らないんじゃないかしら?」
周りの皆は、もうすっかり戦う気満々だ。
その様子を見て、私は悟る。
……これは、アレだ。
イベント的に、強制バトル突入なヤツだ。もう戦闘は避けられないヤツだ。
だったら、もう思いきり行くしかないか……。
覚悟を決め、私は叫ぶ。
「力を貸して! "アフロちゅうい" !」
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